「在庫ゼロ」の爆売れは偶然か必然か ワークマン「リカバリーウエア」ヒットの正体

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2025年12月28日 07:10  ITmedia ビジネスオンライン

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「メディヒール」売り場での陳列イメージ(出所:プレスリリース、以下同)

 「リカバリーウエア」人気が高まりを見せている。


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 ワークマン(東京都台東区)が、9月1日に全国で販売を開始したリカバリーウエア「MEDiHEAL」(メディヒール)は、初回生産分の211万着がわずか16日間で完売。店頭から商品は消え、“在庫ゼロ”の状態が続いた。これに対し、同社は12月下旬から在庫を復活させ、さらなる売上拡大に向けて動き出している。


 なぜ、メディヒールはこれほどまでに売れたのか。そして、この2026年もこの流れは続くのか――、ワークマン広報部の小雀杏実氏に聞いた。


●大ヒットの背景には“タイパ志向”──どういうことか?


 同社では、流行の背景には「タイムパフォーマンスの高さ」への需要の高まりがあると分析している。


 コロナ禍で人々の健康志向が高まり「疲労回復=自分を高めるもの」へと意識が変化してきた。また、デジタルコンテンツの発達により、“疲れ”を可視化できるようになっている。


 「しかし、仕事や家事などに追われる中、新しく疲労を回復するための時間を作るのは簡単ではありません。そこで『着るだけで疲労回復』という、元の生活に取り入れやすく、新たな時間を必要としないリカバリーウエアに注目が集まっていると考えます」(小雀氏)


 同社がこの市場に参入したのは2021年。当時は「着るエナジードリンク」をコンセプトに、現場で働く職人向けに体の動きをサポートするウエアとして販売していた。


 その後、作業服を扱わない「#ワークマン女子」「Workman Colors」といった業態拡大に伴って顧客が多様化。それに合わせて幅広い層が着用できるようにと、ルームウエアへと展開を広げていった。


 他社のリカバリーウエアと比較した際のメディヒールの大きな特徴が価格帯だ。1万〜2万円の商品が主流な中、メディヒールは上下セットで3800円と、低価格を実現している。


 「メディヒールは一人でも多くの人の回復に貢献したいという思いから生まれたブランド。そのため、『価格設定』を起点に製品を開発しています」


 低価格での販売を実現できている主な理由は、全国1086店舗で販売するため大量生産が可能であること。また他社のアパレルと異なる「工場閑散期」に集中生産することでコストを抑えている。


●一過性で終わらせない 「リカバリー初心者」も「リピーター」も支持


 このヒットを2026年も拡大すべく、ワークマンは生産体制の見直しに踏み切った。


 従来は、発注から生産までに時間を要する東南アジアを主な生産拠点としていたが、短納期で大量生産が可能な中国へと移行。生産体制を再構築した。


 この体制変更により12月下旬からメディヒールの在庫を復活。年間で2000万着以上の生産能力を確保し、リカバリーウエアのさらなる大衆化を目指している。


 メディヒールの購入層は幅広く、特に30〜50代がボリューム層だという。


 「発売前は、当社の既存ユーザーの多くを占める男性の高齢層を想定客層と考えていた。しかし、実際には女性や若年層の購入も多く、男女比は半々程度。低価格帯であることから、子育て世代の購入も多いです」と小雀氏。


 こうした実績を踏まえ、2026年1月下旬からは、「#ワークマン女子店」「Workman Colors」に設置するメディヒールの常設売り場にて、各店平均2000着以上の店頭在庫を持つ予定だ。


 小雀氏によるとメディヒールは、作業服・作業用具を購入していた既存ユーザーに加えて、リカバリーウエアを試してみたいという“リカバリーウエア初心者層”の購入も多いという。


 さらに、「過去にリカバリーウエアを購入したことがあるが洗い替え用もほしい」「以前はプレゼントとしてリカバリーウエアを買ったが、自分用も購入したい」といったニーズもあり、初めて同社店舗を訪れる新規ユーザーも多く見られた。


 「リピーターも非常に多いです。12月の在庫復活は、すでにメディヒールを体感したことのあるユーザーに、春夏製品を先行確保してもらうことを目的とした入荷です」(小雀氏)



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