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人気の列車や日頃はなかなか見られない珍しい車両を一目見て記録に残そうとする、いわゆる「撮り鉄」による迷惑行為が目立つようになっている。特に、近年では一眼レフのような大型の機材を持ち運ばずに、スマートフォンのカメラで高画質に撮影し、それをSNSや動画サイトにすぐにアップロードできる時代になったからなのか、「スマホ撮影」からトラブルにつながる行為を見る機会が増えた。
●駅のホーム・構内での撮影行為の現状
SNSやネット上には、駅構内における撮影行為について多数の意見が寄せられている。例えば「ホームドアが設置されると撮影しにくくなる気持ちは分かりますが、だからといって柵から身を乗り出してまで撮影する必要はないのではないでしょうか」といった声や、「地下鉄の貴重な車両を撮影したいという強い情熱は理解できます。しかし、柵から身を乗り出して列車と接触しそうになるほど接近したり、駅員の注意を無視して撮影を続けたりするのは、非常に危険であり疑問を感じます」といった指摘がある。
また、「昨日、電車が遅れている状況で、スマートフォンを持ったお子様が隣のホームを歩き回り、点字ブロック(黄色い線)の外側に出て次々と電車を撮影していました。その後、自分のいるホームにも現れ同様の行動をしていましたが、混雑時には非常に迷惑ですし、何より危険でした」といった具体的な体験談もネット上に上がっている。
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さらに「安全面や迷惑行為の観点から、駅のホーム内ではスマートフォンを含むすべてのカメラ類の使用を禁止にするべきではないでしょうか」と、規制の必要性を訴える意見もある。「歩きスマホも危険ですが、撮り鉄の方々も同様に周囲への注意が必要です」という指摘もあり、撮影行為に伴う注意義務の重要性を強調している。「撮り鉄のマナー違反」というとスマートフォンでの撮影者が批判されがちだが、線路への立ち入りなどは、むしろ一眼レフカメラを持つ層にも見受けられると指摘されており、「機材の違いとマナーの善しあしを結び付けるべきではありません。撮影スポットで場所を占領するのは困りますが、真面目に撮影する分には機材は関係ないはずです」といった意見も目立つ。
スマートフォンでの撮影は手軽に撮れる反面、撮影に意識が集中しすぎて周囲への注意が散漫になりがちで、その結果、鉄道撮影においても事故やトラブルにつながるケースが多々あるとされる。実際に「ホームドアがあっても身を乗り出す人はいますが、設置されていないホームはさらに危険です。柵がない分、ホームから身を傾けて撮影する人がいました。他の方が危険だと注意したところ、その撮影者が逆上し、結果として非常停止ボタンが押され、列車が遅延するという最悪の事態になりました」との事例も報告されている。トラブルによって非常停止ボタンが扱われた際には、駅構内にはブザー音が鳴り響き、「ただ今、列車非常停止ボタンが扱われております。そのため運転を見合わせている電車がございます」というアナウンスが流れ、多くの利用客に迷惑がかかる結果となった。
●沿線・踏切周辺における危険行為
駅から離れた場所での撮影行為も危険が指摘されている。例えば「駅から離れた場所を車で通りがかった際、線路近くの不安定なブロック塀の上に乗り、柵を越えて撮影している方を見かけました。線路側に転落したら非常に危険です。柵の内側から撮影しても、写真はそれほど変わらないように思います」との意見がある。小学校低学年くらいの男の子2人が踏切の外側でスマートフォンを使って電車を撮影している光景はほほ笑ましいが、「遮断機が上がった直後に車の前を走って横断するのは大変危険ですので、控えていただきたい」と注意を促す意見も上がっている。
また、車で踏切を通過した際に線路内に侵入して撮影する人もおり、「常識的に考えて非常に危険な行為であり、まだそのような行動をする人がいることに驚きました」と述べられている。遮断機が降りているにもかかわらず平気な顔で撮影しようとする人もおり、ネット上には「そうした想像力が欠如した行動が目立つという意見はネット上に多く上がっている」という声も見受けられる。
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●何をすると鉄道営業法に違反する可能性があるのか?
列車の撮影目的であっても、停車場や線路内に無断で立ち入った場合には、鉄道営業法に違反する可能性がある(鉄道営業法第37条)。駅係員や乗務員の制止を無視して線路に立ち入り、列車の運行に遅延や運休を生じさせた場合も違反の可能性がある。国土交通省もWebサイトで「法的に認められていない線路横断箇所に立入ることは、列車との衝突の恐れがあり、いかなる理由であったとしても踏切道以外で線路を横断する行為は危険です。また、当該立入りは鉄道営業法第37条の違反となる可能性があります」と明示している。
●JR東日本が注意喚起──やってはいけないこと7選はコレだ
ネット上に上がっている危険行為の報告は、鉄道会社としても認識しており、実際にイラスト付きの注意喚起文の公開にまで至っている。JR東日本では、次のような内容をWebサイトで紹介している。
今般、駅のホームにおいて無断で他のお客さまを撮影し周囲のお客さまにご迷惑をかける行為や、沿線での撮影において線路内に立ち入り列車が非常停車するなど、当社施設内等での撮影においてさまざまな事象が発生しております。
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これらは大変危険を伴う行為であり、周囲のお客さまや沿線の方々のご迷惑となるほか、列車の運行や係員の安全確保など業務の妨げになる場合もございます。また、線路内や立ち入り禁止区域など、鉄道用地に正当な理由なく立ち入る行為は、鉄道営業法等の定めにより違反すると罰則が科されます。
みなさまの安全確保のためにも、下記の行為はおやめいただきますようお願い申し上げます。
1.線路内や立ち入り禁止区域など、鉄道用地に正当な理由なく立ち入る行為
2.当社施設内および列車内において、無断で他のお客さまや係員を撮影・録音する行為
3.ホーム柵やホームドア、ホーム上の点字ブロックから外側に乗り出して撮影する行為
4.点字ブロックでの立ち止まりや荷物を置いて撮影する行為
5.ホーム上で三脚や脚立・踏み台等を使用して撮影する行為
6.フラッシュや照明を使用して運行中の列車を撮影する行為
7.撮影の際に、大きな声を出して騒ぐような行為
上記のほか、安全確保のため、係員が撮影についての制限や注意をする場合がございますので、係員の指示に従っていただくようお願いいたします。
また、特に悪質と判断される際には、撮影・録音行為を中止いただき、法的措置をとらせていただく場合もございます。
「どうせ電車は来ないだろう」といった油断は重大事項に直結しかねない。JR東日本の注意喚起は、単なる迷惑行為の列挙にとどまらず、実際に何をすればどうなるのかを示すことで、利用者に危険認識を促す効果を持っている。
●たとえ趣味の範囲であっても……危ない 鉄道撮影文化の現実と課題
鉄道撮影文化は、鉄道会社も利用者も認識しうる活動として長い歴史を持っていることに加え、鉄道ファンの存在を象徴する行為ともいえる。しかし、SNSやネット上の意見から分かるように、撮影行為が安全面や他者への迷惑に直結する場合も多い。
ホームや構内での身を乗り出した撮影、踏切外での線路横断などは、たとえ趣味の範囲であっても周囲の安全を損なうリスクが高く、注意喚起や規制が必要だと指摘されている。鉄道ファンの活動自体を完全否定することではないが、迷惑行為についてネット上への書き込みが目立っている。実際に注意だけでは済まされない事例もあることから、良識のある行動が求められている。
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