
【写真】立花日菜&大西沙織、可愛さあふれる撮りおろし
■『器用貧乏』という言葉が突きつけるもの
――『器用貧乏』というワードが強く印象に残る作品ですが、最初に物語に触れた際の感想は?
立花:最初に原作を読んだのはオーディションの時でした。オルンはソフィアから見ると、何でもそつなくこなす“大人な男性”という印象で。ソフィアがどんなにかわいく振舞っていても、まったくなびかないところが逆に素敵だなと思って、自然とソフィア目線で物語を追っていました。
全体としては、オルンもソフィアもセルマも、一見完璧に見えながら欠点やギャップがあって、だからこそすごく親しみやすいキャラクターたちだなと感じました。
大西:私は『器用貧乏』という言葉が、とにかく自分に刺さりました。声優の仕事も“自分なりの武器”を持つ人が強い世界なので、それを見つけるまで、まさにこの言葉に悩まされてきた人生だったなと思います。この四文字を見るだけで、今でも少し考えてしまいますね。
オルンが『器用貧乏』を理由に追い出される展開も、すごく現実的で胸が痛くて、どうしても自分と重ねて読んでしまいました。
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私は一点特化型で、ハマる役は強いけど、ハマらないと苦労することも多い。だからこそ、器用貧乏という言葉にどちらかというとポジティブな印象があって、正直、羨ましいなとも思っていました。
大西:本当に真逆だね(笑)。
――そんな『器用貧乏』な主人公・オルンが活躍する本作ですが、彼の魅力をどんなところに感じますか?
立花:オルンは、とにかく冷静で、物事をとてもフラットに見ている人だなという印象があります。実力があって強いのに、それに驕らないところがすごく素敵で。物語の中でソフィアたちに戦い方を教えてくれる場面を見ていても、「この人はちゃんと一歩一歩、努力を積み重ねてきた人なんだな」というのが自然と伝わってきます。
一見どっしりしていて感情を表に出さないタイプに見えるけれど、実は意外と根に持つところがあったり、パーティを追い出されたことをきちんと心の傷として抱えているところもあって。そうした“完璧すぎない人間らしさ”も含めて、オルンの大きな魅力なんじゃないかなと思います。
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剣士として自分が戦うだけなら、ある意味、誰でも目指せる強さかもしれませんが、オルンは自分も戦いながら、周囲の状況を見て支援魔術をかけることができる。その視野の広さが大きな強みだと思います。だからこそ、パーティを追い出されたあとも多くの場所で必要とされるのだろうなと納得できますし、年齢以上にとても落ち着いた人物だなと感じます。
■ソフィアとセルマ、正反対な姉妹の尊さ
――お二人が演じるソフィアとセルマはどのようなキャラクターですか?
立花:ソフィアは、見た目の通り“守ってあげたくなる”かわいいヒロインで、演じるうえでは「可愛く、可憐に、愛される存在であること」を何より大切にしていました。オルンに対しては、憧れに少しだけ恋心が混じったような感情や、「一人の魔術士として認めてほしい」という想いを、繊細に込めることを意識しています。
また、お姉ちゃんであるセルマとの関係性もすごく大切で、暴走した時にたしなめたり、落ち込んでいる時に励ましたりと、年頃の妹らしい距離感を意識して演じました。もともと自信のない子ですが、物語が進むにつれて少しずつ強さや自信がにじんでいく。その成長も感じてもらえたらうれしいです。
大西:セルマは《夜天の銀兎》というクランに所属するSランクパーティのリーダーで、大陸最高の付与術士という、本当にすごい女性なんです。
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――姉妹それぞれから見て、「このシーン、うちの姉(妹)可愛すぎない?」と思った瞬間は?
立花:1話で、オルンがソフィアに対して「下心はない」と言ったのを受けて、セルマが「うちの妹が可愛くないってことか!」と怒るシーンがすごく好きです。それに対してオルンが「めんどくさいな、この人……」みたいな反応をする流れも含めて(笑)。
ソフィアがそばにいると、セルマは“女性”というより、“妹を守るお姉ちゃん”としての顔がすごく強くなるんですよね。少し暴走気味なところも、ソフィアからすると「可愛いな」と思って見ているんじゃないかなと。普段はしっかり者で尊敬している分、感情に弱かったり、妹のことになるとブレーキがかからなくなる姿が、ソフィアにはとても愛おしく映っていると思います。
大西:姉目線からすると、ソフィアは本当に“いつだって可愛い”です(笑)。1話の冒頭でオークに追い詰められてしまう場面では、その場にセルマはいないんですけど、アフレコをしながらずっと「お姉ちゃんはここにいるよ……!」という気持ちで見守っていました。
それから、オルンと二人で話している時のソフィアって、セルマには見せない表情や空気感があるんですよね。それが少し悔しくもありつつ、「ああ、ちゃんと一人の女の子なんだな」と感じられて、ますます愛おしく思いました。
■石見舞菜香が吹き込むキャロラインの魅力
――若手実力派キャストが揃う本作ですが、特にお芝居が印象的だったキャラクターは?
大西:石見舞菜香さんが演じるキャロラインは、個人的に一番“意外性”を感じたキャスティングでした。石見さんは繊細なお芝居の印象が強かったので、破天荒で猪突猛進なキャロラインを、どう表現されるんだろうと気になっていたんです。
でも、いざアフレコが始まると、最初からもう“バチッと”キャロラインにハマっていて。「これは制作陣のキャスティングの慧眼だな」と感じました。
立花:実は私、テープオーディションでキャロライン役も受けていたんです。だからこそ、「ああ、こうなるんだ……!」という“正解”を、目の前で見せてもらっているような感覚がありました。
キャロラインは、元気で破天荒で、ちょっとネジが飛んでいるような女の子ですが、実はとても重たいものを抱えた、繊細な一面もあるキャラクターで。その二面性が、石見さんの持つ表現の幅とすごく噛み合っていて、キャロラインの魅力がさらに引き出されていると感じました。
危なっかしさと無邪気さ、そして「守ってあげたくなる」可愛らしさが同時に存在していて、本当に素敵なキャラクターになっていると思います。
――本編での登場が楽しみです。また、本作のオープニングテーマ「シルベ」をホロライブ所属のVTuber・常闇トワさんが担当されていますが、楽曲を聴いた感想は?
立花:もう、本当にめちゃくちゃかっこいいです。まさに「これぞオープニング!」という一曲で、戦いのシーンにもすごく映えますし、何より疾走感が気持ちよくて、思わず口ずさみたくなる楽曲だなと思いました。自然とみんなで歌いたくなるような勢いと熱があって、作品の世界観にもぴったりだと感じています。
大西:実は常闇トワさんの歌声をフルでしっかりと聴いたのは、この作品が初めてで。第一印象は「とても芯のある、落ち着いた声だな」と感じました。その落ち着いた強さが、オルンのキャラクター性ともどこか重なるように思えて。
作品の空気にすっと溶け込みながら、物語の指針として背中を押してくれる。まさにタイトル通りの「シルベ」になっている、とても印象的なロックチューンだと思います。
■努力と評価に向き合う声優としてのリアルな想い
――作中では、積み重ねた努力がやがて報われていきますが、お二人ご自身は、お仕事の中で「頑張りが評価されない」と感じた時、どのように気持ちを保ち、乗り越えてこられましたか?
大西:声優の仕事は、自分で自分を評価できる場面がほとんどなく、常に誰かに評価され続ける世界だと思っています。だからこそ、周囲が思う自分と、自分自身が思い描く姿との間にズレを感じて、悩むこともありました。
私の場合は、すぐに結論を出そうとするのではなく、時間をかけて向き合っていくタイプです。長く続ける中で、信頼できるスタッフさんや共演者の方が少しずつ増え、その中で「ここはやりやすいな」「次はこうしてみよう」と調整しながら進んできました。年単位の積み重ねの中で、少しずつ自分なりの答えに辿り着いてきた感覚があります。
立花:私は、歌やダンスのあるステージのお仕事が多くて、準備期間は振り付けや立ち位置を覚えて、歌詞や表現を詰めて……本番まではあっという間ですが、そこに至るまでには本当にたくさんの時間と努力があって。
でも、観ている方からすると、歌って踊っている姿は「できて当たり前」に見えてしまうこともありますよね。だからこそ私は、まず自分自身の頑張りをきちんと認めてあげるようにしています。そして、必死に取り組んでいるキャストさんたちには、もっと光が当たってほしいと、心から思っています。
――最後に、視聴者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
立花:本作は、長い時間をかけて大切に作り上げてきた作品です。放送を迎えるのが今からとても楽しみですし、ソフィアの成長や、オルンとの関係性の変化を、ぜひ皆さんと一緒に見守っていけたらうれしいなと思っています。
大西:『器用貧乏』と言われ、勇者パーティを追われてしまったオルンが、この先どんな道を歩んでいくのか……そこは大きな見どころのひとつです。そして個人的には、セルマとソフィア、この姉妹の関係性もとても魅力的だと感じています。可愛らしさと尊さの詰まった二人のやり取りにも、ぜひご注目ください!
(取材・文・写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『勇者パーティを追い出された器用貧乏』は、TOKYO MXほかにて、1月4日より毎週日曜22時30分から放送。

