画像はイメージです 混み合う電車での通勤・通学は出来れば穏やかに過ごしたいもの。だが、人が密集する車内ならではの迷惑行為によって、とても穏やかに過ごすことなどできない状況に陥ることもある。
奈良橋愛理さん(仮名・25歳)は、満員電車できわめて不快な経験をしたことがあるのだという。
◆髪の毛のニオイをかいでくる不審人物
「当時、私は大学でストリートダンスのサークルに入っていて、活動に夢中になっていました。通学中の電車内ではスマホでダンス動画を見て過ごすのが日課でした」
愛理さんは実家から通っていたが、1限の授業の通学時には、通勤ラッシュで混み合う電車を利用することになる。
「なんとか吊り革を確保できるぐらいの満員電車に乗っていると、気になることがありました。私の背後にたびたび立つ人物がいて、その人物の顔がやたらと近いことに気づいたんです。背の高い40代ぐらいのサラリーマンで、私のスマホを覗き込んでいるようでした」
その人物は高い確率で愛理さんの背後に立ったという。
「その人は途中から乗り込んでくるんですが、毎回ではないものの、狙ってやっているようにしか思えない頻度で背後に立つんです。また覗かれてると思うだけで嫌でしたが、背後で時々『スーッ』という音が聞こえて来るようになりました。なんだろうと思って見ると、私の髪の毛に顔を近づけて、ニオイを嗅いでいたんです」
◆徐々にエスカレートし、ついに…
気持ち悪さにゾッとしたが、まだ耐えられる範囲だった。
「その男の人に背後に立たれている時に、今度はお尻に何かが触れてくるようになったんです。電車の揺れで手が当たってしまったぐらいの本当に微妙な程度に……。でも、少しずつ触れている時間が長くなり、手の甲で触っていることがわかったんです。それでも『揺れで手の甲が触れてしまっただけ』と言い逃れされそうな感じで、周りの人に助けを求めたりもできませんでした」
前日は、終わる時間が遅い居酒屋のバイトに入っていることも多く、乗る電車を早めるのは難しかった。
「乗り込む車両を変えるようにして、これでもう大丈夫だと思ったんですが、何週間か経った頃、1限に向かう電車に乗っていた時に背後に立たれたんです。私が車両を変えたことに気づいて探したんだと思います。怖くなって身体をこわばらせていると、お尻に触れるものがあって……。でも、それは手の甲ではありませんでした……」
◆「痴漢撃退機能」を使ってみたら…
男は下半身を押し付けてきたのだという。
「私が抵抗しないことにつけ込んで、行為をエスカレートさせてきたようでした。その後も乗る車両を変えたんですが、やっぱり背後に立たれて……。今度は変なリズムで腰を押し付けて来るようになったんです。そうすれば私がよろこぶとでも思ったようですが、こっちとしてはただただ愚弄されている気分でした」
背後から何をされるのかわからない恐怖感から、周囲に助けを求めることはできずいた。
「どうにか出来ないか調べてみると、警視庁が出している防犯アプリがあることを知ったんです。ある朝、男が背後から身体を押し付けてきた時に、私は意を決してそのアプリの『痴漢撃退機能』を起動しました」
「痴漢撃退機能」は、大声を出せない被害者のための機能で、画面に痴漢に遭っていることを表示し、周囲にSOSを伝えられるというものだった。
「もし触られたら、それをすぐに周りに見せようと思ったんですが、男は私のスマホ画面を覗き込んで何をしようとしているのか気づいたようで、慌てた様子で人をかき分けてその場から離れていったんです」
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それ以来、男が愛理さんの背後に立つことはなくなったという。ギリギリのラインを狙って痴漢に及ぶような悪どい犯罪者を撃退するためには、こうしたツールを活用するのも有効な防御策と言えるのかもしれない。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め