デイヴィッド・リンチ監督作『インランド・エンパイア 4K』日本版ビジュアル完成 裕木奈江のコメント到着

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2025年12月09日 11:10  クランクイン!

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クランクイン!

映画『インランド・エンパイア 4K』日本版ビジュアル (C)2007 Bobkind Inc ‐ STUDIOCANAL ‐ All Rights Reserved.
 デイヴィッド・リンチ監督による最後の長編映画『インランド・エンパイア 4K』より、叫ぶ顔や解読不能な文字列が迷宮へと誘う日本版ビジュアルが解禁。また、リンチに見出された裕木奈江が当時の邂逅を振り返るコメントも到着した。

【写真】裕木奈江とデイヴィッド・リンチ監督

 2025年1月15日、78歳で生涯を閉じた映画監督デイヴィッド・リンチ。1976年のデビュー作『イレイザーヘッド』以降、“カルトの帝王”として世界中の映画人と観客を魅了し続けた巨匠だ。長編映画はわずか10本。その最後を飾る2006年製作の『インランド・エンパイア』が、リンチ自身の監修によって4Kリマスター化され、『インランド・エンパイア 4K』として2026年1月9日より全国順次公開される。

 本作は、監督・脚本から撮影・音楽・編集に至るまで、リンチ自らが手掛けた最も濃密な一作。ローラ・ダーン演じる映画主演女優を主人公に、現実と映画の境界が次第に曖昧になっていく悪夢のような不条理劇が展開する。その蟲惑的で難解な内容に対して、本人が残した言葉はただ一つ――「about a woman in trouble(トラブルに陥った女の話)」。謎が謎を呼ぶ物語は、公開当時から賛否を巻き起こし、いまもなお伝説として語り継がれている。

 制作の発端は、近所に引っ越してきたローラ・ダーンとリンチの偶然の再会だった。リンチは彼女のために14項のモノローグ脚本を用意し、全体の脚本が完成しないまま各撮影現場で思いついたシーンをその都度撮影していった。撮影中に浮かんだアイデアを次に撮る――その繰り返しで、リンチ自身も完成形がどうなるのか分からなかったと語っている。また、本編はすべてSONY PD‐150(デジタルビデオカメラ)で撮影されたことでも知られ、日本の女優・裕木奈江が出演していることも話題となった。

 このたび、日本版メインビジュアルが完成。リンチ監督が放つ悪夢的な世界観を、鮮烈に体現した1枚となっている。ビジュアルの上部には、主人公ニッキー(ローラ・ダーン)の前に突如現れる、判別不能な崩れた文字列「AXX゜NN,」が記された壁面が映し出される。どこへ続くのか分からない“虚構の入り口”を思わせ、彼女の精神が崩れていく予兆を静かに漂わせる。

 一方、下部には強い光に照らされたニッキーの顔が大きく映し出され、その表情は恐怖と混乱に満ちている。そして右側に添えられたコピー「悪夢は終わらない」が、彼女が足を踏み入れる終わりなき迷宮と、物語が向かう深い闇を予感させる。

 また、本作に出演した裕木奈江(女優・歌手)から、今回の公開に向けてメッセージが到着した。当初はエキストラとしての参加予定だったが、現場で彼女の存在に強い印象を受けたリンチ監督が、セリフ付きの“Street Woman”役として起用することを決めたという。

 映画『インランド・エンパイア 4K』は、2026年1月9日より全国順次公開。

※裕木奈江のコメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■裕木奈江

 この度、リンチ監督の『Inland Empire』が再上映されること、心よりお祝い申し上げます。

 私にとってこの作品はとても思い出深く、特別なものです。

 リンチ監督のファンだった私はロサンゼルスでエキストラ募集があると聞き、撮影現場へ向かいました。現場は熱気と活気に満ちていて、本当にエキサイティングな体験でした。

 撮影終了後、監督にご挨拶に伺ったところ、「また別の役があったらやってみたい?」と声をかけていただき、驚きと興奮で「もちろん!」と即答したのを覚えています。それからしばらくご連絡をいただけなかったのでもう撮影は終わったものと思っていましたが、ある日連絡が入り、ファックスで長い英語のセリフが送られてきました。

 当時の私はまだ英語の勉強を始めたばかりでしたので、「私には無理だと思う」とお伝えしたのですが、監督は「アクセントが面白いからやって欲しい。とにかく全部覚えて一生懸命喋ってみて」と。巨匠に言われては仕方がないので、あの摩訶不思議なセリフを黙々と覚えました。

 当時、スタッフさんからは「Web公開用の短編になる予定です」と伺っていたので、まさか3時間もの長編大作として劇場公開された時には心底驚きました。

 劇場で鑑賞してさらに驚いたのは、エキストラとして参加したシーンに、一瞬ですが映り込んでいたことです。よかったら探してみてください。

 日本での再上映、本当に嬉しいです。

 これからも監督の作品が愛され、語り継がれていくことを願っております。
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