
来年度の税制改正についてお伝えします。私たちの暮らしにも直結する税制が、そもそもどのように決められているのか、そのプロセスも例年と少し違うようです。
■「〇政」?税制改正における8つの記号の意味
高柳光希キャスター:
税制改正の大まかな日程は以下のようになっています。
▼10月〜11月 与党:各省庁の要望を取りまとめ、税調での議論を本格化
▼12月 与党:大綱策定 政府:閣議決定
▼1月 政府:改正法案を国会提出
▼3月 法案成立
税制改正の大綱を作るための議論の中で、各省庁からの要望をどう決めていくのでしょうか。まず、「やるか」「やらないか」を8つの記号で評価していくということです。
|
|
|
|
【8つの記号で要望を評価】
「〇政」「〇」「〇済」
「△」「二重△」「△法」「△事」
「×」
具体的にどのような意味合いなのでしょうか。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
「〇政」はすぐに「〇」か「×」かの決定ができないもので、利害関係者も多く、集中的に議論して答えを出すべきもの、“政治的な判断”が求められる難しい課題に付けるマークです。
今回でいうと、住宅ローンや出国税、NISAなども「〇政」にあてはまっています。
■「NISA」や「住宅ローン」各項目の気になる評価は?
|
|
|
|
高柳光希キャスター:
項目ごとに、どのような評価をされているか見ていきます。
▼NISA対象拡大「〇政」
→「18歳以上」から未成年にも拡大するなどの案
▼住宅ローン減税の延長「〇政」
NISAの対象拡大や住宅ローン減税については、政策的問題として検討するという評価になっています。
▼ガソリン暫定税率廃止「〇」
→安定的な財源確保しようという案
|
|
|
|
▼ふるさと納税「△」
→控除額に上限という案
小野寺税調会長は2日、「返礼品に小判・超高級スーツなど、想定していない使われ方をしている」と発言しました。
年収が上がるにつれて控除額も大きくなり、年収が500万円から1000万円(2倍)でも、寄付上限額は3倍程度になっています。
【ふるさと納税の控除額】総務省より
▼寄付者の年収(独身または夫婦共働き)と寄付上限額
寄付者の年収:300万円 寄付上限額:2万8000円
寄付者の年収:500万円 寄付上限額:6万1000円
寄付者の年収:1000万円 寄付上限額:18万円
寄付者の年収:2500万円 寄付上限額:85万5000円
金融業界出身のニューレディー 肉乃小路ニクヨさん:
私の周りでも、稼いでる人の方がふるさと納税には関心を持っている傾向があるので、確かに、富裕層に多少有利な制度だということは実感しています。
井上貴博キャスター:
ふるさと納税は、そもそも都市部と地方都市の税収の格差を是正しようというものだったと思います。
高所得層が集中しやすい都市部から地方都市に流したいという意味でいえば、締め付けすぎも良くないですが、今は行き過ぎている部分もあります。バランスが難しいですね。
金融業界出身のニューレディー 肉乃小路ニクヨさん:
関係人口を増やそうという意図もあったと思いますが、実際に受け取っているものを見ると、どうしてもお金持ちが得しているなと、何となくモヤっとしてしまいます。
また、地元の自治体の財源が減るという話も聞きますので、モヤモヤしながらやっている感じです。
高柳光希キャスター:
ふるさと納税には「△」の評価がついています。「△」は「検討し後日報告する」というものです。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
党内でも結論は出ていないが、問題意識は共有されているので前向きに検討していこうという状況です。消極的なイメージではなく、前向きに検討するという意味合いです。
一方で、「二重△」の場合は「長期検討」という意味で、少し時間かかるテーマに付くマークです。
■「ベビーシッター等の費用控除」は長期検討の「二重△」
高柳光希キャスター:
島本記者の取材によると、様々な項目の中で、“高市カラー”が見えた部分もあったといいます。それが、ベビーシッター等の費用を所得税から控除するという項目です。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
高市総理は、自民党総裁選のときに、どうしてもやりたいこととして、「家事代行やベビーシッターの利用料の一部を税額控除する制度を作りたい。数年前から考えていた」と強調していました。
海外では実際に導入している例もあり、総理の思いを反映して要望に盛り込まれたものとみられます。
高柳光希キャスター:
高市総理肝いりのベビーシッター等の費用を所得税から控除する案は「二重△」(長期検討)という評価になっています。今すぐ議論を始めて、長期間検討するということではないということですね。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
「導入までに時間がかかる」という意味ですが、一定の実現可能性はあるとは思います。
高市総理の発言を受けて、経済対策の中にも「2026年夏ごろに税制措置を含め検討する」と盛り込まれました。
「長期検討」なので2026年度から実現というのは難しいですが、2027年度以降、実現する可能性はあるのではないかと思います。
井上貴博キャスター:
課題は財源なのか、他の何かなのでしょうか。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
実際にニーズがあるのかどうかというところです。また、対象者や制度設計に時間がかかるのではないかと言われています。
■「異色の税調会長」で幅広い要望を検討か
高柳光希キャスター:
今回、要望の評価として「×」が少なかったということも、“高市カラー”の一つなのだそうですね。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
高市政権になって税調会長が、大蔵省出身の宮沢洋一氏から小野寺五典氏に変わりました。小野寺氏はインナーという税調幹部の経験もないため、自身でも「異色の税調会長」だと認めています。
高市総理が「税の専門家だけで役員は固めない」としていることもあり、税調幹部も「密室で決めず幅広く受け入れていきたいということで、なるべく『×』を減らして『△』を増やした」と解説していました。
高柳光希キャスター:
ただ、少数与党ですから野党との向き合いも非常に重要ですね。
▼公明党
・奨学金減税の創設
・自動車ユーザーの減税
▼国民民主党
・16歳未満の子を持つ親の税控除を復活
・外国人入国時に課税
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
参議院では少数与党が続いていますので、法案を通すには野党の協力が必要です。小野寺税調会長は、国民民主党や公明党と相次いで会談をして要望を受けています。
実際に11月の総合経済対策では、2万円の給付が土壇場で盛り込まれるなど、最終局面で変わったこともありました。野党の要望は排除されるものではなく、今後、盛り込まれる可能性はあるかなと感じています。
井上貴博キャスター:
税調会長が変わったことで、何か変わったという印象はありますか。肌感覚を教えてください。
TBS報道局 政治部 島本雄太 記者:
税調幹部の多くも変わっています。総理に近い松島みどり氏が、インナーに入るなどして、総理の意向をより受けやすい環境に移っていたり、税の専門家ではなく商工系・産業政策に明るい人物が入っていたり、かなり幅広い議論がされるようになっているのかなと感じます。
==========
<プロフィール>
島本雄太
TBS報道局政治部 自民党担当 政調会長を中心に取材
休日は料理作りとお酒で気分転換
肉乃小路ニクヨさん
ニューレディー 銀行・保険会社など金融業界でキャリアを積む
独自の視点で経済・お金・人生観を語る
