『WEAPONS/ウェポンズ』© 2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved張り巡らされた伏線、謎が謎を呼ぶ展開…ドラマ・映画に限らず様々な媒体で人気の「考察系」。特に「考察系ホラー」と呼ばれる作品群がここ最近特に注目を集めている。今回はこの冬公開される映画の中から、謎や真相を探るタイプのホラー作品を「考察系ホラー」として紹介する。
(「考察」とは一般的にテキストや作品等の本質などを読み解くために調査したり思考することを指すが、本記事の「考察系」とは「事件の真相」や「犯人」などを作品の内容そのものから「推察する」という意味合いとして扱っている。その点をご留意いただきたい。)
死者からのメッセージと殺人鬼の謎を解け!『ブラックフォン 2』
連続殺人鬼グラバーの恐怖から4年後。高校生となったフィニーは誘拐と監禁のトラウマから抜け出せず、苦しい日々を送っていた。一方、予知夢で兄の居所を突き止めた妹のグウェンはその能力がますます深まり、不可解な夢を度々見るようになっていた。
ある事件の被害者となった死者の少年たちから夢でメッセージを受け取ったグウェンは、兄フィニーらとともに、事件の発端となった冬季キャンプに赴くことに。だがそこで待ち受けていたのは、死してなお邪悪さを増したグラバーによる彼らへの「復讐」だった…。
監禁された少年が死者からの電話を頼りに殺人鬼に立ち向かうという斬新な設定でヒットを収めた前作。イーサン・ホーク演じるグラバーの死で幕を閉じたがため、続編制作の報に「あの完璧な幕引きからどうやって続編を?」と首を傾げた映画ファンも多かったはずだ。
だがスコット・デリクソン監督はインタビューで「思春期を生きる彼らの物語は描く価値がある」と語っており、成長したメイソン・テムズとマデリーン・マックグロウが続投したことで、恐怖を克服する彼らの物語に説得力が加わった。
死者からのメッセージ、さらには殺人鬼グラバーの誕生、そしてなぜ執拗に兄妹を追うのか、などなど様々な謎が本作では浮き上がってくる。映画を観ながら真相を読み解き、グラバーの邪悪な企みに兄妹とともに立ち向かう気持ちにさせてくれるホラー作品に仕上がっている。
また、グラバーと兄妹の関係の謎が明かされるだけでなく、心に傷を負った兄妹と父、そして亡くなった母の親子のドラマとしても観ることができ、ただの「謎解き」ホラーでは終わらない点も注目して欲しい。
『ブラックフォン 2』は全国にて公開中。
児童失踪事件の真相は…?意味深なタイトルにも注目が集まる『WEAPONS/ウェポンズ』
小さな街である日の深夜、子どもたち17人が忽然と姿を消した。皆が同じクラスの少年少女だったことから、批判の矛先は担任教師ジャスティン・ギャンディに向けられる。
だが真相は闇の中…。失踪した子どもの父親の一人、アーチャーは独自に調査を開始。さらに警察官のポール、浮浪者のジェームズも不可解な事態に直面。小さな街は、誰も何も知らぬまま、不吉な混乱に巻き込まれていくのだった…。
前作『バーバリアン』で複数人からの視点で徐々に真相が明かされていくという手法で予想だにしない展開のホラー映画を手掛けたザック・クレッガー監督。本作ではその「複数人の視点」がさらに深化。それぞれの視点で章立てがなされ、「児童集団失踪事件」の謎に迫っていくという構成となっている。
そのために、一つの章が終わるごとに新たな謎が次々に提示され、先が読めないままラストまで突っ切っていく。まるで暴走車に放り込まれたような、行先のわからないドライブ感は爽快さまである。
米国公開時には子どもたちが失踪した時刻「深夜2時17分」に意味があるのでは?と、「217」という数字についてや、タイトルでもある「WEAPONS(=武器)」についても様々な意見が飛び交う「考察合戦」が繰り広げられた。なぜ「子ども」や「失踪」を思わせるものではなく、まったく事件とは無関係に思える「WEAPONS(武器)」がタイトルとして選ばれたのか…。
鑑賞後にぜひ考えを巡らせてみて欲しい。
『WEAPONS/ウェポンズ』は全国にて公開中。
妹の失踪と1本のビデオテープが導く恐怖の街への入り口…『シェルビー・オークス』
12年前に行方不明となった妹ライリーを探し続ける姉のミア。ライリーは友人らとともに「パラノーマル・パラノイア」というホラー系の番組を配信しており、失踪の際もいわくのあるゴーストタウン「シェルビー・オークス」に足を運んでいた。その後ライリー以外の仲間たちは無残な姿で遺体となって発見されたが、ライリーだけは行方知れずのまま。
諦めかけたその時、ミアの前に謎の男が現れ「やっと解放してくれた」との言葉を残して拳銃自殺を図る。その手には「シェルビー・オークス」とのラベルの貼られたビデオテープが残されていた。そのビデオテープには、ライリーたちの最後の姿が映し出されていたのだ…。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の成功から現在まで、『パラノーマル・アクティビティ』『ノロイ』など、洋画邦画問わず、モキュメンタリー、ファウンドフッテージものはホラー映画のサブジャンルとして多くの作品が作られてきた。
本作も始まりは1本のビデオテープからはじまる。そこには失踪する直前の妹と配信仲間たちだけでなく、奥に映る人影、廃墟の刑務所、謎の男など、異様なものが映り込んでいた。「シェルビー・オークス」という街はいったいなぜゴーストタウンと化したのか?そこで何が起きたのか…?
さらに本作では公式から「架空の考察サイト」や「情報提供用」の電話番号まで登場。ますます「考察」意欲をかき立てられることだろう。
架空の捜索サイト:https://whathappenedtorileybrennan.jp/
「情報提供用」の電話番号(050-1794-5586)
作品としては、人探し×ファウンドフッテージものに、さらに劇映画としての奥行きも持たせた構成は見ごたえ十分。監督がYouTube配信出身ということもあり、「おわかりいただけただろうか…」とでも聞こえてきそうな配信動画の作り込みはかなりのもの。
観終わった後もさまざまな解釈がなされることが考えられそうなこの冬必見の「考察系ホラー」だ。
『シェルビー・オークス』は12月12日(金)より全国にて公開。
究極の愛のカタチ?それとも…異色のボディホラー『トゥギャザー』
倦怠期を迎えつつあるカップルのティムとミリー。環境を変えるため、田舎の奥深い森の家に引っ越すことに。ある日二人は周辺を散策中、洞窟のような洞穴に滑り落ちてしまう。ただ、運よくそこには湧水があり、なんとか穴の中で一晩過ごすことができた二人。翌朝、自力で穴から抜け出し、窮地を脱したかに思えたものの、その日から二人の身体に尋常ならざる異変が起きることとなる。
タイトルや予告編から察する通り、カップルの身体がなぜか引き寄せられ「トゥギャザー」してしまうというボディホラー。長く付き合ってきたカップルだからこその微妙な距離感が、奇妙な現象によってゼロ距離にまで近づき、離れようとすればするほどその引力は増していく、という設定がユニークだ。
しかも、カップルを演じているデイブ・フランコとアリソン・ブリーは実際の夫婦。二人が醸し出す夫婦ならではの空気感が、異常な事態に陥ったカップルの恐怖、愛憎、執着を見事に体現している。
また、二人の身に起きた現象が果たして偶然だったのか、必然だったのか、はたまた仕組まれたことだったのか、謎めいているのも最後まで見逃せない点。いかように解釈できるのも「考察系」を愛好する人にとってはたまらないものがあるだろう。
二人の決断を「究極の愛」と捉えるか、「単なる共依存」と捉えるか…。観る人の恋愛観、人生観、結婚観などによっても解釈が分かれそうな作品だ。
『トゥギャザー』は2026年2月6日(金)よりTOHO シネマズ 日比谷ほか全国にて公開。
観る人によってさまざまな意見が飛び交う「考察系」。映画を観終わった後に、自身の解釈を誰かと熱く語り合うのも、こういった作品の醍醐味だろう。劇場で楽しんだ後はぜひ、寒い冬を熱い「考察合戦」で盛り上げて欲しい。
(深山名生)