RIZAP設立から約20年…“ありたい姿”の多様化でパーソナルトレーニング需要に変化も 新規入会の2割はchocoZAPからのシナジー

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2025年12月05日 09:10  オリコンニュース

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RIZAPグループ代表取締役社長 瀬戸健さん(写真/草刈雅之(C)oricon ME inc.)
 2022年7月のサービス開始以来、わずか3年で急成長を遂げたchocoZAPが、今年12月にはフランチャイズ展開をスタートさせる。将来的に国内8000店舗を目指し、アジアを中心としたchocoZAPの海外展開も本格化させるなど、次なる成長フェーズへと移行しつつある。一方、日本にパーソナルトレーニングという概念を根付かせたRIZAPにも変化が見られている。RIZAPグループ代表取締役社長の瀬戸健氏に、今後のchocoZAPの指針や勝算、RIZAP事業について話を聞いた。

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◆chocoZAPは基盤作りの期間を経てのフランチャイズ化へ 過疎地でこそ活きる“無人運営のエコシステム”

──事業開始から3年、一貫して全店直営をポリシーとしてきたchocoZAPがですが、ここへきてなぜフランチャイズ展開に乗り出すのでしょうか?

【瀬戸社長】 まずは全国47都道府県に1828店舗を展開できたこと、さらにはその全店舗の黒字化を達成できたことが大きかったですね。この3年は「24時間365日無人運営のコンビニジム」という前例のないサービスを持続可能に成立させるための、いわば基盤作りの期間でもありました。それを実証できた今、ようやく自信を持ってFCオーナーさまを募集できます。

──FC展開にあたって、特にどのような地域への出店を強化される方針ですか?

【瀬戸社長】 これまで通りあらゆる地域への出店を進めて参りますが、特にこれまで直営だけではリーチしづらかった過疎地への出店に力を入れていきたいです。むしろchocoZAPの価値が発揮できるのは、都市部よりも過疎地なのではないかと考えています。

──過疎地でフィットネスジムの運営が成り立つのでしょうか?

【瀬戸社長】 この3年は直営店への向き合い方を通して、立地条件についての検証も重ねて参りました。その象徴的な事例が、今年5月に放送されたバラエティ番組『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)で取り上げられたchocoZAP木曽岬店(三重県)です。

──田んぼの中にポツンとフィットネスジムが建つシュールな光景が話題を呼びましたね。

【瀬戸社長】 あの店舗の周辺住民は数百人程度ですが、しっかりと収益化ができています。地方でサービスを展開する上での最も大きなハードルは労働力不足です。その点、chocoZAPはAIカメラをはじめとするDX化や、お客さまに店舗運営にご協力いただく共創モデルによって“無人運営エコシステム”を確立しています。人材の採用や育成、マネジメントの必要がないことは、新たに事業を始めるオーナーさまにとって大きなメリットになるはずです。

◆香港では日本の1.5倍の速さで新規会員を獲得 今年度中に新規で5店舗がオープン予定

──今年5月にFCトライアル展開を発表して以来、1000件を超える問い合わせがあったとのことですが、どのような動機で応募される方が多いですか?

【瀬戸社長】 遊休物件の有効活用や事業ポートフォリオの強化などさまざまな動機がおありですが、なかでも多くのFCオーナー希望の方が「地域の健康づくりへの貢献」を口にされますね。例えば、FC1号店の「chocoZAP安曇野穂高店」のオーナーさまの本業は地域医療に向き合っている医師で、「薬よりも必要なのは運動するきっかけだ」と考えてchocoZAP開業を決意されたとのことです。ちなみにこの方もそうですが、ご自身もchocoZAPユーザーだったというFCオーナー希望の方は非常に多いです。

──chocoZAPの価値を実感した上でオーナーになる方が多いというわけですね。

【瀬戸社長】 FC1号店のエリアも冬の寒さが厳しく、外での運動が難しいという課題があった中で、「気軽に通えるchocoZAPが貴重な健康づくり拠点になっていた」とのことでした。chocoZAPが目指すのは、すべての人に等しく健康づくり環境を提供する“健康の社会インフラ化”です。そういう意味でもchocoZAPは選択肢の多い都市部以上に、サービスが縮小傾向にある地方で必要とされるサービスなのではないかと考えています。今後は地域の特性を深く理解したFCオーナーさまと協業しながらさらなる出店を加速させ、直営・FC合わせて国内8000店舗を目指して参ります。

──昨年からは香港、台湾、アメリカ、中国でchocoZAPのテストマーケティングを重ねてこられました。海外展開の手応えはいかがですか?

【瀬戸社長】 特に大きな手応えを実感しているのが香港で、日本の1.5倍の速さで新規会員を獲得しています。成功の要因としては、日本とかなり似たフィットネスを取り巻く事情がありました。そもそもフィットネス人口が少なかったところに、「運動ビギナーが気軽に通える高コスパフィットネス」というビジネスモデルによって、潜在需要を掘り起こすことができたと考えています。現在は7店舗が稼働していますが、さらに今年度中に5店舗がオープン予定です。

◆フィットネスの無人運営不可の国も…カラオケや美容などchocoZAPの“付加価値”を活かした海外展開を

──逆に苦戦した地域もあったのでしょうか。

【瀬戸社長】 中国については、いったん事業を一時休止する判断をしました。
現地では、自己投資への消費が慎重になっていることに加えて、サブスク型ビジネスに法的な制約もあるため、現状の日本モデルをそのまま展開するのは難しいと考えています。
その分、手ごたえのある香港の本格展開や、類似市場での検証にリソースを集中していきます。

──中国だけでなく、日本とは異なるレギュレーションの国・地域もあると思いますが、ローカライズはされるのでしょうか。

【瀬戸社長】 例えば、これから出店予定の韓国では、基本的にフィットネスジムの無人運営は不可とされています。ただしフィットネススペースが30%以下であれば無人運営も認められます。その点でフィットネスにとどまらず、マッサージやカラオケ、美容など幅広いサービスを提供しているchocoZAPの強みが活かせます。その他の国・地域についても、それぞれの地域特性に合わせた事業設計を行うことで、海外展開を加速していきたいと考えています。

──韓国のほか、今後はどのような国・地域へ進出される予定ですか?

【瀬戸社長】 香港と類似する市場としてすでにシンガポール、タイ、ベトナム、マレーシアへの出店を予定しています。先ほどFC1号店の長野県は「冬の寒さが厳しい」という地域特性があるという話をしましたが、アジアのこれらの地域はさらなる温暖化によって、屋外での運動が難しくなることが予測されています。何より世界的に医療費が高騰している中、日常的な健康づくりが必要不可欠だと考える人は世界中に増えています。これまでフィットネスに参加していなかった方を前向きにできるchocoZAPは、どの国・地域でも求められるサービスだという自信があります。

──サービス開始からわずか3年でchocoZAPがこれだけの成功を収めた背景には、「結果にコミットする」というバズワードを生んだRIZAPの知名度も大きかったと思われます。両事業の業態はまったく真逆ですが、シナジーはあるのでしょうか。

【瀬戸社長】 あります。一見、真逆のように思われる両事業ですが、実はRIZAPの新規入会者の2割はchocoZAPの会員さま経由なのです。運動習慣を日常に定着させるのがchocoZAPの役割ですが、やがてその先に「自分のありたい姿」を求める方も一定数いらっしゃいます。その思いに寄り添うのがパーソナルトレーニングのRIZAPです。

◆設立から約20年、「RIZAP=痩せたい人が通うジム」という認識に変化も

──2003年4月に設立し、日本にパーソナルトレーニングという概念を根付かせたRIZAPの功績は大きいものでした。一方で昨今はルッキズムに対する意識の変化から、「痩せていることが正義」という認識も薄まりつつあります。RIZAPの会員の「ありたい姿」にも変化は感じますか?

【瀬戸社長】 おっしゃる通り、人々の「ありたい姿」は確実に多様化しています。かつてはCMの印象から「RIZAP=痩せたい人が通うジム」という認識が根強かったですが、実際は増量を希望される会員さまも少なくありません。また単に「痩せたい/太りたい」ではなく、メリハリのあるボディを求められる方。しかも「引き締めたい部位/筋肉をつけたい部位」のイメージを明確にお持ちの方が非常に増えています。

──近年、数多く開催されるボディメイク大会の影響もあるのでしょうか。

【瀬戸社長】 そうですね。正しいトレーニングと食事管理、そして休養・回復のプログラムによって人間のボディはいかようにもメイクできるという知識をお持ちの方も増えました。とはいえ、「ありたい姿」を目指すためにはストイックさも必要です。その伴走者として「ありたい姿」というゴールまで徹底的に寄り添うのが、パーソナルトレーニングの価値です。chocoZAPの拡大と共に、RIZAPという受け皿を必要とされる方も確実に増えるはずですし、今後はさらに両事業のシナジーを強化していきたいと考えています。

(文/児玉澄子)

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