
私が担当する管理職向け研修では参加者から、メンバーのやる気を引き出すことが非常に難しいという悩みを聞くことが年々増えています。
特に最近は多様化の時代です。Z世代を中心とした若手だけではなく、女性や年上の部下など、幅広いバックグラウンドのメンバーがいる場合もあるでしょう。管理職の現場マネジメントは難しくなるばかりです。
そこで今回は、多様化するメンバーのやる気を引き出す方法について、“ポジティブフィードバック”と“質問”といった観点から紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
管理職が感じている「手応えのなさ」の根源
なぜ、メンバーのやる気を引き出すのがこれほど難しいのでしょうか。そのヒントは、最新の調査データに隠されています。
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東京大学等の共同研究(A&Iエンゲージメント標準調査2025)によると、現代の従業員エンゲージメントにおいて、特に低い数値を示しているのが「組織コミットメント」です。
4点満点中「2.45」というこの数字は、多くの社員が「目の前の仕事には取り組むが、所属する組織への愛着や思い入れは希薄である」という危機的な状況を物語っています。
管理職の皆さんが感じる「手応えのなさ」の正体は、この組織に対する心の距離にあると言えるでしょう。この距離を縮め、彼らの内なるモチベーションを刺激する特効薬となるのが、日常の「ポジティブフィードバック」と「質問」のセットです。
ポジティブフィードバックと質問を日常で展開する
従業員エンゲージメントを高めるためには、心理学者のマズローが言う“社会的欲求”と“承認欲求”を満たしていく必要があります。
“社会的欲求”とは“つながり”の欲求であり、管理職としては、従業員一人ひとりを孤立化させない声がけや、従業員同士のコミュニケーションの場を設けていく必要があります。
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“承認欲求”とは、他者から認められたい、あるいは自分自身を価値ある存在として認めたいという願望のことで、ポジティブフィードバックと質問が鍵となっていきます。以下、承認欲求を高めるポジティブフィードバックと質問に関して、具体的な方法を紹介してまいります。
ポジティブフィードバックとは肯定的な承認のことであり、従業員の認められているといった実感がモチベーションを高めていきます。従業員は「自分の仕事が意味あるものであり、周囲からその仕事の進め方を含めて認められたい」という思いを深層心理に持っています。
従業員の存在そのものや取り組んでいる仕事を認め伝えていくことは、従業員の仕事への有意義性を育てるとともに自己効力感を育て、仕事への意欲を高めていくのです。ポジティブフィードバックをする際のポイントは、具体的にフィードバックしていくことになります。
「よくやっているね!」と言うよりも、「お客様の深い部分の課題を整理して、提案していた点はすごく良かったよ!」と、プロセスの部分も含めて伝えていくことが大切になります。
ポジティブフィードバックとセットで大切なのが質問です。指示ではなく、問いを通じて自身の仕事への思いや働きがいを引き出すことで、従業員の心の内側から“承認欲求”を高めていきます。具体的には以下のような質問がいいでしょう。
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「今やっている仕事が、周りのメンバーに及ぼすいい影響は、どんなことだと思う?」
「今取り組んでいる仕事が、所属する組織や会社にもたらすメリットは、どんなことだと思う?」
「私たちの仕事が社会にもたらす貢献には、どんなものがあると思う?」
従業員に深い内省をもたらし、自身の仕事への有意義性を育てることが、会社や組織への思い入れや愛着心を育てていくのです。
以上今回は、多様なメンバーのやる気を引き出す方法を、ポジティブフィードバックと質問といった観点から紹介してまいりました。この2つをセットで展開することによって従業員のやる気や働きがいを高め、高い組織成果に結びつけていってください。
