
中国軍機が自衛隊機にレーダー照射した問題は、日本と中国とが国際社会にそれぞれの正当性を訴える外交戦に発展しました。中国軍機が行ったレーダー照射、具体的にはどのような危険性があるのでしょうか。
【画像で見る】中国国営系メディアが公開“中国軍と自衛隊のやりとり”とされる音声
日本と中国、双方が国際社会へアピール7日、オーストラリアのマールズ国防相とジョギングする小泉防衛大臣。中国のレーダー照射に関し、連携を強化することを確認しました。10日にはイタリアの国防相やNATO事務総長とオンライン会談、12日にはアメリカのヘグセス国防長官と電話会談するなど、国際社会へのアピールを続けています。
一方、中国もドイツとの外相会談で、「ドイツとは異なり、日本は戦後80年経っても侵略の歴史をまだ十分反省していない」と日本批判を展開しています。
日本と中国双方が外交攻勢をかけているレーダー照射問題。
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6日、中国の空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通過し、遼寧から戦闘機などを発着艦させる訓練を実施。これに自衛隊機がスクランブル=緊急発進で対応すると、中国側が日本の自衛隊機に断続的にレーダー照射をしました。
さらにその後、別の自衛隊機にも30分以上、断続的にレーダー照射を行ったのです。
小泉進次郎 防衛大臣(7日)
「このような事案が発生したことは極めて遺憾。中国側には強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れました」
「危険な行為だ」と抗議した日本に対し、中国は「日本の戦闘機は中国側の正当な軍事活動をたびたび妨害している」と反論。
中国国営系メディアが公開した“証拠”とはさらに9日には、中国国営系メディアが「最近日本側が煽り立てている、いわゆる『レーダー照射問題』。一体真相はどうなのか証拠をお見せします」とSNSに投稿。
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レーダー照射の数時間前に、中国側と海上自衛隊の護衛艦との間で行われた、無線のやりとりとされる音声を“証拠”として公開したのです。
中国軍とされる音声(中国国営系メディアのSNSより)
「中国海軍101艦だ。我々の艦隊は計画に沿って艦載機の飛行訓練を実施する」
自衛隊とされる音声(中国国営系メディアのSNSより)
「中国軍101艦へ。こちらは日本の116艦。メッセージを受け取った」
中国側は、小泉大臣が訓練について「事前の通報は確認していない」と述べていた点に反論。その後、小泉大臣は中国側から飛行訓練を開始する旨の連絡はあったとした上で…
小泉進次郎 防衛大臣(10日)
「どのような規模で、どのような空域において、訓練を行うのかという具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、危険の回避のために十分な情報がなかった」
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あくまで問題の本質は中国側が約30分にわたって断続的にレーダー照射を行ったことだ、といいます。
中国側「威圧」を狙い照射した可能性も「訓練は事前に知らせた」という中国と、「断続的なレーダー照射自体が問題」だとする日本。論点はかみ合わないままです。
航空自衛隊で戦闘機のパイロットなどを務めた武藤茂樹・元空将は、中国機と自衛隊機の距離から照射の必要があったのか疑問を呈します。
武藤茂樹・元空将
「報道によれば1回目は約50km、2回目は約150kmくらいの距離で(照射が)行われたと。この距離は、戦闘機が近づいているとはいえ、目で見えていて急速に近づいてこなければもっと距離が近くなっても危険ではない」
さらに、戦闘機に近づく時でも、レーダーは使わないといいます。
武藤茂樹・元空将
「自衛隊は電波を、こういう形で断続的に照射はしませんし、戦闘機のレーダーを使っては近づかない。地上のレーダーサイトの目標情報、指示に基づいて近づいていく。(戦闘機のレーダーを使うと)緊迫度を上げるし、安全に近づくためには、使わないで近づくのが原則」
その上で、武藤さんは、照射の危険性と中国側の意図について、こう指摘します。
武藤茂樹・元空将
「今の新しいレーダーは、捜索もしながら追尾できるという能力を持っている。そういうレーダーの断続的な照射が、30分にわたって行われたのは非常に危険な行為。攻撃される可能性を含んでいる。鉄砲で言えば、引き金に指をかけているような状況の可能性。相手の意図は断定できないが、威圧するような行為だった可能性も」
中国軍機がレーダー照射を行った狙いはどこにあったのでしょうか。

