ついにテスラを蹴落とし世界トップに! ガチ検証で見えたEV新王者・中国BYDの「弱点」

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2026年01月22日 09:30  週プレNEWS

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今月9日の会見。EV世界販売トップに立ったと、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は胸を張った


今月9日の会見。EV世界販売トップに立ったと、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は胸を張った


中国BYDが、ついに世界EV販売で米テスラを抜き去った。何が明暗を分けたのか。BYDは本当に無敵なのか。テスラとBYD、両方を知り尽くすベテラン自動車評論家・国沢光宏氏が、勝者と敗者のリアルをガツンと語る!!

【表】BYDの歩み

*  *  *

【絶対王者テスラが陥落したワケ】

――2025年、中国BYDが世界EV販売で米国テスラを抜き去り、名実共に"EV世界王者"となりました。

国沢 当然の結果でしょうね。BYDは昨年EVを225万台以上売り、前年比約28%増。一方のテスラは163万台で、2年連続の前年割れ。数字がすべてを物語っています。

――テスラ失速の原因はなんだったのでしょう。

国沢 一番大きいのは、フルモデルチェンジをほとんどしないことです。デザインが完全に飽きられた。当たり前の話ですが、クルマは"商品"です。何年も同じ顔、同じ内装では、ユーザーは確実に離れていきます。

――かつては熱狂的な支持もありました。

国沢 テスラは自動車メーカーというより、ITメーカーに近い。正確に言えば、"イーロン・マスク教"ですよね。「マスクが正しい」「テスラは未来だ」と信じる人たちが買っていた。でも、そのマスク本人が政治に首を突っ込みすぎた結果、信者が一気に離れてしまった。

――ほかに、テスラが首位から転落した理由はありますか。

国沢 ディーラーがないのも致命的です。クルマはメンテナンスが必要になる。私自身テスラにも乗っていましたが、修理のめどが立たないケースが多すぎる。故障しても部品がなかなか来ないんです。

これでは一般ユーザーが安心して買えるわけがない。正直、テスラには大きな伸びしろを感じていません。

――対照的なのが、EV世界王者に立ったBYDです。

国沢 BYDはEVとPHEVに経営資源を集中し、販売網がしっかりした、れっきとした自動車メーカーです。ただ品質については、正直ここまでとは思っていませんでした。


――国沢さんはBYDのEV・シーライオン7を実際に所有されています。

国沢 メルセデス・ベンツやアウディなど、欧州の高級ブランドと並べても遜色ありません。塗装や各部品を細かくチェックしましたが、どれも質が高い。見れば見るほどプレミアムクラスのそれです。

――装備面も"全部盛り"らしいですね?

国沢 先進安全機能、インフォテインメント、ナッパレザーのシート、電動リアゲート、ガラスルーフ、ディナウディオのプレミアムサウンドまで標準装備。価格は500万円を切り、補助金も使える。

この競争力の高さは、日本メーカーにとって相当きついと思います。買う前より、むしろ買った後のほうが「このクルマはヤバいなぁ」と感じています。何しろ窓ガラスの開閉音やワイパーの作動音まで、しっかりつくり込まれている。

【世界に進撃を続ける中国BYD】

――そんなBYDは海外への進撃が活発化しています。

国沢 東南アジアで特に強いですね。タイ、インドネシアを中心に工場建設と販売攻勢を強化しています。ブラジルやアルゼンチンなど、南米の足場固めも抜かりありません。

――一方で、巨大市場の米国ではBYDは"出禁"。加えてEUは本国から不当な補助金を受けているとして、中国メーカーのEVに追加関税を課しています。

国沢 逆に言えば、米国で売らなくてもホンダや日産を上回る販売を記録しているということです。

EUの追加関税についても、BYDはハンガリーに工場を建設するなど現地生産を進めています。中国から輸出すれば関税の問題が出ますが、欧州で造れば関税はかからない。EVだけでなく、PHEVでも欧州で存在感を強めています。

――中国国内では不動産バブル崩壊でデフレ圧力が強まり、値下げ競争も激化していると聞きます。

国沢 中国の自動車メーカーは、完全に適者生存の世界に入りました。生き残りをかけたサバイバルです。この競争をBYDが勝ち抜けば、さらに強いメーカーになれる。

――ズバリ、BYDに弱点はありますか。

国沢 クルマとしての弱点は、ほぼありません。唯一挙げるなら政治状況でしょうね。冷え込む日中関係を起因とした日本撤退の可能性といった政治リスクだけです。ただし、それはBYDの技術力や商品力とは無関係です。

――BYDは日本市場でも攻勢を強めていますね?

国沢 東京オートサロン2026(千葉県千葉市の幕張メッセで1月9日〜11日に開催)での発表は象徴的でした。昨年、BYDの世界新車販売は460万台。日本でも前年比約7割増の3742台を売っています。その中で目を引いたのがシーライオン7の躍進です。高価格ながら1500台以上を売っている。

――今年、日本市場に投入する新型車計画も明らかになりました。

国沢 軽EVのラッコ、アット2などを加え、8モデル体制になります。しかも富裕層を多く抱える日本最大級の輸入車ディーラー・ヤナセがBYDを扱う。要するに中国メーカーの"お試し参入"ではなく、BYDは日本市場に本気で根を張るというメッセージでしょうね。

――話をまとめると?

国沢 大変なのは日本の自動車メーカーです。低価格で、しかも世界市場で異常なほど競争力が高いBYDと戦わなければならないんですから。

何よりテスラと違って、BYDは"EV一本足"ではない。伝家の宝刀とも言えるPHEVがある。正直、BYDは厄介なタイプの強者です。日本の自動車メーカーは、うかうかしていられませんよ!

取材・文/週プレ自動車班 撮影/宮下豊史

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