久保建英、レアル・ソシエダ加入以来の正念場 移籍どころではない現地で燻る「批判」の正体

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2025年12月06日 07:00  webスポルティーバ

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 2025−26シーズン、レアル・ソシエダ(ラ・レアル)入団4年目になる久保建英は、かつてないほど賛否が分かれるシーズンを過ごしている。プレーレベルそのものは下がっていないが、久保の立場が変化したことはあるだろう。多くの主力選手が相次いで引退や移籍をするなかでエース格の選手となって、1年目とは比べものにならない「期待」がかかる。そのフィルターをどう通すか、で違いが出るのだ。

 スペインメディアと日本メディア(そして双方のファンも)でも、久保に対する評価は違っている。

 スペイン各紙は「エースとしてチームをけん引し、勝利に導けるか」を軸に久保を評価しているだけに、過去の貢献や才能は評価しながらも、今シーズンの"体たらく"について甘い論調にはならない。とりわけ、ラ・レアルの地元であるギプスコア県の地元紙は久保のパフォーマンスに不満を覚えている。目下のチームの不振により、「期待」が裏切られた気分になるのだろう。

「(ラ・レアルは)補強が必要」

 日本遠征の際に久保がそう発言した件は、今も影を落とす。これについては久保自身が謝罪したように、日本人が考えるよりも深刻な失言だった。補強の相次ぐ失敗は、まさに彼の言うとおりなのだが......。

 同時に、久保がケガで主力になりきれていないことが批判的見方を燻らせる。

「ラージョ・バジェカーノ戦で交代出場した試合は最低の出来で、敗戦の主犯だった」

 そこまで強く批判するクラブOBもいる。メディア以上に、オールドファンや関係者のなかに眉をひそめる人が増えているのだ。

 これには久保本人にも反論があるだろう。ケガをおして無理して出場し、チームのために働こうとしたにすぎないからだ。今季はこれまでBチームを率いていたセルヒオ・フランシスコが新たに監督に就任し、主力の入れ替えもあって戦いが安定していないだけで、チームの不振を久保ひとりに責任を転嫁すべきではない。ただ、プロ選手はピッチに立った以上、勝敗で評価が下されてしまうのだ。

【ビジャレアル戦の評価は「並」】

「日本代表に招集されてケガをして帰ってきて、治ったかと思うと、また代表に呼ばれてケガして帰ってくるとは何事か」

 そんな声が出るのも、やはりラ・レアル側の立場からすると仕方がない。

 さらに、今シーズンは久保のライバルとしてポルトガル代表ゴンサロ・ゲデスが加入した。ゲデスは利き足が右のパワーと技術が融合した選手で、ひとりでもゴールに迫れるウインガーだが、実はラ・レアルではこのタイプが好まれてきた。もともと利き足が右のウイングを右サイドに配し、クロスを入れて得点を取るのが基本の構造で、過去にもヴァレリー・カルピン、シャビ・プリエト、ポルトゥといった選手が活躍してきたのだ。

 ちなみに、利き足が左の久保は中に切り込みながら、機動力とコンビネーションを武器にゴールへ迫るタイプである。

 一方、日本国内のメディアやファンは久保を"明るい希望"と受け止めている。そもそも、日本のメディアにとって、ラ・レアルの勝ち負けはほぼ関係ない。テレビのスポーツニュースなどでは、勝敗が伝えられないこともしばしばだ。物議を醸した発言も「言いたいことを言えて頼もしい」「チームを思ってのもの」と受け取られる。

 実際、久保の右サイドでの存在感は抜群である。勇猛果敢に一番槍を担い、味方を奮い立たせて城砦の一角を攻め落とす。あるいはひとりで相手の小隊を壊滅して戦線を有利にする。その「個」の威力は絶大だ。

 直近のビジャレアル戦は象徴的だろう。

 久保は、右サイドでテンポを作っていた。カルロス・ソレールのミドルシュートをアシスト。そのシーンではアバウトに蹴られたボールを胸で完璧にコントロールし、複数の選手を引きつけることで、味方にシュートのアドバンテージを与えていた。

「今シーズン初のアシスト!」

 日本国内では期待も込めてそう報じられている。日本代表でのブラジル、ガーナ、ボリビア戦のパフォーマンスも、シャドー(トップ下)でも上々だっただけに、「プレミアリーグのクラブが興味か?」といった楽観的な報道が飛び交うほどだ。

 ただ、そのビジャレアル戦では、リードを許したまま、久保は交代を余儀なくされている。代わりに入ったアンデル・バレネチェアがFKから見事な同点弾を決めたが、それもハッピーエンドではなく、アディショナルタイムの失点で敗れている。スペイン国内のメディアは久保に対し、ほとんどが星ひとつ(0〜3の4段階評価)で、よくも悪くもない、というもの。得点をお膳立てしたが、失点の契機にもなっていたのだ。

 過去3シーズン、久保はヨーロッパカップ戦も同時に戦ってきた。しかし、今シーズンはチームの成績不振で欧州カップ戦出場権を逃している。それは彼の責任ではないが、チーム成績が落ち込んでいるのは事実だ。

 久保は正念場に立っている。いまの彼は、黒にも白にも映る。能力の高さや野心的なプレーは評価できるが、代表での足首のケガの影響もあって、先発を外れる試合が続いていた。少なくとも、シーズンが終わってワールドカップを戦うまでは、移籍云々で騒いでいる場合ではないだろう(久保本人もシーズン中の移籍はないことを明言している)。

 久保がラ・レアルに欠かせない選手で、ラ・リーガ全体を見渡しても有力なアタッカーであることは変わっていない。しかし、中心選手には「Tirar del Carro」(一番つらい仕事を引き受け、先頭に立つ)という、"試合を決める"リーダーシップが求められる。それが果たされたとき、彼はさらなる高みに立っているはずだ。

 次節、ラ・レアルは12月6日(現地時間)、アラベスと対戦する。

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