時代の波を読み、流れに身を任せることで成功を収めた“家電レンタルのレンティオ” ー 創業からの経緯を創業者・三輪社長に聞く

0

2025年12月02日 18:40  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
カメラ、掃除・美容・ヘルスケア家電などのレンタルサービス事業を展開するレンティオ。2015年の創業以来、順調に売上を伸ばし成功を収めてきた。一見すると順風満帆に思える同社だが、実はさまざまな危機を乗り越えて今があるという。



レンティオの10年間の歩みと、危機を乗り越えて事業成長を続けている秘訣について、創業者の三輪 謙二朗氏に伺った。

○結婚式の余興をヒントにレンタル会社を創業



――まず、レンティオ創業の経緯についてお聞きします。起業したいという思いはいつごろからお持ちだったのでしょうか。



もともと、私の父が行政書士として事務所を構えており、仕事をしている姿を子どものころから見ていたんです。それもあって、自分自身もいずれは独立したいという思いを自然に持つようになっていました。



大学時代は楽天市場に出店している小さなショップを運営していた会社でアルバイトをしており、その経験から新卒で楽天に入社しました。楽天では約100店舗ほどを担当していたのですが、様々な店舗オーナーと話すうちに「自分ならこうするのに」と思うことが増えていきました。そうした思いもあって、その後は学生時代にアルバイトしていた会社に戻ったのですが、その会社はまもなく倒産してしまい、それをきっかけに起業することにしたのです。強い思いを持って起業した、というよりは、状況が自然とそうなったという感じでしたね。



――起業するにあたり、レンタル事業を選んだ理由は何だったのでしょうか。



会社が倒産する1年ほど前から起業を考え始めており、ビジネスモデルのリサーチを行っていました。そんななか、たまたま友人の結婚式の余興でたむらけんじさんのモノマネをすることになり、獅子舞の購入を検討したんです。



ただ、獅子舞って3万円ほどしますし、大きいので保管も大変です。そこでふと「レンタルもあるのかな」と思って検索したところ、1週間2万円くらいで獅子舞をレンタルしている会社が見つかりました。これが、レンタルビジネスに興味を持ったきっかけです。また、以前働いていたECの会社でも、お客さんから「購入ではなくレンタルはできないか」という問い合わせが頻繁にあったこともヒントになりました。



私は学生時代、史学を専攻しており歴史好きです。そこで江戸時代のレンタル事業などについて調べてみたところ、「昔から“もったいない”の精神がある日本という国とレンタル事業は相性が良い」と気づいたんです。



特に「高価で使用頻度が低い」ものはレンタルの需要があるだろうと思いました。現在であれば、カメラや一部の家電などがそれにあたります。このような理由で、カメラのレンタル事業を立ち上げたのです。


○競合他社の問題点を改善し、ユーザー体験を向上することで差別化



――起業するにあたり、必要な知識やノウハウはどのように身につけたのでしょうか。



起業してから学んだことがほとんどでした。ECの知識はありましたが、それ以外は何もわからない状態からのスタートだったんです。会社設立の手続きも自分でしましたし、経理もまったく知識がない状態からSaaSを使いながら学んでいきました。必要なことはすべてインターネットで学びながら進めましたね。



――社名はどのように決めたのでしょうか。



創業時は「株式会社カンパニー」という社名でした。カンパニーは同名の競走馬からとった名前で、「勝ったり負けたりしながら、最後に連勝して引退する」というストーリーに共感したことが由来です。その後、レンティオに社名を変更しました。



レンティオは「レンタル」の「レン」に、ドメインの「.io」をつけたイメージです。この「.io」というドメインには「in/out」という意味があるらしく、レンタル事業にふさわしいと思いました。



――レンタル事業はすでに競合他社も多かったと思います。どのような戦略で臨まれたのでしょうか。



既存のレンタル会社のサービスを実際に利用してみて、徹底的に分析しました。その結果、様々な問題点が見つかったんです。



たとえば、「借りづらさ」と「返しづらさ」です。借りる際に名刺の提示やデポジットが必要だったり、返却時に電話連絡が必要だったりするサービスが少なくありません。これらは借りたまま返さないユーザーへの対策や、返しづらくすることで延滞料金を得るという狙いなのでしょう。ビジネスモデルとしてはわかりますが、ユーザー体験を損ねていることは確実です。弊社はこれを改善しました。たとえば、安価な商品であればチェックを簡略化し、返却フローもインターネットを活用して簡単に行えるようにしたのです。その結果、お客さんからの反応も良く、売上もどんどん上がっていきました。



――現在はさまざまな製品を扱っていますが、最初はカメラから始められたのですよね。



最初は商品のほとんどがカメラでした。それも、一眼カメラではなく、特殊用途のカメラから始めました。これもデータを分析して、そう決めたのです。立ち上げ当初、100アイテムほどの商品ページを作り、どこにアクセスが集中するかを調査しました。すると、360度カメラの「THETA(シータ)」に特にアクセスが集中していることがわかったんです。



実は当時、THETAをレンタルできるところはほとんどなかったのです。そのため、検索すると当社が一番に出てくる状況でした。



そこでまずはTHETAをメインにお客さんを集め、じょじょにチェキやGoPro、ビデオカメラ、一眼レフとジャンルを拡大していきました。最初から戦略を立てていたわけではなく、実際にやってみて、反応があったものに注力していったことが功を奏したのです。


○コロナ禍と黒字倒産の危機を乗り越えたのは「人」の力



――これまでの事業拡大と成長の推移について教えてください。



2015年に創業した当初はカメラがほとんどでしたが、コロナ禍でカメラの需要が激減してしまいました。カメラは旅行やイベントで使われることが多かったからです。それでもカメラだけに固執していたら、おそらく当社は存続できなかったでしょう。



起死回生の一手となったのは、コロナ禍の少し前から力を入れ始めていたカメラ以外のカテゴリです。特に掃除家電、美容・ヘルスケア家電は、コロナ禍を機に大きく伸長しました。



その理由は、コロナ禍でユーザーが量販店や百貨店に行けなくなったことです。家で製品を試したいというニーズが追い風となりました。また、メーカー側も実店舗以外で「ユーザーに製品を体験してもらう場」を模索しており、レンタルという選択肢に注目してくれるようになったのも大きかったです。



――コロナ禍で事業の方向性が大きく変わったのですね。



そうですね。柔軟に変化できることが、私たちの強みだと考えています。もともと、カメラのレンタル市場の先行きには不安を感じていました。スマートフォンのカメラ性能が向上したこともありますし、他にもレンタル向きな家電はあるのではないかと予想していたからです。そうやって先々を考えていたことが、コロナ禍を乗り切る原動力になりました。



――会社の危機や、それをどう乗り越えたかについて教えてください。



最大のピンチはやはりコロナ禍でした。事業面での危機もそうですが、当時は人が出社できないという問題もありました。出社できなければ製品を出荷できず、事業が立ち行かなくなります。



そこで力を貸してくれたのが、会社の近くに住んでいたスタッフでした。コロナ禍中は彼らが出社してくれて、出荷作業を担ってくれました。逆にコロナ禍が明けたあとは、彼らに休んでもらい、コロナ禍中に出社できなかった社員が出荷作業をがんばってくれました。スタッフの協力により、なんとかコロナ禍を乗り切ることができたのです。本当に人に恵まれた会社だと感じています。



もう一つの危機は、創業した翌年、2016年ごろにありました。売上が急成長し、4カ月連続で約2倍まで増えたのです。一見すると良いことに思いますが、出荷量が激増し、オペレーションがパンクしてしまいました。当時は社員が5人ほどしかいなかったのですが、社内の空気が悪くなり非常に良くない状況でした。



また、売上が伸びると必要な在庫数も増えます。注文があるかぎり、製品は出荷しないといけません。在庫を確保するには資金が必要ですが、実際にレンタル料として売上が入金されるのはもっと先になります。つまり、先にキャッシュだけがどんどん出ていってしまうのです。そのため、黒字だったにもかかわらず、資金繰りが厳しくなり、自分自身の給料が払えなくなったこともありました。



社内の不和、黒字倒産の危機――こうした課題を乗り越えられたのは、みんなで話し合い、一つひとつの問題に逃げずに向き合ってきたからだと思います。

○レンティオを成功に導いた「流れに身を任せる」という経営哲学



――今後の市場の変化についてはどうご覧になっていますか。



私は「流れに身を任せる」という考え方が好きです。強引に風に逆らうのではなく、流れを読んでそれに乗った方が良いと考えています。実は歴史上の成功者にも、こういった考えの人が多いんですよ。大きな流れに反発して成功した人は、歴史的にもほとんどいないと思います。



その意味で、レンタルサービス市場の将来は明るいと考えています。社会はサスティナブルな方向に進んでおり、政府もメーカーに対してリサイクル材を使用するよう求めています。このような状況を踏まえると、レンタルや修理、リサイクル、中古品販売などのビジネスが伸びるのは確実でしょう。



販売だけなら量販店やECモールもできますが、製品を回収するのは難しい。一方でレンタルサービスは回収も得意とする分野です。この流れに乗って、新たなビジネスチャンスを作りたいと考えています。



――とはいえ、将来の流れを予測するのは簡単ではないのでは?



そうですね。常に正確に流れを読むことはできません。そうであるなら、重要なのは早めに見極めることです。私たちも何度か「これは違うな」と思ってやめたことがあります。引き返せなくなるまで突き進むのではなく、間違いに気づいたら素直に認めて方向転換することが大切なのです。



――三輪社長が感じている最近の「大きな波」は何でしょうか。



AIは大きな流れの一つです。レンティオでは生成AIがトレンドになる以前から様々な場面でAIを活用しています。特に力を入れているのが、ユーザーが借りたまま返さなくなる盗難対策です。盗難されてから対処するのは大変なので、そもそも申込時にAIを用いてリスクを判断するようにしています。



――レンタルサービスにとって盗難対策は重要ですよね。



10年間レンタル事業を行うなかで、盗難被害により倒産してしまう同業他社を数多く見てきました。メーカー自身が提供するレンタルサービスも、盗難のせいでやめてしまうことはよくあります。盗難対策のノウハウは私たちの競争優位性の一つです。

○さらなる事業拡大で「レンタルという選択肢が当たり前になる世界」を目指す



――三輪社長のプライベートの一面についてもお聞きします。



プライベートではサッカーと麻雀が趣味ですね。土日は子どものサッカーコーチをしていて、小学生チームの指導をしています。麻雀に関しては、ビジネス力や経営のヒントを得ている方もいる方も多く、私自身も影響を受けています。



――今後の会社や個人としての展望を教えてください。



現在、レンティオを使ったことのある人は累計157人以上です。おかげさまで多くの方にご利用いただいていますが、私はこのサービスにはもっと可能性があると思っています。



今後は1,000万人、いや、2000万人に使ってもらえるサービスにしていきたいですね。買い物するときAmazonが思い浮かぶように、「レンタルするならレンティオ」とすぐに思い浮かぶサービスになることが目標です。



「新しい消費行動をつくる」というミッションのもと、「レンタルという選択肢が当たり前になる世界」を作っていきたいですね。(山田井ユウキ)

    前日のランキングへ

    ニュース設定