帰省で“老親が不機嫌”になる理由! 親のプライドを守る話し合いの進め方

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2025年12月29日 08:10  マイナビニュース

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久しぶりの帰省で、なぜか親が不機嫌だった──そんな経験はないでしょうか。



帰省は、親の老いに直面する機会です。家が片付いていない、外出や人付き合いが減り家にこもりがち、買い物や料理が負担になっている。そうした変化が目に入ることもあるでしょう。けれど心配だからといって、あれもこれも指摘すると、親は「自分はまだ大丈夫」と身構えて、話を避けてしまうことがあります。帰省は親をチェックする場ではなく、久しぶりに顔を合わせて近況を共有する機会です。今回は、親のプライドを守りながら、リスクに気づき、将来に備えるためのコミュニケーションについて解説します。


○質問ではなく、家の様子を観察する



親は子どもに心配をかけまいと、本音を隠して「大丈夫。何も困ったことはないよ」と言いがちです。そして、言葉で問いただすほど親は「チェックされている」と感じて身構え、本音を隠したり、会話が止まってしまうこともあります。そこで、会話で現状を探る前に、暮らしの様子から手がかりを拾います。



以下は一例です。



【冷蔵庫】

●期限切れが増えていないか

●同じ食材が重なっていないか



これらのことが見受けられる場合、買い物や管理が負担になっている可能性もあります



【薬の管理】

●飲み残しの薬が溜まっていないか

●同じ薬の袋が複数見当たらないか



これらのことが見受けられる場合、服薬管理が難しくなっている可能性もあります



【車】

●車体のこすり傷が増えていないか



こすり傷が増えている場合、距離感覚や注意力に変化がある可能性があります



大切なのは、どれか一つの変化だけで「認知症かもしれない」「もう一人暮らしは無理だ」と結論を急がないことです。「以前より増えているか」「複数の変化が重なっているか」を見て、気づきはその場で指摘せず、事実のみをメモに残します。落ち着いたタイミングで、見守りの方法や受診・相談など次の手立てを検討するための材料にしましょう。

○片付けるときは親の決定権を奪わない

「実家がモノであふれている」と、帰省のたびに感じる方は少なくありません。片付けようと思っても、親のペースや価値観があり、思うように進まず悩ましいテーマです。



LIFULL 介護が8月に実施した調査では、親世代の約6割が『子供に家の片付けや生前整理を手伝ってほしくない』と回答し、理由の最多は「自分で判断したいから」でした。親にとって家財は、自分の歴史そのものです。勝手に処分されると、「自分を否定された」と感じやすくなります。「使わないなら捨てよう」と迫るより、「重いものは動かすよ」「高い所は危ないから、そこだけやるね」と、判断ではなく作業を手伝う形のほうが受け入れられやすいです。親も本当は片付けたいのに、体力や気力が続かず進まないことがあります。あらかじめ帰省前に「滞在中に手伝ってほしいことがあれば言ってね」と一言伝えておくと、当日がスムーズです。

○立て続けの質問で親を追い詰めない



久しぶりに会うと、限られた時間で状況を把握したい気持ちから、「薬は飲んだ?」「通帳や保険証はどこ?」と立て続けに確認したくなります。けれど、それが続くと会話というより「取り調べ」のようになり、親は身構えて話さなくなるでしょう。まずは雑談から入り、相手の話を最後まで聞く。質問は一度に1つに絞り、答えを受け止めてから次に進みましょう。まずは親の話に耳を傾ける姿勢が大切です。

○話しづらいテーマは、ニュースや知人の話を入口に



いきなり「介護が必要になったらどうするの?」「施設に入る?」「お金は?」と、将来の話を切り出すと、話題が重くなりがちです。そこで、「芸能人の○○さんが施設に入ったニュース見た? 楽しそうに生活しているみたい」「同僚の親が急に入院して、医療費の建て替えとか大変だったらしいよ。保険証や通帳の場所などを分かるようにしておいてほしいな」といった第三者の話題(世間話)を入り口にするのも一案です。



そして、「お母さんはどんな風に考えているの?」と感想を聞く形をとることで、親は自分事として防衛することなく、客観的な意見やもしもの時の希望を話しやすくなります。

9月に公開したLIFULL 介護の調査(親と「親が認知症になった場合」について話したことがない人が7割/認知症の不安に関する調査より)では、親が認知症になった場合について7割の人が「話し合ったことがない」と回答しています。第三者の話題は、こうした話しにくいテーマを切り出す有効なツールになるでしょう。

○認知症のサインを否定しない



同じ話を繰り返したり、話のつじつまが合わなかったりするのは、認知症の初期症状の可能性があります(ただし、体調不良や疲れ、聞こえにくさなどでも起こり得るため、決めつけは禁物)。しかし、ここで「さっきも聞いたよ」「それは違う」と指摘・訂正すると、親は「自分がおかしい」と否定されたように感じ、不安や絶望感、怒りにつながりやすくなります。まずは否定せず、「そうなんだね」「それは大変だったね」と、できるだけ感情に寄り添って受け流すことが重要です。安心感が保たれると、結果的に不安や混乱が強まりにくくなることもあります。



そして、こうした様子に気づいたら、早めに実家最寄りの「地域包括支援センター」へ相談しましょう。地域包括支援センターは公的な相談窓口で、本人と家族の状況を整理し、必要に応じて介護保険サービスや医療機関など、適切な支援先につなぐ手助けをしてくれます。

○一度の帰省で結論を急がない



限られた時間の中で、確認したいことはたくさんあるはずです。けれど滞在中に、介護のことや財産管理、将来的な家の処分や相続まで、結論を出そうと焦る必要はありません。帰省は、まず今の暮らしぶりを確かめ、気になることがあれば次の連絡や相談につなげる時間です。今回の帰省では、困りごとを一つでも聞き出せたら十分。具体的な解決策は持ち帰って検討しましょう。帰り際には「心配だから定期的に電話するね」と次の連絡を約束し、「何かあったらすぐに連絡してね」と伝えておく。これだけでも親には安心が残ります。


帰省で大切なのは、親を正すことでも、生活を管理することでもありません。親の自尊心を守りながら、暮らしの様子から「変化のサイン」に気づき、次の一手につなげることです。まずは「気にかけている」という姿勢を、言葉と行動でそっと示すところから始めてみてください。



小菅秀樹 「LIFULL 介護」編集長 神奈川県横浜市生まれ。老人ホーム・介護施設紹介業の主任相談員として、1,500組以上の入居をサポート。入居相談コールセンターのマネジメント、コンテンツマーケティングを経て、2019年より現職。各メディアでは介護や高齢期の諸問題について解説や監修を担当、一般向け/企業向け介護セミナーにも登壇するほか、SNSやYouTube等でも介護や老人ホームに関する情報発信を行っている。
▶「LIFULL介護」へ この著者の記事一覧はこちら(小菅秀樹)

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  • 財産の話は母親からするよ?それが普通だと思ってた(;^_^A祖父母の家では仏壇の前に貰い物が沢山・・。動物の剝製が沢山・・あったなあ
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