ラストワンマイルのプラットフォーマーを目指し、menuが実践する競合との差別化

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2025年12月05日 09:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
menuは日本発のフードデリバリーサービスとして、2018年に事業を開始しました。2019年にはテイクアウトアプリとしてmenuをリリースし、2021年にはKDDIと資本業務提携を行って、auユーザー向けの特典やPontaパス連携など、サービスを拡充しています。国内デリバリー市場はここ5年で2倍に成長しましたが、menuの信田篤男社長はこの市場はまだまだ伸びると意欲的。そんな信田社長に、現在のビジネス状況や競合との差別化、今後の戦略を聞きました。


携帯事業の戦略策定からフードデリバリーの世界へ



――信田社長のmenuに入社する以前の経歴を簡単に教えていただけますか。



信田氏:もともと私はKDDIに入社し、すでに30年以上経ちます。KDDIでは国内事業部で営業マーケティングの事業計画策定を行っていました。直近はミャンマーに赴任して、KDDIと住友商事のジョイントベンチャーがサポートするミャンマーの国営郵便・電気通信事業体で5年間働いて、約3年前に戻り、2023年4月からmenu取締役、2024年4月から代表取締役社長兼CEOに就任しました。



――menuは、KDDIとまったく違う業種ということで、戸惑いはありませんでしたか。



信田氏:戸惑いはありませんでした。今ではKDDIの規模は大きくなりましたが、私が入社した30年前は小さいベンチャー企業でした。menuに来て、30年前の気持ちに戻らせてもらったため、違和感はありませんでした。



――社長になられて1年半が経ちましたが、これまでどういったことを行われてきましたか。



信田氏:デリバリー事業は3マッチングといわれており、注文される方、お店の方、配達員の方がいます。われわれは、この3者がmenuを使うメリットを感じられる「三方良し」を目指しています。現在、いろいろなデリバリー会社がある中で、一番にmenuを使いたい、お付き合いしたいといわれる商品・サービスを作るしかないと思っています。これまで、そこを徹底してやってきました。


競合との差別化をどう図っていくのか



――menuが選ばれるために、競合との差別化をどう図っていこうと考えていますか。



信田氏:店舗の中には、いつも混んでいてなかなか食べられない有名なお店があります。ただ、みなさんはそのお店の商品を食べたいと思っています。そういったお店に加盟していただくには、かなり高いスキルの営業が必要になってきます。私たちはそういう有名なお店については業務委託するのではなく、弊社の社員が直接対応させていただいています。例えば、うどんの「つるとんたん」さんは、menuだけが扱っています。こういった、もともと競争力のある店舗をmenuに加えることによって、競争力を出していくことが基本です。



また弊社は、お客さんが注文するアプリも、店舗が使うアプリもすべて自社開発です。われわれの市場は変化が激しいため、使うアプリを自社開発することで、スピーディーに市場のマッチングができます。注文される方、お店の方、配達員の方、このマッチングの仕組みをいかに磨いていくのかという点がポイントだと思っています。



――有名な店舗は、わざわざデリバリーする必要はないように思えますが……。



信田氏:有名店がmenuでデリバリーを行う理由は大きく2つあります。menuの場合、店舗から最大6kmまで配達できますが、遠方のお客さんは、6km歩いて店舗に来ることはできません。店舗側からすると、今までリーチできなかった顧客に商品を食べてもらえるというのが1つ目の理由です。



また、店舗の場合は、お客さんにお水を出して、注文をとり、料理を作り、配膳して、会計し、お皿を下げるという手順が必要になります。デリバリーの場合は、料理を作る必要はありますが、あとはすべて不要になります。店舗にとっては効率化につながります。これが2つ目の理由です。


――「三方良し」の中で、配達員がmenuを利用するメリットは、どういうところでしょうか?



信田氏:配達員の方とのグループインタビューなどでよくいわれるのが、1時間あたりどれくらい稼げますかという点です。例えば15分に1件届けられるのであれば、1時間に4件届けられます。しかし20分に1件のペースでしか配達依頼が来なかったら1時間3件になり、配達報酬が減ります。そのため、配達員の方が配達をした後の待ち時間をいかになくしていくかがポイントになります。われわれは、最短ルートのガイダンスを行っており、1時間あたりの配達件数を増やせるようにしています。もちろん、その配達依頼を受けるかどうかは、配達員の方の判断になります。



また、これはmenuにしかないメリットですが、通常、配達報酬は1カ月まとめて、あるいは1週間まとめて支払われますが、KDDIはau PAYという決済プラットフォームを持っているため、配達が終わった瞬間にau PAYに入金されます。その後は、いつでも引き出すことができます。



そのほか、auの端末割引を設定したり、経験値に応じてランクがアップして追加報酬が得られる報酬制度を設けたりしています。



――現在、人手不足で人材の確保が厳しくなっていますが、そのあたりの苦労はありませんか。



信田氏:現時点では、配達員が足りなくて配達できなかったケースは、かなり少ないです。現状の事業規模だと、注文数に対して、一定数の配達員の方の確保はできています。


デリバリー市場の拡大に向けた戦略とは



――国内のデリバリー市場は、今後も伸びるポテンシャルを持っていると思いますか。



信田氏:コロナを契機に、日本のデリバリー市場は4,000億円から8,000億円に伸びています。コロナが開けても、市場はまったく落ちていません。一度使うと、離れられなくなるサービスだと思っています。



現在はフード中心ですが、今後は日用品など違うものを運ぶことで市場は伸びると考えています。トイレットペーパーや醤油など、なくなると困るものはたくさんあると思いますし、高齢化社会になって、出歩くことが難しい方も増えています。そういった方にとって、デリバリーサービスは社会インフラとして重要な役割になっています。目指すところは社会のプラットフォーマーです。究極は、日本にいらっしゃるすべての方に、欲しいものを欲しい時に、楽に手に入れられる仕組みを私たちが作るべきだと思っています。



――最近、ラーメン店やイベントとコラボしていますが、これにはどういう狙いがあるのでしょうか。



信田氏:ラーメンは、日本の食文化だと思っています。有名ラーメン店のオーナーさんとお話をさせてもらう機会がありますが、みなさん社会的な使命感をお持ちで、いろいろな人に提供したい、世界に広げていきたいという思いを持っています。われわれの配達品質で、それにお応えできると思い、一緒にコラボさせていただいています。



ラーメンは時間が経つと伸びてしまうので、デリバリーは本当に難しいです。一番難しいといわれている業界ですが、そこでサービスを磨くことによって、多くの方に食べていただけます。そうやって、われわれのブランドの価値も上げていきたいと思います。


――さきほど、アプリを自社開発されているとおっしゃいましたが、今後、ITで活用していきたいものはありますか?



信田氏:AIだと思います。menuのアプリを開くと、これまでの注文履歴によって嗜好を判断し、それに最適な店舗や商品を表示しているので、人によって違う画面が出てくると思います。こうしたレコメンドの最適化はAIによって自動化されており、今後は精度向上や新しい体験価値の創出が進むでしょう。世界中のすべての企業が、人間の手を煩わせずにコストを下げて、その分を新しい商品やサービスに投資する方向に向かっています。このAIによる体験の最適化こそが、これからの競争力の源泉になると考えています。



――今後注力していきたい領域など、事業戦略をお聞かせください。



信田氏:現在は、都心部中心のサービスエリアになっていますが、来年以降広げていき、多くの方に私たちのサービスを届けたいと思っています。これまでは、都市部でサービス品質を磨いてきました。大都市でのデリバリーオペレーションは難しく、地図も複雑になります。デパートや集合施設は、入室の仕方までガイドしないといけません。今後は、これまで磨いてきたサービスを大都市以外へも展開したいと思います。



また、フード以外にいろいろなものを運ぶべきだと思っています。コンビニさんは、あのスペースであらゆるものを置いているので、すごいと思います。コンビニが世の中からなくなったら、生活できないと思います。もう社会のインフラになっています。そこで、サービスエリアを広げて、コンビニさんが扱っているものを、いろいろなところにお運びすることを、今後はやっていきたいと思います。(丸山篤)

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