
ノーベル賞の授賞式は厳かな雰囲気の中で行われ、偉業を成し遂げた受賞者の方々が祝福されましたが、平和賞は受賞者が式典に間に合わず、半日遅れで登場するという異例の事態になりました。その訳とは。
ノーベル賞日本人W受賞 次世代の研究者への思いストックホルムのコンサートホールで開かれた授賞式。受賞者やその家族ら約1500人が参加しました。
スウェーデン国王からメダルと賞状を受け取ったのは化学賞の京都大学・北川進 特別教授。そして生理学・医学賞の大阪大学・坂口志文 特別栄誉教授。日本人2人の同時受賞は10年ぶりの快挙です。
その後2人はストックホルム市庁舎で晩餐会に出席しました。
一夜明け、会見で、2人が口にしたのは、次世代の研究者への思いでした。
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「化学賞」受賞 北川進 京都大学特別教授
「今やっている人たちが本当にノーベル賞候補になりうるかと。そのためにはやはり息の長い支援(が必要)」
「生理学・医学賞」受賞 坂口志文 大阪大学特別栄誉教授
「親方日の丸で自動的に政府が(資金を)出してくれるのが当たり前と思うんじゃなくて、自分の仕事をアピールして研究資金を得ていく、そういうポジティブな態度もやはり必要」
一方、同じノーベル賞でも、ノルウェー・オスロで授賞式が行われた「平和賞」は異例ずくめとなりました。
授賞式へ命がけの“脱出劇” かつらで変装も受賞者のベネズエラの野党指導者。マリア・コリナ・マチャド氏(58)が式に間に合わず、半日遅れで姿を見せました。実はベネズエラから命がけで脱出してきたのです。
「平和賞」受賞 マリア・コリナ・マチャド氏(11日・ノルウェー・オスロ)
「命をかけて協力してくれたみなさんのおかげで、きょう私はここに来ることができました。いつか話せる日が来ると思いますが、今は、彼らを危険にさらしたくありません」
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マチャド氏は、マドゥロ大統領など、独裁的な政権と20年以上闘ってきました。民主化への努力が今回の受賞理由です。マドゥロ政権にとっては“仇敵”。海外渡航禁止令が出ていた中、どのようにして脱出したのでしょうか。
「平和賞」受賞 マチャド氏(11日・ノルウェー・オスロ)
「アメリカ政府から支援がありました」
マチャド氏の脱出には、トランプ大統領の手助けがあったというのです。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると潜伏先の首都・カラカス郊外から、かつらで変装し、支援者2人とともに10か所の軍検問所を突破。夜明け前に木造の小型船で出航し、オランダ領のキュラソー島に向かいました。その移動中、アメリカ軍のF18戦闘機がベネズエラ湾上空へ侵入し40分間にわたって旋回したとも報じられています。
マチャド氏は無事にベネズエラを脱出。その後、ノーベル委員会と次のようなやりとりがありました。
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【マチャド氏とノーベル委員会との電話】
――マリア・コリナさん?
「はい、私です」
――あなたが無事でとてもうれしい
「私もです。すごく残念で申し訳ないのですが、式典に間に合いません。でも今オスロに向かっています」
キュラソー島からトランプ政権が用意したビジネスジェットでアメリカを経由し、2日がかりで、オスロへ到着しました。
「平和賞」受賞 マチャド氏
「私たちは最後まで戦う決意があります。ベネズエラは自由になります。必ず実現させます。自由なくして民主主義はあり得ません」
しかし、マチャド氏の受賞に対し批判の声も。背景にあるのはトランプ氏の影です。
デモ参加者
「今年の受賞者は、カリブ海における(軍事)介入や攻撃に反対していない。これは明らかにアルフレッド・ノーベルの遺志に反します」
麻薬撲滅作戦でアメリカ軍は80人以上を殺害したと報じられていて、トランプ氏は「地上戦を開始する」とも公言。10日には、アメリカ軍がベネズエラ沖で石油タンカーを拿捕し、その映像を公開するなど、圧力をさらに強めています。
こうしたトランプ政権に対し、マチャド氏は…
「平和賞」受賞 マチャド氏(11日・ノルウェー・オスロ)
「トランプ氏の行動によって、かつてないほど(マドゥロ)政権は決定的に弱体化しています」
受賞が決まった10月には、SNSに「この賞を、私たちの大義を支持してくれたトランプ大統領に捧げます」と投稿していました。トランプ氏を支持するマチャド氏の「平和賞」受賞。波紋が広がっています。

