
「マンガ大賞2019」や「このマンガがすごい! 2019」オンナ編にランクインし、2024年には新垣結衣主演で実写映画化もされたヤマシタトモコ『違国日記』(祥伝社)。本作を原作とするアニメが2026年1月より放送・配信されるなか、2025年12月2日にアニメ先行上映会が開催された。
【画像】『違国日記』アニメ先行上映会には沢城みゆき、森風子、諏訪部順一が登場
上映会後にはアニメ『違国日記』のPV・キービジュアル第2弾が公開。本稿ではアニメ放送に先駆け、作品の内容を振り返りたい。
両親を交通事故で亡くした15歳の中学生・田汲朝は、叔母(母親の妹)にあたる35歳の小説家・高代槙生と同居することとなる。作中では約20歳の年の差がある2人の暮らしに焦点が当てられるなか、朝は高校に進学したりなど、少しずつ年を重ねていく。
本作を象徴する要素として「音」の存在がある。朝のモノローグにも「音」がたびたび登場しており、最初に登場したのは第1話「page.1」。作品を執筆する槙生の傍ら、布団を敷き横になる朝が思った「叩くパソコンのキーボードの音/たまに迷うように止まって/たまに殺すようにたぶん消去を連打する/紙をめくる音と深いため息(中略)わたしの好きな夜」というモノローグ。続く第2話「page.2」では朝が両親を亡くした直後、親戚などが一堂に会した食事の場にて「誰が朝を引き取るか」を話すなか彼女が頭に浮かべた「わたしの特技『音だけ聞いて言葉を聞かない』の発動により/途中から全然聞いていなかったので(略)」。
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文脈から察するに、前者は心地よい音として、後者は居心地のわるい音として朝が思い浮かべた音であろう。
「音」に対して敏感な朝であるが、作中では朝が「歌う」光景も多く描かれる。本作の第1話は高校3年生となった朝の日常が描かれるが、第2話以降、中学生の朝が年を重ねていく日々が時系列順に描かれていく。ある種未来の朝ともいえる第1話の朝は料理をしながら歌を口ずさんでいた。また物語の中盤から朝にとって「歌うこと」は大きな意味をもつこととなる。
加えて、本作は「生活音」も細かく描かれる。
「ピ」と鳴る電子レンジの電子音、炒めたウィンナー・きゃべつが皿の上に乗った際の「ボト」。机の上の書類を「バサ」と地面に落とし、トーストにケチャップやマスタードを「びーーー」とかけ、トーストに具材を「ぎゅっ」とはさむ。「がぶっ」とトーストにかぶりつき、食卓に響く「もぐもぐ/もぐ/もぐ」といった咀嚼音。朝はトーストから「ボト」っとウィンナーを落とし、槙生は静かに笑う。
上記は朝と槙生が暮らし始めた直後、一緒に朝ごはんを食べるワンシーンだ。人見知りな槙生の性格のせいか、2人の会話は非常に少なく、ぎこちない。ゆえに何気ない生活音の存在が強調され、朝と槙生の暮らしの解像度は高まる。生活音によって2人の暮らしはどこか親しみを覚える、はたまた普段は気づきにくい音の新鮮さを感じられるものとなっていると感じる。
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音の存在をたしかに感じる本作。アニメでは映像作品として、原作で描かれた音の数々がどのように添えられるかはもちろん、劇半(劇中伴奏音楽)にも注目したい。本作の劇半を担当するのは劇場版『チェンソーマン レゼ篇』や連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK系)の音楽を手掛けた牛尾憲輔。一部の劇半はPV等で試聴することができる。
また、このたび発表されたPV第2弾ではアニメのオープニングテーマ・tomoo「ソナーレ」が挿入された。(公式として歌詞がまだ発表されていないため、誤りがあったら大変恐縮だが)本楽曲のサビには以下のようなフレーズがある。
「セカイがほどけるオトがカけてくる(略)アサがくる」
ときに、まるで「ちがう国」で暮らしているかのように見えつつ、それでも1つの同じ世界を誰かと共にしていく『違国日記』。朝・槙生たちが暮らす世界が、台詞や朝の歌、生活音、劇半や主題歌といった、さまざまな音を用いてアニメでどのように表現されるか楽しみだ。
(文=あんどうまこと)
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