「国民の意思変えねば」=被団協、核廃絶へ固い決意―平和賞受賞1年で田中代表委員

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2025年12月09日 21:01  時事通信社

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時事通信社

ノーベル平和賞受賞1年を前に、取材に応じる日本被団協の田中熙巳代表委員=4日、埼玉県新座市
 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞から10日で1年となるのを前に、田中熙巳代表委員(93)=埼玉県新座市=が取材に応じた。高齢を押し講演などに奔走してきた田中さんは、この1年を「核兵器廃絶に向けた前進は見られない」と振り返りながらも、「国民の意思を変えねばならない」と決意は固い。

 「ノーベル賞委員会が期待したよう運動を大きくするのに、若者に呼び掛け、もう少し頑張らないといけない。皆さん、もうちょっと頑張りましょう」。10月、東京都内で開かれた日本被団協の会議で、田中さんは全国から集まった被爆者に畳み掛けた。

 昨年12月10日、ノルウェーでの授賞式で、田中さんは核廃絶を「原爆被害者の心からの願い」と訴えた。日本被団協への授与は反核の世論を高める狙いだったとされるが、被爆80年の今年、核を取り巻く国際情勢は厳しさを増し、唯一の戦争被爆国日本は3月の核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を見送った。

 授賞式後、田中さんは、ほぼ休みなしで北海道から九州まで講演などに出向いた。だが、「核廃絶に向けた動きは見えない」と言う。人と人との「対話」が乏しくなっているように感じており、「心を動かし、前向きに運動することは容易でない」と吐露。多くの仲間は鬼籍に入り、「受賞は10年遅かった」と悔しさもにじませる。

 10月に高市早苗首相が就任し、非核三原則見直しの可能性が取り沙汰されるようになった。核を「兵器の名にも値しない悪魔の道具」と評す田中さんは、核禁条約は三原則より広範に核を禁じているとし、「われわれがやらねばならないのは、政府を条約に加盟させることだ」と語る。

 政府を動かすため、世論を変えねばと考えている。「若い人に呼び掛け、対話を広げていくしかない。最終目標は、世界中で核を存在させないこと」。核なき世界を決して諦めていない。 

日本被団協の会議で、「もう少し頑張りましょう」と呼び掛ける田中熙巳代表委員(右奥)=10月8日、東京都千代田区
日本被団協の会議で、「もう少し頑張りましょう」と呼び掛ける田中熙巳代表委員(右奥)=10月8日、東京都千代田区
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