限定公開( 2 )

中国でメガヒットした3DCGアニメーション映画『ナタ 魔童の大暴れ』の日本語吹き替え版が2025年12月26日、スクリーンに登場した。同作は2019年に公開された『ナタ 魔童降臨』に続く続編で、中国で2025年の旧正月に公開されるや国内歴代1位の異例のヒットとなり、世界各国に上映が広がった注目作だ。
【どんな映画?】アナ雪、インサイド・ヘッド超えの「中国アニメ映画」の吹き替え版が日本上陸
興行収入は全世界で3500億円に上り、『インサイド・ヘッド2』『ライオン・キング』『アナと雪の女王2』を超え、全世界アニメ映画の歴代1位を記録している。
その興行収入の9割以上は、驚くべきことに中国本土の動員によるものだ。作品の高い完成度に対して中国国外での知名度は決して高いとはいえず、現時点で誰もが知るところのグローバルヒットには至っていない。
だが一方で日本では、意外にも中国アニメ映画への関心が高まっている。詳細は後述するが、2019年公開の『羅小黒戦記』シリーズの日本での興行収入は5億円超を記録している。
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同シリーズに続き、『ナタ』シリーズも中国アニメ映画への関心層を増やす作品になるのではないかと筆者は考えている。日本市場で転換期を迎えようとしている中国アニメ映画の現在地を探ってみたい。
●『ナタ』シリーズ どんな作品なのか?
そもそも『ナタ』とは、中国の古代神話『封神演義』に登場する少年戦士のナタ(?吒)に由来する。その神話を現代的に再解釈したオリジナルストーリーが、映画『ナタ』シリーズだ。
主人公のナタは、英雄になるはずが魔王になる宿命を背負って生まれ、周囲から差別や偏見を受けてきた少年。粗暴でやんちゃだが情に厚く、どんな苦難も乗り越えるパッションの持ち主だ。2作目となる今作では、そんなナタと親友・ゴウヘイの間で育まれる友情や、彼らの家族との絆が濃く描かれる。
監督の餃子氏(本名・楊宇)は1980年生まれで、宮崎駿(崎はたちさき)や押井守などの日本アニメにも親しんで育った。「不屈の精神力を持った主人公が、仲間や家族のために果敢に強敵に挑む」という、どこか日本の少年漫画的なイズムが本作からは感じられる。
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4000人のスタッフが制作に携わっており、大迫力かつ緻密な3DCG作画の映像美も見どころだ。劇場スクリーンで鑑賞するのに相応しい、華やかなエンターテインメント性を存分に感じられる作品である。
中国では爆発的にヒットしたそんな本作だが、日本ではどのように受け止められたのか。
●本国では爆発的ヒット 日本での上映後の反応は……?
吹替版公開時の上映館数は全国で約75館、東京都内で9館と少なめな数字だった。国内の大手アニメ作品はおおよそ300館以上で上映される。2025年11月に公開された、日本でも人気の中国アニメ映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が約150館で公開されていることを踏まえても、控えめな印象だ。
筆者は公開初週の週末、新宿で午後6時台の回を鑑賞したが、客席の埋まり具合は半数ほどだった。北米では公開後に3週連続TOP10入りを果たしたようだが、上映館数と埋まり具合だけを踏まえると「やっぱり中国アニメは、日本であまり流行らないんじゃないか?」と思う方もいるかもしれない。
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しかし、中国での『ナタ』のヒット現象を見るに、日本映画市場の上位に中国アニメが食い込む日も近いという予感が、筆者にはある。
●『鬼滅の刃』のようなブームに発展 キャラクター映画として成功
それはなぜか。注目すべきは、中国で『ナタ』が、日本で言う『鬼滅の刃』のようなブームを巻き起こしていたことだ。
中国メディアCGTNの記事によると、『ナタ』の人気は映画自体にとどまらず、キャラクターグッズの買い占めが起こるほどの流行ぶりだったという。餃子監督が自らデザインを手がけたグッズはオンラインショップで5000万元(約11億円)を売り上げ、映画と関連する実在の地域でも観光需要(日本で言うところの聖地巡礼だ)が高まるなど、キャラクターIPとして幅広い経済効果が生まれている(参照:JETRO「成都発の大ヒットアニメ映画『ナタ2』の興行収入、100億元突破」)。
実際、『ナタ』がこれまでの中国アニメ映画と大きく違っている点に、キャラクター作品としての圧倒的な親しみやすさがある。
中国で好成績を収めて日本に輸入されたアニメ映画は『白蛇:縁起』(2021)、『ナタ転生』(2021)、『雄獅少年/ライオン少年』(2023)、『ヨウゼン』(2025)など近年でいくつもあった。キャラクターデザインは実写に近いリアル志向な作風が多いのが特徴だった。
そんな中で『ナタ』は、ディズニー・ピクサーが得意とするようなデフォルメされたポップなキャラクターが作品の世界観をリードしている。描かれるテーマは誠実でまじめだがコミカルなギャグシーンも多く、全体のトーンとしては軽快だ。ファミリー向け作品としてさまざまな形で人気が出るのも頷ける。
日本での展開でも、この大衆向けIPとしての魅力を最大化する工夫が施されている。字幕翻訳にはRPGゲームなどで中国神話を現代エンタメとして分かりやすく伝えてきた経験のある、中国史学者の檀上寛氏を起用。神話特有の世界観を日本の観客にも親しみやすい形で届けるローカライゼーションが図られている。
そんな『ナタ』の商業的成功を受けて、類似傾向のある中国アニメが増えていく可能性も高い。キャラクタービジネス最盛の日本市場で、中国IPが社会現象を巻き起こす日が来ても、決しておかしくはないのだ。
●日本で存在感が増しつつある、中国コンテンツ
ちなみに先述したアニメ映画『羅小黒戦記』シリーズは、『ナタ』以上に日本の観客から人気が高く、すでにその兆しがある。羅小黒戦記は、人間の開発で住処を失い旅に出た、黒猫の妖精・シャオヘイが道中で人間や妖精と出会い、共存や居場所の意味を知りながら成長していく物語だ。
2019年公開の1作目『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』は、中国アニメとして異例の日本興収5.8億円を達成したことで話題になった。
2025年11月に公開された2作目『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』でも評判を落とさず、興収4億を突破。前作以上のロングランヒットが期待されている(参照:BANGER「興収2.5億円突破!『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』4週目来場者特典は本編カットクリアカードに決定」)。
中国アニメでは3Dが主流だが、同作は日本人にとって親しみのある2D作画の愛らしいキャラクターデザインも魅力のひとつ。主人公のシャオヘイをはじめ、その登場人物たちにもファンがつき、根強いコミュニティが形成されつつある。
日本でも人気の中国発コンテンツといえば、映画以外でもソーシャルゲーム『原神』『崩壊:スターレイル』、地上波アニメの『時光代理人 -LINK CLICK-』『魔道祖師』、キャラクターとしては「ラブブ」などさまざまあり、この5〜6年で話題に上がる作品数が明らかに増えている。
いよいよアニメ映画産業でも、中国IPが頭角を現しつつあるということなのではないだろうか。今後新たな意欲作が登場した際には、宣伝次第で日本でも上位を獲得する可能性が十分にある。中国コンテンツのグローバル展開に今後も注目したい。
●著者紹介:白川穂先
エンタメ企業と編集プロダクションで編集・取材・執筆を経験し、個人で執筆活動。ドラマ、映画、アニメなどエンタメ記事の企画・執筆を幅広く行っている。1994年生まれ、北海道出身。
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