
世界を驚かせているトランプ大統領の狙いについて解説していきます。まずは、デンマーク自治領のグリーンランドをめぐる動きです。トランプ大統領が領有に意欲を示す中、ホワイトハウスは、アメリカ軍の活用が「選択肢のひとつ」だとする声明を出しました。
【画像で見る】アメリカとグリーンランド 経度0度を中心線とした地図で見ると…
核ミサイルを懸念?アメリカがグリーンランドを狙うワケ井上貴博キャスター:
これまでの「法による支配」から「力による支配」へと、国際社会の秩序が変わっていく重要な局面にあると言えるかもしれません。
トランプ大統領は1月4日、米メディアのインタビューで、グリーンランドについて「絶対に必要だ」と話しました。
グリーンランドの領有については、これまでに何度も口にしてきていますが、1月6日にはホワイトハウス報道官が、その手段として「アメリカ軍の活用は選択肢のひとつ」と声明の中で強調しています。
トランプ氏がグリーンランドを狙う理由について、明海大学・小谷哲男教授は「西半球での支配力強化」があるとしています。
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トランプ氏がたびたび口にするこの「西半球」ですが、経度0度(ロンドンのグリニッジ天文台)を中心線とした地図を見たときに、向かって左側が西半球、そして右側が東半球となります。
西半球の中には、アメリカ、南米、北米、そしてグリーンランドが入っています。
トランプ大統領は、何としてもこのグリーンランドを支配下に置きたいと考えているわけですが、その狙いのポイントは「温暖化で氷が溶け出してきていること」にあるといいます。
氷が溶けていくと、グリーンランド北部が航行可能になり、船でグリーンランドの近くまで行けるようになります。トランプ大統領は、中国やロシアの軍艦による航行を懸念しているのではないかということです。
明海大学・小谷哲男教授:
いま中国・ロシアの船は北極点の近くまで近づいてきています。北極点に近づいてくるとグリーンランドの北部を通ることになります。
今は商船がメインですが、この先、軍艦や特に潜水艦がやってくると、北極からアメリカ本土を核ミサイルで狙うこともできるようになってきます。トランプ大統領は恐らくそれを懸念しているんだと思います。
井上キャスター:
他にも、氷がどんどん溶けていくと石油・レアアースなどの採掘が可能になります。既に中国企業はグリーンランドを買い漁っているということです。
明海大学・小谷哲男教授:
グリーンランドはエネルギー、鉱物資源がかなり豊富だと言われていましたが、氷があることで、これまで開発できませんでした。
しかし温暖化で氷が溶けて、資源に手が届くようになってきたところで、真っ先にグリーンランドに来たのが中国企業だったということになります。
トランプ大統領は、レアアースを中国に握られてしまっていることを非常に懸念しています。グリーンランドが手に入れば、レアアースを中国に依存しなくても手に入れることができるため、グリーンランドに関心を持っているわけです。
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井上キャスター:
いずれにしてもアメリカが力をもって、グリーンランドを支配下に置くということになると、今度は中国・ロシアも力を持って他のところを同じように支配できるという理論になってしまいます。そうすると、今までの国際秩序があってないようなものという感じもします。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
私はオランダ人なので、まさかアメリカが武力でグリーンランドを制覇するというのは想像もつかないですが、想像できないようなことをするのがトランプ大統領なので、不思議でもないかもしれません。
一方で、トランプ大統領はやはりディールが好きなので、軍事力的に制覇するのか、あるいはディールでやるのか。
例えば、ウクライナもアメリカ企業が資源を優先的に発掘できるようにするとか、あるいはディエゴガルシアみたいに100年のリースで、一時的に支配するみたいなディールを作ることも、過去に例があります。そういうことも考えられるのではないでしょうか。
これが本当に世界を2つに分断するという話であれば、そのあとも続くのかどうかということもあります。今のトランプ政権の人たちはあと3年残っているわけですが、違う大統領になれば考えも変わるかもしれません。
米中の“取引”に発展する可能性も…アメリカは「日本も台湾も守らない」?出水麻衣キャスター:
ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束するとき、アメリカのタスクフォースの皆さんは入念に準備していたので、この作戦は結構前から考えられていたのではないかなと思います。
グリーンランドをめぐるアメリカの作戦は、前進してると捉えていいのでしょうか。
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明海大学・小谷哲男教授:
アメリカが12月に国家安全保障戦略というのを発表しました。ベネズエラの問題も含めて、中南米の話は書いてありますが、グリーンランドの話は一切書いていません。
トランプ政権というよりは、トランプ大統領・個人の思い入れが強いものなので、今の段階で米軍が力づくでグリーンランドを取るような作戦を計画しているとは、とても思えません。ただ、大統領がやれと言えば、そうせざるを得ないというのが今の段階ではないかなと思います。
井上キャスター:
例えばアメリカが西半球を支配下に置いた場合、中国が台湾などに攻め込むことについて「何も言わないから、アメリカと中国でそれぞれ分け合おう」という話になっていきかねないわけですか。
明海大学・小谷哲男教授:
今回アメリカがベネズエラに攻め込んだ背景には、ベネズエラが中国に大量に石油を売っている、あるいは中国の投資を受け入れていることがあります。つまり、アメリカは中国の影響力を西半球から排除したい。グリーンランドを購入するのもそのためです。
「中国が西半球から出ていってくれれば、逆にアメリカはアジアの問題には手を出しませんよ」という“ディール”(取引)が米中の間で出来上がる可能性はあります。
そうなると、アメリカは台湾をもう守らない、日本も守らないという状況が生まれるかもしれません。
トランプ大統領も「G2」と言っていますが、米中がお互いの勢力圏を認め合う、あるいは縄張りを認め合うということで、「中国はアジア」「アメリカは西半球」で、お互い手を出さないというディールが成立してもおかしくないと思います。
西半球はアメリカの支配下になるのか ベネズエラ侵攻で見せた「本気度」井上キャスター:
ベネズエラは世界屈指の石油埋蔵量で、8割を中国に輸出しています。またほとんどの兵器をロシアから輸入しているなど、親ロシア・親中国(反アメリカ)です。
そのためアメリカとしては、ベネズエラを親アメリカ国家にして状況を変えたい、「西半球を手にしたい」と考えているという事ですが、どのくらいの可能性で実行するのでしょうか。
明海大学・小谷哲男教授:
今回アメリカがベネズエラに軍事侵攻したのは、これが本気だということを示すためでもあったと思います。今、中南米の国々も「次は自分たちじゃないか」というふうに考え出しています。
トランプ氏は先日、「西半球にアメリカの友好国を作り、西半球でアメリカがエネルギーを受給するんだ」と言いました。
まさに西半球をアメリカの友好国で固めて、エネルギー資源や鉱物資源を西半球で受給できる体制を作ろう、ということだと思います。
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<プロフィール>
小谷哲男さん
明海大学教授
アメリカの外交・安全保障政策に詳しい
日本国際問題研究所主任研究員
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック顧問・アース製薬の社外取締役など
