「LINEマンガ 2025 年間ランキング(連載)」5位にランクインした『ナノ魔神』 (C)GGBG・Great H・HANJUNG WOLYA・REDICE STUDIO/LINE Digital Frontier (C)RIVERSE WEBマンガ市場では、ここ数年にわたり“レベルアップ系バトル”が安定した人気を保ち、根強い支持を集めている。昨年12月に電子コミックサービス「LINEマンガ」が発表した「LINEマンガ 2025 年間ランキング(連載)」では、『俺だけレベルアップな件』(4位)をはじめとする同ジャンルの作品が多数ランクインした。コメント欄では何度も読み返すコアなファンに加え、一度離脱したものの“復帰”する読者の存在もうかがえる。“レベルアップ系バトル”はなぜ、令和時代に支持を保ち続けているのか。その背景とともに、ランキング上位の3作品を紹介する。
【画像『ナノ魔神』『アカデミーの天才剣士』ほかレベルアップ系バトル人気作■「今どこにいるか」「何を目指すか」明確な構造がSNS世代の価値観にフィット
RPGをプレイした経験がある人なら、「レベル上げ」の苦労と、その末に数字が上がりファンファーレが鳴る瞬間の快感を覚えているだろう。時間をかけて積み重ねた行動が、目に見える成果として返ってくるレベルアップ系バトルは、その感覚を物語の軸に据えたジャンルだ。主人公の成長や努力の結果を数値化することで、読者に明確な手応えと達成感をもたらしている。
「強さの可視化」という発想自体は新しいものではない。『ドラゴンボール』(鳥山明/集英社)の“スカウター”は、その代表的な例だろう。ただし近年の作品では、その表現がより日常的かつ体系的になっている点が特徴だ。「LINEマンガ 2025 年間ランキング(連載)」5位にランクインした『ナノ魔神』ではAIによるナビゲートが成長を管理し、8位『俺だけレベルMAXなビギナー』ではゲームのステータスウィンドウが常に主人公の現在地を示す。強さは演出ではなく、「常に確認できる指標」として物語に組み込まれている。
このジャンルが支持を集める背景には、現代社会において「努力と結果、評価の関係が見えにくくなっている」状況がある。成果主義や数値評価が強調される一方で、その基準は不透明になり、正しく努力しても正当に評価されないと感じる場面は少なくない。頑張りがどこに積み上がっているのか分からないまま消耗していく感覚を、多くの人が共有している。
レベルアップ系バトルは、そうした現実とは対照的に、「行動すれば必ず数値が動く世界」を描く。戦闘や訓練といった行為がレベルやステータスとして即座に反映され、成長の過程が常に可視化される。努力が途中で失われたり、評価されずに消えたりしないという前提が、物語に強い納得感を与えている。
また、SNS世代は、評価や現在地が明確な構造に親和性が高い。レベルやランク、階層といった指標は、「今どこにいるのか」「次に何を目指すのか」を直感的に理解させ、読み進めやすさにもつながっている。
レベルアップ系バトルは、単なる成長物語や爽快なバトル表現にとどまらない。評価基準が曖昧になりがちな現実とは異なる秩序を示し、「積み重ねた分だけ前へ進める」という感覚を物語として成立させている点に、現代ならではの支持の理由があると言えるだろう。
■多様な切り口で描かれるレベルアップ系バトルの現在地
ではここから、ランキング上位に入った“レベルアップ系バトル”3作品を見ていこう。同じジャンルに属しながらも、最新テクノロジーによる能力獲得、過去への回帰、長年の経験を生かした攻略譚など、切り口や世界観はさまざまだ。共通しているのは、「成長」や「前進」をどう描くかに工夫が凝らされている点だ。個々の作品を追うことで、レベルアップ系バトルが持つ多様な表情が見えてくる。
●5位:『ナノ魔神』
未来からやってきた子孫によって最新テクノロジーであるナノマシンを与えられた、主人公の天黎雲(てん りうん)が、「魔道館」(いわゆる武術学校)に入り、その力でさまざまな武術を極めながら、カースト最下層からの復讐を果たしていく物語。ナノマシンの性能は、あらゆる武術を頭に直接インストールすることで習得することができ、何十年もかかる修練を数時間で終わらせることも可能。しかしインストールには途方もない苦痛がともない、武術の型を手に入れることも容易ではない。いきなりチートを手に入れ無双モードかと思いきや、自分を見下していた相手を圧倒するどころか追い詰められ苦戦してしまうという場面もあり、そうした一筋縄ではいかない展開に魅力を感じた読者も多いようだ。
コメント欄では、子孫の存在やタイムパラドックス、世界線の解釈をめぐって議論が活発に交わされている。また「何度目かのリピート開始しますw」「これは途中までいって読み返し、最後までいって、また読み返したくなるマンガ」「伏線がえぐい。読み直しがドキドキする作品は神」といった声も多く、読み返すことで構造や伏線の妙がより際立つ作品だ。レベルアップの快感だけでなく、考察と再読を促す設計が、継続的に読者を引きつけている。
●7位『アカデミーの天才剣士』
突如現れた巨人から世界を救うことが出来ず後悔したまま最期を迎えた主人公・ロナンは、指揮官・アデシャン将軍から託された過去に戻る能力によって、最強剣士としての知識と経験を持ったまま10年前に回帰。同じ悲劇を起こさないためアカデミーに入って腕を磨き直し、仲間を集めながら世界を守るための力を蓄えていく。「アカデミーに入って学ぶ」という回帰前にはなかった経験をすることで、回帰前とは異なる仲間や能力と出会い、異なる成長をしていくところがストーリー展開のポイントだ。
コメント欄では「絵が綺麗で読みやすい」「作画の安定感が高い」といったビジュアル面への評価が多く見られ、物語への没入を支える要素として作用していることがうかがえる。また、「序盤から気になる謎が多い」といった声もあり、ロナンの剣だけが巨人に効く理由や、アデシャン将軍が「回帰の玉」を持っていた背景、巨人の正体など、物語冒頭で提示されたフラグがどう回収されていくのかが読者の関心を引き続けている。読み進めるほどに世界観への理解と期待が積み重なっていく構成が、この作品の強みと言えるだろう。
●8位『俺だけレベルMAXなビギナー』
あまりの難易度の高さに誰もが諦めたクソゲー「試練の塔」を、11年かけてクリアーした唯一のプレイヤーである主人公・鈴木裕人は、ゲーム実況ストリーマーとして活動していた。ある日、そのクソゲーそっくりの塔が街に出現。「試練の塔」のクリアー経験を持つ裕人は、ガチ勢としての誇りを賭け、人類の命運を背負った戦いに挑む。攻略法を熟知した鈴木は、ストリーマー事務所のブラック社長、白髪の老人、女子高生など、さまざまなライバルを出し抜きながら次々とレアアイテムをゲットし、塔を攻略するための条件を揃えていく。
レベルアップよりもアイテムやスキルの獲得に重きを置いているところ、主人公が正義感タイプではなく、腹黒さも持ち合わせているところがポイント。政府が「覚醒者協会」を新設、塔内の様子が生配信されているなど、ゲームが現実化した世界も上手く表現された。「笑いあり涙あり、主人公が強くてかっこよくずる賢くて優しい、オリジナリティー溢れる最高のマンガ!」など高評価コメントも多数。シンプルだがひとひねりある展開に、魅力があふれている。
▼「LINEマンガ 2025 年間ランキング」(連載)
1位『枯れた花に涙を』(Gae/LINEマンガ)
2位『よくある令嬢転生だと思ったのに』(原作:lemonfrog 脚色:DOYOSAY 絵:A-Jin (C)MSTORYHUB/LINEマンガ)
3位『入学傭兵』(原作:YC 作画:rakhyun/LINEマンガ)
4位『俺だけレベルアップな件』(漫画:DUBU(REDICE STUDIO) 原作:Chugong 脚色:h-goon (C)DUBU(REDICE STUDIO), Chugong, h-goon 2018/D&C MEDIA)
5位『ナノ魔神』(画:GGBG 脚色:Great H 原作:HANJUNG WOLYA (C)RIVERSE/LINEマンガ)
6位『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』(原作:江藤俊司 線画:疾狼 背景:3rd Ie 着色・制作:Studio No.9/Studio No.9)
7位『アカデミーの天才剣士』(文・絵:C.H 原作:SeoGwando (C)BLUEPIC/LINEマンガ)
8位『俺だけレベルMAXなビギナー』(脚色:WAN.Z(redice studio) 原作:Maslow 作画:swingbat (C)RIVERSE/LINEマンガ)
9位『問題な王子様』(原作:Solche 漫画:CACTUS (C)SEOUL MEDIA COMICS/LINEマンガ)
10位『再婚承認を要求します』(Alphatart, SUMPUL, HereLee (C)MSTORYHUB/LINEマンガ)
11位『コードネーム:バッドロー』(ストーリー:金正賢 作画:Lim lina/LINEマンガ)
12位『転生したらバーバリアンになった』(作画:MIDNIGHT STUDIO 脚色:Team the JICK 原作:Jung Yoon-kang (C)C&C Revolution Inc./LINEマンガ)
13位『余命僅かだと思ってました!』(漫画:エシー 脚色:hyeyong 原作:Ari Choi/LINEマンガ)
14位『泣いてみろ、乞うてもいい』(漫画:VAN JI 原作:Solche/LINEマンガ)
15位『星剣のソードマスター』(作画:juno 脚色:Hong Dae Ui 原作:Q10/LINEマンガ)
16位『部長K』(脚色:Man's story 作画:jongteak Jung 制作:PTJ COMICS/LINEマンガ)
17位『私の愛する圧制者』(脚色・作画:LICO 原作:Cersei (C)STUDIO LICO/LINEマンガ)
18位『放っておけない関係』(原作:FLADA 脚色:VODAUVEU 作画:クォンクォン/LINEマンガ)
19位『傲慢の時代』(脚色:SOY MEDIA 作画:Hansol 原作:Lemonfrog (C)SOY MEDIA/LINEマンガ)
20位『俺だけ最強超越者〜全世界のチート師匠に認められた〜』(原作:江藤俊司 ネーム:フウワイ 線画:土田健太 背景:3rd Ie 着色:maruco 制作:Studio No.9/Studio No.9)
(文/榑林史章)