
ホンダは2026年型のPUのサウンドを昨年12月にSNS上で公開している。それを聞いた光一は「すごく迫力があって、いい音でした」
連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE42
2026年シーズンは大幅なマシンレギュレーションの変更が行なわれるとあって、例年に比べて動きが早い。各チームは1月中旬には新マシンを発表し、下旬にはスペインのバルセロナで早くも1回目のプレシーズンテストが開催され、シーズンが本格的に始動する。
2月にはバーレーンで2回のテストがあり、3月にオーストラリア(決勝3月8日)で開幕戦が行なわれる。今回はレギュレーションの変更点をおさらいしつつ、堂本光一に今シーズンの見どころや、気になるポイントについて語ってもらった。
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【新型マシンは軽量でコンパクトに】
2026年はマシンのレギュレーションが大きく変わり、車体、パワーユニット(PU)、タイヤのすべてが変わります。一番わかりやすいのはマシンがコンパクトになることです。
正直、昨年までのマシンは大きすぎて、追い抜きもしづらい状況でした。しかも見た目も縦に長すぎてカッコ悪かった。
でも今回のレギュレーション変更で車幅は2000mmから1900mmに縮小され、ホイールベース(前輪の中心から後輪の中心までの長さ)は最大3600mmから3400mmに短縮されます。
さらにマシンの最低重量も30kg減るので、F1らしい俊敏な動きが多少は戻ってくるのかなと期待しています。
マシンが軽量コンパクトになることで、タイヤもやや小さくなります。前輪の幅が20mm、後輪の幅が30mm、それぞれ狭くなります。外径も縮小されることになるので、タイヤ交換を担当するピットクルーは少し楽になると思いますね。
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昨シーズン限りでホンダとのパートナーシップを解消したレッドブル。他チームに先駆け、2026年仕様のカラーリングを発表した。マシンは2026年モデルではなく、プロモーション用のデモカー Redbull
まだ各チームがニューマシンを発表していないのではっきりとしたことは言えないですが、国際自動車連盟(FIA)の2026年型マシンの予想画像を見る限り、ボディのデザインはかなりシンプルになっていました。
最近のF1マシンは空力を考慮して、サイドポンツーンを始め、さまざまなパーツが3Dの複雑な曲線を描いていましたが、直線的なラインで構成されています。見た目は2000年代前半のマシンっぽくなって、カッコいいと思いました。
【追い抜きを増やすために新システムを採用】
2022年に車体の底面(フロア)と地面の間を流れる空気を利用してダウンフォース(マシンを路面に押さえつける力)を発生させる"グラウンドエフェクトカー"が導入されました。
その目的はマシン後方への乱気流を減らして、接近戦を増やすことでしたが、結果的にはうまくいかなかった。
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今年のマシンはフロアがかなり簡素化され、従来よりもダウンフォースとドラッグが減ると言われています。"ダーティエア"と呼ばれるマシン後方の乱気流も減って接近戦が増えることが期待されていますが、F1が空力を利用している限り、乱気流を減らすのは難しいのかな......と個人的には思っています。
追い抜きを増やすために、DRS(ドラッグ・リダクション・システム)が廃止され、新たに「オーバーテイク・モード」というシステムが採用されます。DRSは、ドライバーがボタン操作でリヤウイングのフラップが開いてドラッグ(空気抵抗)を減らしてストレート区間での最高速を上げて追い抜きをしやすくなるという仕組みでした。
新しいオーバーテイク・モードは、検知ゾーンで前を走るマシンの1秒以内に入った場合、後続車のドライバーはボタン操作をすることで追加のパワーがバッテリーから供給され、前のマシンをオーバーテイクしやすくなるという仕組みです。
しかもオーバーテイク・モードはドライバーが任意のタイミングで発動できるのがDRSと異なるところです
追い抜きを増やすために、もうひとつ新たに導入されるのが「アクティブ・エアロ」です。ドライバーがボタン操作でフロントとリアの両方のウイングを可動させることができます。このシステムもDRSとは異なり、直線区間だけでなく、コーナーでもウイングの開閉が可能とのことで、ドライバーの選択肢が大きく増えることになります。
実際にオーバーテイク・モードやレースでアクティブ・エアロをレース中にどう使われるのかは見えていませんが、オーバーテイクの意味がちょっと変わってくるかもしれないと感じています。
これまではオーバーテイクはドライバーのテクニックや度胸が試される、レースの最大の見どころであり、勝負を決するポイントでした。
でも新ルールのもとではオーバーテイクが必ずしも勝負を決するポイントになるとは限らない。新たに導入されるオーバーテイク・モードやレースでアクティブ・エアロを戦略的に使って、スマートに戦ったドライバーやチームが結果を残すというレースになっていくような気がしています。
【シーズン前半はPUの出来が勝負の鍵!?】
今シーズンはPUのレギュレーションも大きく変わります。MGU-H(熱エネルギー回生システム)が廃止されますが、電気モーターを使用したMGU-K(運動エネルギー回生システム)の出力が120kwから350kwへと約3倍に増加されます。
一方でエンジンのパワーを抑え、エンジンとモーターの出力比率を従来の8:2から5:5へ変更。また燃料もカーボンニュートラル燃料が100%使用されことが決まっています。
最近、各メーカーのPUの開発状況が徐々に漏れ伝わってきていますが、新しいレギュレーションにうまく対応できたメーカーと、そうでないメーカーとの間に競争力の差があり、シーズン序盤はPUの出来が勝敗の鍵を握ると言われています。しかも開発のポイントになっているのは、エンジンというのはすごく意外でした。
「今年のレギュレーションは電動化比率が大幅に引き上げられているし、もうF1ではエンジンの開発はいきつくところまでいっている。だから新しいPUの開発の中心はモーターやバッテリーなどの電動の部分で、そこで各メーカーの性能差がつくんだろうな......」と勝手に予想していたのですが、どうやらそうじゃない。
今年から新規参戦するキャデラックF1チームが1月16日、イギリスのシルバーストン・サーキットで2026年型のニューマシンを初走行した。ハンドルを握ったのはセルジオ・ペレス選手 Cadillac Formula1 Team
あとPUや車体の変更に注目が集まっていますが、意外とタイヤの変更も影響が大きいのではないかと思っています。
タイヤのサイズが変われば、当然グリップ力やマシンバランスも変わるだろうし、空力にも影響があるはず。それにタイヤを上手に使えたチーム、ドライバーが強いというのはレースの常です。
シーズンの序盤戦はPUの性能が勝負の鍵を握るでしょうが、PUの開発競争が収束してくると、いかに新しいタイヤをうまく使えるのかという勝負になっていくと思います。
【序盤戦は飛び出すチームが必ず出てくる!】
1月下旬にはもうスペインのバルセロナでテスト(1月26日〜30日)が始まります。この間、2025年のシーズンが終わって、ランド・ノリス選手が初めてのチャンピオンになったと話したような気がするのですが、もう新しいシーズンが本格的にスタートします。もう早すぎですね(笑)。
まだマシンの詳細がよくわからないのでなんとも言えないのですが、レースの見方が変わってくるかもしれないと感じています。
各チームのドライバーは今までよりも総合力を求められるようになると言えるかもしれませんが、かなり戦略的な走りを求められ、テレビの画面を見ているだけでは誰が本当は速くて、もっとも優勝に近づいているのか、ということがファンにはわかりづらくなるような気もしています。
その点に関してはちょっと不安ですが、それ以上にワクワク感のほうが大きいです。まずは各チームがどんなマシンを発表してくるのか、そこが楽しみ。
レースに関しては、ここ数年のF1は接戦が続いていましたが、レギュレーションが大きく変わる初年度ですので、どこか飛び出すチームが必ず出てくると予想しています。
最初のうちは新しいレギュレーションの中での最適解を見出したチームが独走していくと思いますが、他のチームがものすごい開発スピードで追いかけてきて、戦力的にだんだんと均衡するようになっていくはずです。それがF1のすごさです。
とりあえず2026年は午年(うまどし)なので、フェラーリには頑張ってもらいたいですね。
☆取材こぼれ話☆
2022年からNHKの音楽番組『The Covers』のナレーターを務めているが、昨年末にはTBSの『プロ野球戦力外通告』のナレーションも担当した。
「音楽番組の『The Covers』とドキュメンタリーの『プロ野球戦力外通告』とでは、しゃべり方が変わってきますが、基本的にナレーターの仕事は自分の感情をのせ過ぎず、起きていることを正確に伝えていく、ナビゲートしていくことだと思います。
でも一切感情を入れずに無でいいかと言われるとそうじゃないですし、すごく繊細で難しい仕事です。
『プロ野球戦力外通告』は以前、東山(紀之)さんがナレーションを務めていましたが、かなりセンセーショナルな雰囲気でやられていました。自分がやるにあたってはそこに寄せるようにとはしませんでした。
起きている事実を視聴者にしっかりと伝えることにプラスして、選手とその家族の方に、ほんの少し寄り添う雰囲気を出すことができれば、自分がやった意味があるなと思いながら、ナレーションをやらせていただきました。
すごく重くて、辛い場面も多い番組なのですが、見ている方が、自分も頑張ろうとか、人の支えや暖かみは素敵だなと、少しでも前向きな気持ちを感じられるようにと努力したつもりです。
『The Covers』のほうは、特集する音楽のテーマやゲストが毎回変わりますので、『今回はこんな雰囲気です』と指示をされて、それに合わせてナレーションするのですが、僕はどっちかと言えば明るいのに合わせるほうが不得意。それは歌も同じですね(笑)」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/Redbull Cadillac Formula1 Team
