【箱根駅伝2026】強い駒澤大は帰ってきたのか? 藤田敦史監督が感じる自信は全日本大学駅伝で確信に変わった

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2025年12月06日 07:20  webスポルティーバ

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駒澤大・藤田敦史監督インタビュー 前編

 前回の箱根駅伝、駒澤大は青学大に及ばず2位という結果だった。だが、そのチームからはエース・篠原倖太朗が抜けただけで、今季は戦力を維持し、「強い駒澤大が復活か」と期待されている。しかし出雲駅伝では、まさかの5位という予想外の三大駅伝のスタートとなった。

 続く2戦目の全日本大学駅伝は、1区から機能して序盤は先頭集団でレースを進め、勝負をかけた5区で伊藤蒼唯(4年)が区間新の快走を見せて、想定どおりの勝利を果たした。

 そんなレースの手応えと、そこから得た箱根駅伝への戦略を藤田敦史監督に聞く。

――全日本大学駅伝は狙いどおりのレースでしたが、出雲駅伝と2大会を終えて手応えはいかがですか?

藤田 出雲は優勝を目指して5位という結果だったので、チームとしては非常に不本意な成績というか、非常にショックではありました。ただ、今年の戦力を考えると、外す区間を作らなければ全日本では間違いなく優勝を狙えるチームだということもわかりました。全日本に向けては、各区間5位以内を目標に掲げ、優勝を目指そう話をしていました。実際に一番悪くても区間5位という結果でまとめることができ、選手たちも「このレースができれば駒澤は強い」というのが再認識できたようです。

――5区の山川拓馬選手(4年)も、「出雲の結果を見れば、駒澤は6区間中4区間で2位になっているので、『チームとして弱いはずはない』とみんなで話した」と言っていましたが、実際そのとおりでしたね。

藤田 取り組んでいる方向性は、間違っていないんだと自信になりました。

――出雲の3区で順位を落とした桑田駿介選手(2年)は、全日本で使わなかったのはどういった意図がありましたか?

藤田  練習ではパーフェクトな状態だったので出雲で3区に起用しました。レース展開も早稲田大のすぐうしろという、非常にいいところで走らせてもらいましたが、それでもいい走りができませんでした。このままではダメだと思い、一度メンバーから外れて客観的に自分の走りを見直すことをさせました。

 メンバーから外す時は本人と「練習はできているから、使えないわけではない」と話しました。ただ、全日本に出て走れたとしても、出雲のマイナスからゼロに戻るだけで、箱根に向けてはプラスがない。それにもし、全日本で使って走れないとなるとマイナスが積み重なることも心配でした。上尾ハーフマラソンで復活してくれたら、箱根に向けてはプラスに転じると思います(実際に上尾ハーフでは2位と好成績を残した)。

 私も駒澤大の監督を務めて3年目になりますが、出雲と全日本を目一杯取り組んでからの箱根ではなく、出雲と全日本で箱根に向けてプラスアルファを出せるかが重要だと、青学大の原晋監督のマネージメントを見て、参考にした部分もあります。桑田にも外すということを伝えて納得してもらいましたし、それで全日本を勝てたというのは、駒澤にとって非常に大きなプラスになったと思います。 

―全日本では7区の佐藤圭汰選手(4年)と8区の山川拓馬選手(4年)も余裕を持った走りで終えられたことも箱根に向けてプラスになりますね。

藤田 もし、追う展開だったらケガ明けでまだ練習が積めていない圭汰も、山川も勝つために無理をしたと思います。ただ、6区までアドバンテージがあったので、余裕を持った走りができました。そのおかげで疲労もなく次に向けてすぐに始動できることはありがたかったです。箱根に向けては本当にプラスが増えたなという印象です。

【4年生の不調が下級生の成長を促した】

――全日本のあとの囲み取材では、「去年と違う層の厚さがある」と話し、理想の区間配置ができたことにも手応えを感じたように見えましたが、実際はいかがですか?

藤田 伊藤のようなエース級の選手を5区に置くという攻めの区間配置は、他大学もやりたいけどできないというのが実際のところだと思います。うちの勝因はそれができたことだと思いますが、このオーダーを実現できたのはエース区間である7区に圭汰を置けたことが大きかったです。

 圭汰が走れないとなると、7区にはエース級の伊藤か谷中晴(全日本2区区間3位・2年)を持ってくるしかなく、5区はどうしてもつなぎ区間になってしまいます。MVPは間違いなく伊藤ですが、陰のMVPは圭汰でした。

 ケガで苦しんでチームに迷惑をかけたという思いもあって、最後の駅伝シーズンはチームの優勝に貢献したいと言っていましたし、全日本に関しては「僕が7区に入ることがチームにとって一番いいと思う」と言ってくれたので、監督としてはこんなにありがたいことはなかったです。

――去年の全日本のあとは「うちは10人ギリギリだけど、逆に言えばその10人が揃えばしっかり戦えるし、勝てると思っている」と言っていましたが、今年は本当に状況が変わってきましたね。

藤田 全日本は、エントリーメンバーの誰を使っても遜色ない走りができる自信がありました。そういう意味で今年は、箱根に向けて選手層がだいぶ厚くなったと思います。ただ、チームを預かる身としては、全日本の優勝は素直にうれしい反面、箱根が終わると4人の4年生が抜けると思うと、諸手を挙げて喜ぶことができない感情も出てきました(笑)。

――それは毎年の悩みですね(笑)。今季は昨季からほぼ残った14人のチームプランニングがうまくいったということですか?

藤田 そうですね。今季は最初から選手層がある程度揃っていたので、4年生がいるうちに下級生を鍛えるところに主眼を置いてやろうと思っていました。しかし、そううまくはいかず、前半は圭汰や伊藤がケガをして夏合宿を一緒にできない状況があったり、帰山侑大(4年)もケガであまり練習ができませんでした。

 結局は、山川ひとりが孤軍奮闘して下級生たちと頑張ってくれました。

――夏の間の4年生が不調のなか、下級生たちに「自分たちがやらなくてはいけない」という意識が芽生えたのが、今につながっているのでしょうね。

藤田 それはあります。まだ力がない選手たちも今年の夏は非常にいい練習をやってくれました。全体としては(2022年の)三冠をした時くらいチーム練習を積むことができていました。

 その積み重ねを実感したのは、出雲が終わってからのチーム練習で、誰ひとりとして遅れることなく走れるようになっていた時です。そのくらいチームとしてできあがってきている感覚があったので、「全日本はイケるかもしれない」という手応えが雰囲気としてもありました。

 箱根に向けては、私からの一方通行ではなくて選手たちにきちんと伝えたうえで、選手たちも考えを持って同じ目線で進んでいくことが大事だと思っているので、それはかなり意識しています。

後編へ続く>>

【Profile】
藤田敦史/ふじた・あつし
1976年11月6日生まれ。福島県出身。駒澤大在学時には箱根駅伝に4年連続で出場し、4年生の時には4区で区間記録を更新している。卒業後は富士通に入社し、故障に悩まされながらも福岡国際マラソンで優勝を果たした。引退後、富士通陸上部で長距離コーチを務めたのち、母校である駒澤大陸上競技部のコーチに就任した。2023年の箱根駅伝終了後、長年、陸上競技部監督を務めた大八木弘明氏に代わり監督に就任。出雲駅伝優勝1回、全日本大学駅伝優勝2回と成績を残している。

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  • どの大学がどうなろうと知ったことでも無いが、来年は観客が居るところに熊さんが乱入して大盛り上がりすることに期待するね���ä���١�
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