「料理はアドリブなんです」 料理人の笠原将弘さんが考える“料理上手”になるためのコツ

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2025年12月09日 22:00  クックパッドニュース

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クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。第51回目・52回目のゲストは、料理人の笠原将弘さんです。

“おそうざい”は毎日食べても飽きないことが大事

今までに100冊以上の料理本を出版しているという笠原さん。2004年に『賛否両論』をオープンしてから4〜5年経った頃に、最初の本を出したそう。

「基本的には、僕は来た仕事は断らない主義なんですよ。特に最初の頃は、本を出せるって光栄じゃないですか。だから、すごかった年は月に1冊のペースで出していましたよ」

料理本でさまざまなおそうざいの提案をしてきた笠原さんが考える“おそうざいの定義”は、毎日食べても飽きないもの。

「白いご飯のおかずにもなれば、おつまみにもなり、余ったらお弁当にも入れられる。それでいて、冷蔵庫の中にあるものでパパッと作れる。そういうものだと思いますよ。『今日はおそうざいを作るぞ!』って気張って作るものじゃないと思うんです」

100冊以上も料理本を出しているため、毎年少しずつ改良を加えたり、自分の好みの変化を反映させたりして、同じ料理でもかなりレシピは変わってきているとのこと。

「私は進化を止めていない。だから、毎回買わなきゃダメなんですよ(笑)。笠原がどう攻めてくるか、その進化を見てほしいんでね。同じレシピだと思って舐めてもらっちゃ困るんですよ(笑)」


「笠原将弘のまた食べたくなるおそうざい」(マガジンハウス)

家庭のおそうざいは子どもから大人までみんなで食べるため、“ちょうどいいゾーン”を狙うことが大事だと考える。

「甘すぎると大人は嫌がるし、薄味だと子どもは物足りないってなるじゃないですか。だから、全員が食べておいしいところを僕はいつも狙っていますよ。そして、ビールのつまみにもなればご飯のおかずにもなるというね」

“素材ありき”な部分が和食の弱点

笠原さんが考える“和食の定義”は、その土地で採れる旬のものをシンプルに調理したもの。

「でも、そこが和食の弱点になっている部分もあると思います。上品な薄味で素材の良さを活かすので、そもそも素材が良くないとあまりおいしくないと感じることもある。あと、シンプルなものはごまかしが効かないでしょ。そこが難しいと言われるところかなと感じますね」


さらに、和食が世界で広がりにくい理由も“素材ありき”な点にあるという。

「フレンチや中華は、いろいろなスパイスやハーブや調味料などで新しい味を作っちゃう料理なんです。だから、世界中どこでも作れるんです」

ただ、これからは日本からわざわざ食材を取り寄せるのではなく、その国の食材をシンプルに活かす和食が世界では増えてくると笠原さんは予想する。

「ちょっと前までは“日本のものを再現する”という考え方だったから、ちゃんとした和食はできなかったわけです。わかりやすい天ぷらやすき焼き、あとは変わった海苔巻きの寿司とか。でもこれからは、海外で採れる日本にはない野菜をお浸しにするみたいな形になっていくと思いますよ」

ほかの国の料理のほうが難しいのに、和食を難しいと考える日本人が多すぎる、と笠原さんは嘆いていた。

「出汁を取らなきゃいけないとか、薄味で上品な料亭みたいな料理を作らなきゃいけないとかって、みなさん勝手に思い込んでしまっている。あと、昔の板前さんって怖そうじゃないですか。だから、僕は少しでも和食の敷居を下げるために、あえて砕けた感じにしているんです(笑)」

やらなくてもいいことをやらなくてはいけないかのようにイメージづけられている部分も多く感じられる。

「だから、僕は自分の本でも一貫して言っていますが、お店だからこそそういった作業はやるけど、家庭料理ではこんなことはやらなくていい。家庭では家にある調味料だけで作ればいいし、面取りとかもしなくていいんですよ」

料理は“想像力”がないと上手にならない

料理本でのレシピの書き方も、昔と比べて大きく変化してきていると笠原さんは言う。

「絶対にやったほうがいいことは書きますが、やらなくていい手間はとにかく省くようにしています。分量もなるべく覚えやすくして、できるだけ全て大さじ1、みたいな感じです」

分量はどうしようとか、残ったらどうしようといったことを考える人が多すぎるので、「おそうざいは残せばいいんです。和食はもっと大らかでいい」と笠原さんは主張する。

「僕の修行時代なんて、醤油ドボドボとか砂糖バサーッと入れろみたいな教え方でしたよ。師匠のレシピノートをこっそり覗き見したら、お玉2杯とか、お酢ピュッピュー、砂糖バサー、醤油ドボドボみたいに書いてありましたもん。そういう大らかさが大事なんです」

現代はレシピがあり過ぎることで堅苦しくなってしまい、逆に料理が作れない人を増やしてしまっている面もある。

「料理はアドリブなんですよ。例えば、椎茸がなかったらエリンギに変えてみるとか。そういうことができる人は料理上手になると思う。『創造力がない人は料理下手だ』と僕はよく言っちゃうんですけど、応用が利くようになると料理が楽しくなると思う。行き着くところは、冷蔵庫にあるもので名もない料理が作れるようになるわけですよ」

だからこそ、何よりも“創造力”が最も重要だと笠原さんは力説する。

「創造力は人間のあらゆることを進化させてくれますよ。考えることを疎かにしているから、レシピがないと作れないようになっちゃう。料理のこと以外でも、いろいろなことを考えるのが大事だと思うんですよ。こういうことを言ったらあの人が傷つくかなとかね。それも想像力じゃないですか。僕は常に考えていますから」

“シンプルなおそうざい”がウケる時代になる

近年は冷凍食品やコンビニのお弁当などの味も向上しているが、そういうのも上手く活用していくことにも利点があるという。

「全てをそれにしないで、そこに足りない汁物だけは自分で作ってみるとか、そういうことでいいんじゃないですかね。あと、パックごと食べるのは味気ないから、家にあるおしゃれな器に盛り直してみるとか。そんなことで家の食事は楽しくなるじゃないですか」

家で食事をする楽しみは、とにかく自由であることだと笠原さんは言う。

「コンビニのお弁当もおかずを1個1個分解して、小皿に盛って、きちんとおぼんに乗っけたりする。そういうのが楽しいんですよ。いろいろカスタマイズが楽しめるのも家での食事の良さ。あと、家ならお酒を飲んで酔っ払ってもすぐ寝られるとかね」

“和食の未来”に関しては、「一周回ってすごくシンプルなものに戻る」と笠原さんは考える。

「昔ながらのおそうざいみたいなものがウケる時代になってくるのかなと思っています。最近おにぎりが流行っているような感じで、シンプルなものが人気を得る。昭和のスナックでお母さんが作った煮物とかって、すごくおいしかったじゃないですか。そういう時代になりますね」

(TEXT:山田周平)

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【ゲスト】

第51回・第52回(11月7日・14日配信) 笠原将弘さん


東京・恵比寿にある日本料理店『賛否両論』店主。新宿の有名日本料理店で修業した後、実家の焼き鳥店『とり将』を継ぎ、2004年に『賛否両論』をオープン。確かな調理技術と卓越した料理センスから生まれる独創的な和食が評判を呼び、瞬く間に予約のとれない人気店に。2013年には名古屋店もオープン。雑誌やテレビ、全国のイベントなど多方面で幅広く活躍し、和食の魅力を伝えている。プロのコツを楽しく解説するYouTube『笠原将弘の料理のほそ道』(チャンネル登録者は121万人/2025年12月現在)や家庭で作りやすいレシピが満載の著書も大好評。著書の『笠原将弘のまた食べたくなるおそうざい』(マガジンハウス)が話題。ビールとサウナ、家族をこよなく愛している。
HP:賛否両論
YouTube:笠原将弘の料理のほそ道
Instagram:@sanpiryoron_official
撮影/竹内章雄

【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。 趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

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このニュースに関するつぶやき

  • そらそうだろ。レシピでなく料理人は親方(花板かシェフ)の鍋の底を舐めて研究。店によって出汁かソースは違う
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