
F1第23戦カタールGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
第23戦カタールGPのスプリントレースのレッドシグナルが消えた瞬間、角田裕毅(レッドブル)は5番グリッドから絶妙の反応速度と好加速を見せ、あっという間にイン側のフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)を抜き、ランド・ノリス(マクラーレン)のトウからターン1でインに並びかけて3位を狙いにいった。
ターン2でスペースがなくなると見るや、早めに引いて後方のアロンソをカバーし、イン側にいるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のためにスペースを作り出してアシスト。そしてその先のターン4でインからフェルスタッペンを先行させて4位を譲り、絶好のアシストを見せた。
ターン10の入口で4度のトラックリミット違反(※)を犯すほど、コース幅いっぱいに使う角田らしいドライビングが見られた。
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※トラックリミット違反=コースの境界を示す白線をマシンの4輪すべてが越えた場合に違反とみなされる。
「ペースもよかったですし、マックスをアシストすることもできましたし、トラックリミット違反以外はいいレースができたと思います。ここまでのところはスムーズでいい週末です。
とはいえ、もっと大切なものは、まだこれから。そこでも今回以上にしっかりとまとめ上げるだけです」
5位入賞という結果に、角田とチームクルーたちも久しぶりに高揚感に包まれているのがわかった。
しかし、予選では一転して19位に終わり、またしても暗雲に包まれた。
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「正直、何が起きたのかまったくわかりません。急に、グリップなのかペースがなくなってしまったんです。
アタック自体はとてもうまくまとまっていたと思います。昨日(のスプリント予選)の5位のアタックと似たようなものだったので。クルマもほぼ同じ状態のまま。ひとつセットアップを変えただけで、それは(マシン挙動に)大きな影響を及ぼすようなものではない」
【10位は十分とは言えない結果】
決勝レースは、タイヤ1セットあたり25周の走行制限が設けられた。実質的に2ストップが義務づけられたことで、チームの採る戦略の幅は狭い。
しかも7周目に、ニコ・ヒュルケンベルグ(ストーク)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)の接触によってセーフティカーが出され、残り50周というタイミングでほぼ全車がピットイン。つまり、ほぼ全車が2セットのタイヤで最大限の25周ずつを走り、同じ周回にピットインすることが決まってしまった。
その結果、中団グループはほぼ全車がトレイン状態で、抜くに抜けないまま周回を重ね、角田も最後まで前のリアム・ローソン(レーシングブルズ)を抜くことができないまま終わってしまった。
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「フリーエアでのペースは悪くなかったと思いますけど、フリーエアで走る時間がほとんどなかったです。(トレイン状態での)ダーティエアのなかではタイヤのオーバーヒートもあって、DRS(※)をオンにしても効果が全然感じられませんでした。その状況でオーバーテイクをするのは、なかなか厳しかったですね」
※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくするドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。
スプリントで証明して見せたとおり、マシンに速さがあることは間違いない。しかし、それを発揮できる場所にいなければ、結果につなげることはできない。
他車の脱落に助けられるかたちでポジションを5つ上げ、10位入賞を果たしはした。だが、フェルスタッペンが大逆転優勝を果たしたことからも、スプリントの速さからも、角田とRB21が持っていた速さを考えれば、決して十分とは言えない結果だった。
角田の命運を決するカタールGPは、ある意味で今シーズンの角田を象徴するようなレース週末となった。
シーズンはまだ、最終戦アブダビGPが残っている。
チームメイトのフェルスタッペンはドライバーズタイトルを争い、角田もそのアシストをすると同時に、自身の結果も追い求めなければならない。
今シーズン最後のレースで、この8カ月の成長をすべて内容と結果につなげてもらいたい。
