画像提供:マイナビニュース高級腕時計の中には、製造本数や販売地域、販売時期が限られている「レアな」時計がたびたび登場します。本連載では、数々の腕時計を見てきたプロフェッショナルが厳選する、レアな腕時計を写真とともにお届けします。
今回は、多くのアンティークウォッチを取り扱うシェルマン銀座店の藤原亮介さんにチャペックの「アンタークティック サシコ」モデルを紹介してもらいました。
○レア度:★★★★★「実物をみられたらご利益があるかも?! レベル」
○どんな腕時計?
「チャペック」というブランドは、もともとフランソワ・チャペックというナポレオン3世のお抱え時計師が、1945年にジュネーブで「チャペック社」を設立したことから始まります。このフランソワ・チャペックという人物は、チャペック社の設立以前、パテック・フィリップを創立したアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと組んで「パテック・チャペック社」を運営していました。
しかし、1960年代以降にフランソワ・チャペックは時計史から姿を消すことになります。
今回紹介する「アンタークティック サシコ」は、そんなフランソワ・チャペック氏のスタイルやスピリットを愛する起業家の呼びかけにより、クラウドファンディングでブランドが復活した2015年に発売されたものです。このアンターティック・コレクションが、「チャペック」の名を一躍有名にしたものとして知られています。日本限定で45本のみ制作された特別な品です。
日本伝統の藍染をイメージさせる深いインディゴブルーの文字盤には、こちらも日本の伝統的な手芸である「刺し子」模様が用いられるなど、ジャポニズムを感じるアイテムとなっています。
ムーブメントには、ゼロから自社開発されたチャペック初の自動巻ムーブメント「SXH5」を採用。19世紀の懐中時計からインスピレーションを得た、7つのスケルトン化されたブリッジが織りなすレースのような独創的な構造からは、ブランドの持つ深い歴史と気品が感じられ、所有欲を満たしてくれる1本です。
○スタッフに聞いた、この腕時計がレアな理由
文字盤に施されるギョーシェ模様は、通常はピラミッド型の組み合わせが多い彫刻技法ですが、「刺し子」模様を放射線状に再構成したこちらのギョーシェ模様はおうぎ形で、かつラインが幾本か入っています。これによって光の陰影が様々な文字盤の表情を浮かび上がらせます。
人間工学に基づいた美しいフォルムや高級感を感じるブレスレットなど、細かいところにまでしっかりと作り込まれていて、見所がたくさんあります。アンティーク時計と比べれば、現代の時計にはどれもこうした傾向が見られます。それでも、ここまで作り込んでいる時計は他にはあまりないと思います。
藤原亮介 フジワラリョウスケ シェルマン アンティーク事業部シニアマネージャー、シェルマン銀座店本店 店長。メンズアンティークの仕入れ担当として13年程腕時計などを担当。コロナ過以前はアメリカでの買付けも行っていた。時計だけでなく車もアンティークやヴィンテージが好き。株式会社シェルマン:https://shellman.co.jp/ この監修者の記事一覧はこちら
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)