画像提供:マイナビニュース北海道最大級のビジネスイベント「第39回北海道ビジネスEXPO」が11月6日・7日の2日間、札幌・アクセスサッポロで開催され、北海道内外の307社・機関が参加した。「大変革に挑む北海道〜ポテンシャルを真価に変える“未来想像イノベーション”」をテーマに、ITビジネス・宇宙産業・ロボットなどの最先端技術を披露。
会場には、現役の技術者・ビジネス関係者、研究者らに加え、北海道の未来を創る高校生・大学生など2日間で約2万名が詰めかけ、近未来の北海道を体感した。
○発電側と需要側の取り組みを紹介
北の大地の電力供給を支える北海道電力(以降、ほくでん)のブース受付には、「北海道から動かす未来。2025年、ゼロカーボンへスイッチオン。」という、未来に向けた同社の覚悟を示すスローガンが掲げられた。
ゼロカーボン(=カーボンニュートラル)とは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスの排出量を減らすと同時に、二酸化炭素を吸収して酸素を排出する光合成の働きをする森林などを守ることで、地球上の温室効果ガスの増加を実質ゼロにする試み。電力会社としては、現在50%以上を占める“化石燃料(石炭、ガス、石油)を使う発電”の割合を大幅に削減することが、ゼロカーボンの条件になる。
ほくでんグループでは、泊発電所(原子力)の再稼働を前提として、“5年後の2030年度までに、非化石燃料による発電比率を60%以上を実現”、“最終的には、化石燃料による発電をほぼゼロ”という挑戦的な目標を設定している。本イベントでは、「ほくでんが目指すカーボンニュートラル」と題した大型パネルを用意し、発電側と需要側の取り組みが、どの場所で進んでいるのかわかりやすい北海道地図のイラスト上で紹介した。
発電側では、安全性を十分に確保した上での泊発電所の早期再稼働を進める一方で、太平洋側の苫東厚真発電所では、水素と窒素のみで構成されているために二酸化炭素が出ない次世代エネルギーのアンモニアを、2030年には混焼(化石燃料と混ぜて発電)まで実現。その約10年後には専焼(アンモニアのみ)で電気を供給する未来を描く。
日本海側の石狩湾新港発電所では、2040年代に液化天然ガス(LNG)から水素への燃料転換を実現するべく、準備が進められている。洋上風力発電、水力発電、大気中の二酸化炭素を増やさないバイオマス発電、火力発電所で出る排ガスに含まれる二酸化炭素を分離・回収し、地中の深い場所に貯留、必要に応じて有効活用するCCUS事業の実証実験も、苫小牧エリアで始まっている。
目標達成には、電気を使う側(需要側)の意識を変えるとともに、設備を整えることも必要になり、そのサポートも、ほくでんの重要な役割である。たとえば、北海道日本ハムファイターズの本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOでは、ほくでんがエネルギー関連設備を施設内に設置し、電気・ガス・水の調達に加え、設置した設備の保守や最適な管理をワンストップで行っている。
これにより、球場を運営するファイターズスポーツ&エンターテイメントは、(1)初期投資をすることなくカーボンニュートラルに貢献しうる高効率な機器設備を導入、(2)本来なら年度ごとに変動する運用・保守費用を平準化、(3)不具合があった場合の速やかな保守対応を、15年わたって継続して受けられる。また、エスコン関連としては、JR北広島駅などの駅と球場を結ぶ北海道バスのEVシャトルバス(5台)向けにも、ほくでんは環境に優しい急速充電器サービスを行っている。
このほか、需要側の取り組みでは、ZEB・ZEHの推進による建物のエネルギー消費量削減、空気などの熱エネルギーを集めて空調や給湯に利用するヒートポンプ機器の普及なども、ほくでんの今後の使命だ。
北海道電力 バリューマーケティング部 エネルギーソリューション室 システム提案グループ 主任の浜田亜沙飛さんは、「気候変動対策への(世界的な)機運の高まり、日本の2050年カーボンニュートラル宣言などがあり、エネルギーの安定供給や脱炭素の実現を目指すことが国家戦略として位置付けられていますが、生成AI技術の発展といった要因から中長期的な電力需要の高まりが予想されています。一方で、北海道は豊かな自然があり、再生可能エネルギーなど、ゼロカーボンに資する技術を多く導入できるポテンシャルがあります。ほくでんが展開するカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを発信できたらと思っています」と、本イベントに参加した理由について語った。
その隣のブースでは、事業共創推進室がプランツラボラトリー社(植物工場)、GOODGOOD社(畜産)、JOYCLE社(ゴミ資源化装置)と共同でブースを出展。北海道電力は、地域資源を活かした新しい畜産モデルの構築を目指し、2023年12月から厚真町のスタートアップGOODGOOD社と連携している。
GOODGOOD社は冷涼な気候を活かした放牧型畜産を展開しており、牧草や農業副産物を飼料とし、さらに排せつ物を堆肥として活用することで資源循環を実現している。これは北海道の広大な土地と気候条件を最大限に活かした国内でも珍しい取り組みである。同社のPRブースでは厚真町産放牧豚を使ったハムの試食が行われ、来場者の注目を集めた。
北海道産の酒米にこだわった日本酒を製造している上川大雪酒造と協業し、昨秋から始めた日本酒熟成実証事業では、年間通して室温が約8度に保たれ、かつ紫外線の入らない京極発電所内のトンネルを天然の貯蔵庫として活用した。ブースでは、トンネル内で熟成された上川大雪酒造の日本酒のPRも行われ、販売開始を心待ちにする声が聞かれた。
“ゼロカーボン”“地域との共創”を掲げるほくでんのブースは、北海道の未来像に関心を寄せる入場者で、2日間とも終日にぎわった。(中島洋尚)