
<猛虎リポート>
史上最速リーグ優勝を決めた阪神の今季の戦いで、伝えきれなかった投手陣の舞台裏を「猛虎リポート」で随時掲載します。第3回は才木浩人投手(27)です。史上最速でセ・リーグ優勝を果たした9月7日の広島戦(甲子園)では先発するも頭部死球で危険球退場。優勝決定直後は歓喜の輪に加わる直前、相手ベンチに丁寧に頭を下げる姿がありました。「笑顔なき胴上げ」の裏には、今季貫いてきた姿勢に通ずるものがありました。【波部俊之介】
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9月7日広島戦。史上最速の優勝を果たし、マウンド上にはすぐに歓喜の輪ができ上がった。ベンチから勢いよく駆け出すナイン。その中で才木はただ1人相手ベンチへ向かい、丁寧に頭を下げていた。
「相手にも失礼かなと思った。普通に。当てておいて、何も気にしませんみたいな態度をあからさまに出すのはリスペクトがない。相手にリスペクトがないのが一番良くないから」
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2年前のリーグ優勝時に引き続き任された、勝てば優勝の先発マウンド。無失点投球を続けた中で1点リードの5回だった。先頭石原への抜けた初球ストレートは頭部に直撃。危険球退場となった。23年7月を最後に、ここ2年は死球ゼロだった右腕。大一番の舞台で、自身初となる危険球退場となった。
「久々の死球で頭に当ててしまって…。しかも、あの試合で。今じゃないし、当ててしまう箇所もそこじゃない。タイミングも5回の先頭で」
退場後はベンチ裏に引き上げ、トレーナー室で試合を見ていた。「感情がよく分からなかった」と心境を振り返る。当初はベンチ裏での謝罪も考えていたが、広島サイドから「全然大丈夫」と返答があったという。自身の立場や責任、申し訳なさ、相手へのリスペクト。あらゆる状況を整理して出した答えが、試合終了直後の直接謝罪だった。
「さすがにバカ騒ぎはできない。グラウンドでやるのも正直いやらしいなと思ったんですけど。周りに見えているところで、わざとらしいというか。けど、何もしないのは自分も気持ち悪い。やらないと自分の気も済まないというか」
村上とともにチームをけん引してきた今季。たびたび口にしてきたのが、周囲からの見られ方だった。昨季はチームトップの13勝を挙げ、昨年11月のプレミア12では侍ジャパンにも選出。チーム内外から憧れのまなざしを向けられることも増えた。より立場や振る舞いを意識して臨んだ25年。苦い1日となった中、優勝決定日の「笑顔なき胴上げ」には今季の姿勢や立場が凝縮されていた。
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ハワイへの優勝旅行も参加を辞退し、練習に打ち込む今オフ。最も目指してきた最優秀防御率の初タイトルを獲得し、来季はプロ10年目のシーズンとなる。26日の契約更改の場でも、決意を語っていた。
「10年目でチームがやっていない連覇を成し遂げたい。自分たちがチームの中心となってやっていけたらそれも可能かなと思う」
“エースの自覚”を胸に、来季も虎の先発ローテをけん引する。
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