写真 もし可愛い我が子が大人に叩かれる瞬間を目の当たりにしてしまったら……あなたならどうしますか?
幼い子どもにとっては、たった一度の行為でも大きな恐怖や傷になりかねません。
今回は、子どもの心と体を守るために行動した女性のエピソードをご紹介します。
◆義父が突然、3歳児を叩いた瞬間
ある日、中野麻里子さん(仮名・33歳/主婦)は、息子の蓮くん(仮名・3歳)を連れて義実家へ昼食を食べに行きました。
「すると、少し長い食事に飽きてしまった蓮が椅子の上に立って甲高い声を上げ、ふざけだしてしまって。私が慌てて止めようとすると、義父が『うるさい! 何やってんだ、食事中だぞ!』と大きな声で怒鳴り、蓮の頭を叩いたんです」
そこまで強く叩かれたわけではなかったものの、あまりに突然の出来事に蓮くんは目を丸くし、そのままカーテンの影へ逃げ込み、しくしく泣き出してしまったそう。
「それ以来、蓮は『じいじいや、行かない』と言って義父を怖がるようになり、義実家に行く話が出ただけでカーテンの中に隠れるようになってしまいました」
◆“しつけ”と言い張る義父に、怯える息子
蓮くんがお行儀よくできなかったのは事実ですが、とはいえ頭を叩かれた経験は幼い子にとって大きなショックとして残りやすいもの。麻里子さん自身もその光景に強い驚きと不安を覚え、自然と義実家へ行く頻度が減っていきました。
「そのことを疑問に思った義父に、夫が理由をやんわり説明したところ、『当たり前のしつけをしてやっただけだ! 甘やかしていたら将来ろくな人間にならんぞ!』と逆ギレ。そのうえ、最悪なことに私たちの家へのアポなし訪問を繰り返すようになってしまったんですよ」
そして家に来るたび、カーテンに隠れている蓮くんに向かって「おーい蓮〜じいじだぞ〜! ほら出てこい〜」としつこく声をかけ続けてくるようになったそう。
「義父の行動を止めようといろいろ声をかけても全く聞く耳を持ってくれず、私の我慢は静かに限界へと近づいていきました」
◆アポなし訪問の連続……これ以上息子を傷つけないで
そんなある日、またアポなしで義父がやってきました。乱暴に玄関を開けると、蓮くんはガタガタと震えていました。
「義父が無神経に蓮に近づこうとした瞬間、私は『お義父さん、もういい加減にしてもらえませんか? 叩かれたことがショックで、蓮はまだ怖い気持ちを抱えています。なのにアポなしで来て無理に近づいたら……もっと傷つくだけです』と、なるべく冷静に、でもはっきり伝えました」
しかし義父は「たったあれくらいのことで何を言っているんだ?」と、まるで響いていない様子だったそう。
「すると、静かに聞いていた夫が口を開き『父さんがしているのはしつけじゃなくて、虐待やモラハラだよ。会いたいなら、蓮が“会いたい”と思える関係を作り直すところからだよ』と言ってくれたんです」
ところが義父は、「なんで俺がこんな子ども相手に気を遣わないといけないんだ!」と烈火のごとく怒り狂って帰ってしまいました。
◆夫がついに告げた一言「それはしつけじゃなく虐待だ」
「後に夫から聞いた話では、義父は夫が子どもの頃にも子育てにはほとんど参加せず、気分次第で可愛がったり怒鳴ったりしていたとのことでした。家族旅行にも行ったことがなく、学校行事には一度も来たことがなかったそうなんです」
そんな義父でも、孫には優しくしてくれるものだと思っていましたが……現実は違いました。
「だからこそ、蓮を守るために私達は義父を出入り禁止にすることに決めました。当然、義父との関係性は悪くなりましたが、仕方のないことだと思っています」
◆子どもを守るための“会わせない決断”
今回の出来事は、義父の感覚では“しつけ”でも、れっきとした暴力にあたる行為です。幼児の頭部はまだ柔らかく衝撃にも弱いため、力の強弱に関わらず、頭を叩く行為は医学的にも避けるべきとされています。
世代間で子どもへの接し方にギャップがあることは確かですが、大人の価値観を一方的に押しつけ、子どもの「怖い」という気持ちを置き去りにしたまま関わろうとするのは、関係の修復を遠ざけてしまうだけ。愛情を示すどころか、恐怖を積み重ねる結果になってしまいます。
子どもの心と体の安全を最優先に考え、「会わせない」という麻里子さんの決断は、正解だったと言えるでしょう。蓮くんが安心して過ごせる環境を守る、それが親としてできるもっとも大切な選択だったのではないでしょうか。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop