【プロレス】鈴木みのるが引退する棚橋弘至へ最後の挑発 「オレとあいつの差を見せつけてやりたい」

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2025年12月05日 10:20  webスポルティーバ

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【短期連載】証言・棚橋弘至〜鈴木みのるインタビュー(後編)

 棚橋弘至と鈴木みのる──プロレススタイルもキャラクターも生き方もまったく対極のふたりだが、だからこそリングでぶつかり合えば想像を超えた面白い闘いになる。来年1月4日の東京ドームで引退する棚橋に、鈴木みのるは最後の対決を訴える。

【ウルトラマンと怪獣】

── 最近、棚橋選手と会話をしたりする機会はありましたか?

鈴木 今年9月の『TAKAYAMANIA』の時かな。

── 高山善廣選手を応援するイベントに、棚橋選手が新日本の社長として来場しましたね。

鈴木 『TAKAYAMANIA』の前に、棚橋と直接話したんだよ。高山にはまったく言ってなかったんだけど、あいつと話をしてると、いつも出てくる名前が柴田勝頼、中邑真輔、棚橋弘至だから、やっぱり特別な思いがあるんだなと思って。「あいつら、みんな出世したよね」みたいなところから、「あんなダメだった新日本で、全部オレにおっかぶせやがって」みたいな話で、必ずあの3人の名前が出て、けっこう強い思い入れを感じたんだよね。

── 高山さんにとってはかわいい後輩たち。

鈴木 柴田はいつも高山に会いに来てくれるし、中邑も何かあれば来てくれるし、会ったことがないのはたぶん棚橋だなと思って、「会場に来てくれ」ということよりも、まず高山の思いみたいなことを棚橋に伝えたいと思ったんだよね。

 で、「オレのことは嫌いになっても、高山善廣のことは嫌いにならないでよ」とは言ってねーけど(笑)、とにかく高山に会いに来てほしいと。もし『TAKAYAMANIA』に参加できなくても、高山と会うだけでもいいって気持ちもあったので。

── 最終的に後楽園ホールに来てくれましたね。

鈴木 棚橋が「鈴木さん、元気ですね」って言うから、「ああ、元気だよ」って。「おまえとは鍛え方が違うから疲れたことがない」って言ったら笑ってたよ。

── まだそんなことを言い合ってるんですか(笑)。

鈴木 ずっとマウントの取り合いだから(笑)。

── 本当に対照的なふたりで、プロレスのスタイルも違えば、いろんな団体を渡り歩いた男と生涯新日本の男、そしてフリーランスと新日本の代表取締役という、本当に対極ですよね。

鈴木 ウルトラマンと怪獣ぐらいの差があるよな。

── まさに、ずっとウルトラマンと怪獣をやっているふたりですね。

鈴木 それでいいんだよ。高山と一緒に闘ってる時に「オレたちが目指すのはあっちじゃない、こっち側だ。時代によってウルトラマンは変わっていくけど、バルタン星人はいつもいるから」って。高山ってすごくプロレスファンだよね。そういう言葉をオレに持ってくるんだよ。

── 核心をついた言葉ですね。

鈴木 わかりやすいんだよ。「プロレスラーにたとえるならブロディ&ハンセンだよ」って言ってた。全日に行ってトップになって、新日でトップになって、ヒールになったり、ベビーフェイスになっても、そんなのはもう存在が超越してるじゃん。なんも関係ない。今のオレは「ひとりハンセン&ブロディ」だよ。

【宝物を破って選んだプロレスラーの道】

── 「高山はプロレスファンだ」とおっしゃいましたけど、鈴木さんも高山さんに負けないくらい好きなんじゃないですか?

鈴木 プロレスは好きだよ。ただ、オレと高山の決定的な違い、というか高山だけじゃなくオレとほかのレスラーとの圧倒的違いは、ファン歴が短いということ。みんな熱狂的にプロレスが好きで、「プロレスラーになりたい!」みたいな感じでこの世界に入ってきてるけど、オレがプロレスを見てたのは中学の3年間だけだから。

 ただ、その3年間に熱狂的に見てたことは確かで、会場にも何度も見に行ったし、プロレス雑誌なんかもう隅から隅まで読んでた。でも自分もプロレスラーになりたいと思った日に、プロレス雑誌から何から全部捨てて、高校生からはレスリング一本。

── 高校レスリングなんて、プロレス修行の始まりみたいなものですよね。

鈴木 プロレスをやるために、プロレスラーになるためにやってたんで。中学の時、始発電車に乗って日本橋高島屋にアントニオ猪木サイン会に行って、サインをもらった。そんな宝物も破って捨てたから。「これからオレがその世界に行って倒す人間のサインをなんで持ってなきゃいけないんだ」と思って。凱旋帰国後の前田日明のサイン会にも行って、サインをもらったけど、それも「オレが倒す相手だ」と思って破って捨てた。馬鹿だよなー(笑)。

── そこも棚橋選手とは対極ですね。入門直前の大学生まで熱心なプロレスファンでしたから。

鈴木 あのさ、オレ、棚橋ともう1回闘うことになんの問題もないよな? ぶっちゃけ、客が望んでるんじゃないかなっていう気持ちもある。オレたちはライバルでもなかったし、オレは棚橋の強大な壁でもなかったし、同期でもなければ先輩でもなければ後輩でもなくて、なんでもないただの敵なんだけど、ただ、生きてきた道が対極っていうことだけは間違いない。対極で、感覚が違うからこそ闘っていて面白い。

── できることならもう1回、見たいです。

鈴木 オレ、棚橋は引退したら絶対に復帰しないと思う。見てるとそんな雰囲気を感じる。それを考えたら、「もう1回触りたいな」という気持ちは正直ある。試合をしたいなという気持ちはあるけど、決めるのはオレじゃないのでね。べつにどこかの町民会館とかでもいいんだよ。どこでもいいから、引退するまでに試合したいなと思ってる。そして、オレとあいつの差を見せつけてやりたい。まだ間に合うんじゃねーか?


鈴木みのる/1968年6月17日生まれ。神奈川県出身。88年に新日本プロレスでデビュー。新生UWF、プロフェッショナルレスリング藤原組を経て、93年に船木誠勝らとパンクラスを旗揚げ。95年5月、第2代キング・オブ・パンクラス王座に君臨。プロレス復帰後は"世界一性格の悪い男"をキャッチコピーに、独自のストロングスタイルと観客を巻き込む存在感で国内外のリングを席巻。50代後半になった今も衰えぬ闘志と表現力で、プロレス界の"生ける狂気"として名を刻んでいる

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