「ハイブリッドAI」のプロデューサーへ 日本HPが描く2026年の「Future of Work」戦略とエコシステム そしてキーボード型PCも

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2026年01月23日 17:40  ITmedia PC USER

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日本HPが恒例の年初事業説明会を開催し、新しいAI PCやソリューションの数々を発表した

 日本HPは1月22日、「2026年度日本HP事業説明会」を開催し、これからの事業方針や新製品の数々を公開した。


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●「Future of Work」戦略を支える「3つの柱」


 同社は、2026年も働く人々の生産性と創造性を高め、企業の変革、ウェルビーイングの向上を後押しする戦略「Future of Work」を進めるべく、さまざまな施策を行っていくという。


 同社が行った「2025 HP WRI調査」によると、ナレッジワーカーの83%が現在の業務ツールに満足できておらず、そのうち53%がよりよいツールを求めているという。自身の能力を発揮することが仕事のやりがいに貢献すると考えている人は30%で、これは世界で最も高い数字となる。


 これらの数字から、日本HPの岡戸社長は「日本のナレッジワーカーにとって、テクノロジーは単なるツールではなく、生産的で健全な職場環境を構築する重要な触媒である」と語り、Future of Work戦略として「働く人に、こだわる自由を」の実現を目指す。


 そんなFuture of Work戦略を推進するにあたり、2026年は「3つの柱」が軸となる。


 1つは、クラウドAIとローカルAIを組み合わせた「ハイブリッドAI」の推進だ。現状、多くのAI処理はクラウドで行われており、電力の逼迫(ひっぱく)、トークンコストの増大、セキュリティやプライバシー面での課題がある。これらをクリアするために推奨されるのがハイブリッドAIだ。


 岡戸氏は「クラウドAIとローカルAIのいいところを組み合わせたハイブリッドAIこそが、将来のAIのあるべき姿だ」と説明する。クラウドAIは、世の中の膨大かつ最新の情報を、圧倒的なパワーで分析/推論/学習するのに長けており、幅広く活用できるのが利点となる。一方のローカルAIは、一度組み上げれば追加コストがほぼかからず、秘匿性の高いデータも、安心/安全に取り扱える。


 同社は、これまでもハイブリッドAIを提唱してきているが、「2026年はそれをようやく実現できると確信している」(岡戸さん)とのことだ。そして、ハイブリッドAIエコシステムを推進していく上でプロデューサー的な役割を担っていくという。


 現在、日本HPは「AIソリューションベンダー」「コンサルタント・有識者」「AIインテグレーター」「シリコンベンダー」「生成AIモデル提供企業」の5つのセグメントにおいて、パートナー企業と共にハイブリッドAIを推進している。今回の発表では、日本HPが旗振り役となり、新たに「HPハイブリッドAI推進コミッティ」を設立し、Copilot+ PCおよびAIワークステーション向けのエコシステムを構築していく新しい取り組みが紹介された。


 ハイブリッドAIを導入したいという企業向けに、ライセンスやコードの無償提供や研修プログラム、ハードウェア仕様のアドバイザリーサービスなどを含む、5つのプログラムを今春から始める。


 これに先駆け、今回新たにAIスタートアップのUpstage AIとの戦略的アライアンスも発表した。Upstage AIのアプリ/ソフトウェアを、日本HPのAIワークステーションにバンドルした統合パッケージ「SolarBox」を今春から販売する。日本HPは、ハードウェアの提供だけでなく、アプリの構築支援やトレーニングなどまで一気通貫で提供する。


 Future of Workで2つ目の柱が「ハイブリッドワークの深化」だ。昨今はオフィス回帰の動きが強まり、これまで以上にどこでもネットワークに手軽につながることが重要になる。同社は既に「HP eSIM Connect」を提供しており、現時点での契約法人は3000社にも及ぶという。


 今回新たに「国際ローミング」「副回線キャリア」「MDMセキュリティ」をバンドルした「HP eSIM Connect PLUS」を提供し、さらに利便性の向上を図る。


 また、最も狙われやすいエンドポイントのセキュリティを向上させるため、HP Wolf Securityを全てのデバイス/ワークフローに組み込み、外部の脅威から企業を守る支援を行う。加えて、PCが壊れたら直すだけでなく、故障の予防検知をしてお知らせをする戦略的なサポートも強化していく。


 3つ目の柱は「ものづくりDXの強化」だ。具体的な取り組みとして、建設業界のDXが紹介された。


 建設業界には、人手や後継者不足、資材の高騰、環境問題といったさまざまな課題がある。これらを解決するための1つの方法が、既にある建物など、既存のアセットを活用する方法だ。ただし、そのためには紙の図面をCAD化していく必要がある。


 現在はここに膨大な人手がかかっている状況だが、同社はAIのテクノロジーを使い、紙の図面をベクター変換する技術「HP AIベクタライゼーション」を開発し、これにより作図の工数を大幅に減らすことができるという。


 HP AIベクタライゼーションは現在はクラウドAIとなっているが、近い将来、同社のワークステーションで動くローカルAIになるとのことだ。


 また、「HP Build Workspace」というクラウドのプラットフォームにCADデータをアップロードすることで、設計から施工まで、一気通貫で情報管理/共有が行える。


 ローカルAIとクラウドAIを活用したハイブリッドAIの代表例といえる取り組みが、建設業界のDXにて行われている。


●「キーボード型デスクトップPC」を含む新製品も多数登場


 Future of Workを実現する同社のソリューションとして、2026年のパーソナルシステムズ事業方針の発表と新製品も多数公開された。2026年は、日本HPの次世代AI PCのラインアップを大幅に拡大し、これまでになかったユニークな製品も展開する。


 いずれも、1月に開催された「CES 2026」で発表されたものだが、今回正式に日本での展開が明らかになった。


 まずは法人向けPCだが、「HP EliteBook X2 G14 AI PC」は構成によっては1kgを切る軽量ノートPCで、大容量バッテリーモデルなら最長29時間のバッテリー駆動が行えるという。キーボードは交換可能となっており、メンテナンスのしやすさにも注力している。


 付属する65WのACアダプターも大幅に小型化されている。希望販売価格は、通常モデルが51万400円から、ディスプレイを回転させられる2in1タイプの「HP EliteBook X Flip G2i 14 AI PC」は52万5800円からで、いずれも2月6日に発売される。


 これまでになかったユニークな製品として紹介されたのが、「HP Eliteboard G1a Next Gen AI PC」だ。パッと見はただのキーボードだが、CPUやメモリなどが内蔵されており、デスクトップPCとして利用できる。


 持ち歩けるデスクトップPCとして、オフィス内の好きな場所で働けるデバイスを目指したとのことだ。販売開始は3月中旬の予定で、希望販売価格は43万8000円となる。


●コンシューマー向けはAMD/Intel/Qualcommの最新CPU搭載モデルを用意


 コンシューマー向けPCとしては、「HP OmniBook X 14 AI PC」シリーズが登場した。薄型ながら耐久性に優れたノートPCで、米軍のMIL-STD-810Hに定める20項目の耐衝撃/耐環境要件を兼ね備える。


 QualcommのSoCを搭載したモデルであれば、最長38時間の長時間バッテリー駆動が可能となる。ディスプレイは有機ELで、最大120Hzの可変式リフレッシュレートにも対応する。それぞれの価格と発売時期は以下の通りだ。


・HP OmniBook Ultra 14 AI PC(インテル):31万9000円から 2月下旬


・HP OmniBook Ultra 14 AI PC(Qualcomm):26万9500円から 3月下旬


・HP OmniBook X Flip 14 AI PC (インテル):22万9900円から 2月下旬


・HP OmniBook X Flip 14 AI PC (AMD):22万円から 2月下旬


・HP OmniBook X 14 AI PC:22万円から 5月以降


 ゲーミングPCは、新たにHyperXをマスターブランドとし、PC/ディスプレイ/周辺機器/ソフトウェアまでを一貫して提供する。


 新しいHyperXブランドとして「HyperX OMEN MAX 16 Gaming Laptop」「HyperX OMEN 15 Gaming Laptop」が展開される。HyperX OMEN MAX 16 Gaming Laptopは4月中旬以降(価格は未定)、HyperX OMEN 15 Gaming Laptopは2月中旬の発売で、24万6500円からとなる。


 2026年は、新製品を含む次世代AI PC、ワークステーションをコアとしながらも、“深化”したeSIM ConnectやHP Sure View、HP周辺機器などを通したエコシステムを構築し、より一層ハイブリッドAIの定着を目指すと同社はアピールする。


●セキュリティに関する新ソリューションも登場


 日本HPおよびHPは、20世紀の終わり頃からエンドポイントセキュリティを重視してきた。1999年にトラステッド・コンピューティングの提唱とTPMの標準化を推進し、2003年には初めてのTPM搭載PCを出荷、2013年には自己修復BIOS(UEFI)、2024年にはPCの電源が切れていてもデータを消去できるPCをリリースし、2025年にエンドポイントセキュリティ統合管理ソリューションを提供してきた。


 同社のワークフォースソリューション事業本部 セキュリティエバンジェリストの木下和紀エドワルドさんによると、近年はエンドポイントの利用範囲と役割が変化してきているという。


 従来のエンドポイントは、社内のネットワークに守られながら使うものだったが、ハイブリッドワークの普及により、自宅やカフェなど、組織の保護がない場面で使用するケースが増えている。結果、攻撃にさらされるリスクが増えているという。


 また、これまでのエンドポイントは単なる作業ツールだったのに対し、現在はクラウドに接続したくない情報をローカルAIで使うといったように、取り扱うデータの種類も変化してきた。重要なデータと機能を保持するための、中核的な存在になってきている。


 データの種類が変化するのに合わせ、攻撃する側も高度になってきており、アカウント情報の窃取、BYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)を使ったハードウェアへの寄生など、複雑な攻撃が増えていると指摘した。


 高度化した攻撃に対応するためには、エンドポイントでも多層防御が必要不可欠になる。同社が提案するセキュリティソリューションでは、サプライチェーンの保護、ハードウェア寄生や暗号強化、レジリエンス・ソフトウェアによる脅威隔離、エンドポイントセキュリティ統合管理などを包括的に備える。


 新機能としては、万が一エンドポイントが攻撃を受けていても、安全にVPNなどの社内リソースを利用できるよう、端末内に絶対領域を作る「Sure Access」、UEFIをリモート統合管理可能な「Sure Admin」が発表されている。


●分かりやすさを重視するカスタマーサポート


 カスタマーサポートにおける同社の課題解決と、Future of Work実現のための取り組みについても紹介された。


 同社が抱えるカスタマーサポートの課題は、労働人口の減少による採用の困難さがある。特に近年はAIやソフトウェアへの関心が強く、保守や技術サポートを担うハードウェアエンジニアを希望する人材が減少しているという。


 また、ビジネスモデルやサポートニーズの多様化により、サポート品質を維持しながら提供することが難しいだけでなく、昨今の物価高により、内部努力による効率化だけでは限界が来ているとのことだ。


 抜本的な構造改革によって目指すカスタマーサポートの将来像として、AIエージェントによるプロアクティブな対応を挙げた。AIが担う領域と、人が価値を生み出す領域の境界線を明確にし、AIの解答を一定かつ柔軟にし、人間は共感が必要な案件や個々の要望に耳を傾け、顧客価値を高める提案に集中していくとする。


 具体的な取り組みとしては、顧客が必要なサポートを即座に得られるように、時間や場所にとらわれない働き方を支援する。米国の本社では既にAIを使った電話サポートが導入されており、これから日本語化のテストが行われていくという。一定の品質を維持するため、データベースをバックエンドに置き、対応のばらつきを低減していく。


 ハードウェアについても、ユーザー自身が簡単に修理できる製品が拡大されていく予定となっている。


 同社内部では、AIを活用したオペレーションの効率化、保守作業時間の短縮による稼働率の向上を図り、人間が担う領域に注力することで、顧客の商売価値最大化に貢献する。


 日本HPが国内で独自に行っている取り組みとして、公式HPからサポート窓口の電話番号をすぐに分かる場所に記載したり、公式LINEアカウントに製品の登録を行い、FAQや動画といったセルフヘルプの情報をすぐに確認できるというものが挙げられた。同様に、チャット窓口や電話窓口への動線も分かりやすく用意されている。


 日本の顧客に特化したWebポータル「HP LIVEサポートナビ」には、全てのサポート電話番号が1ページにまとまって記載されており、スマートフォンからアクセスすれば、ワンタップで問い合わせ窓口まで繋がる。予約サービスや修理受付、修理状況なども確認可能だ。


 グローバルで進めている取り組みには、「HP Digital Passport」がある。製品の底面にあるQRコードから購入した製品情報、クイックスタート、サポート、推奨アクセサリー、保証確認といった情報が閲覧可能な専用ページにアクセスできる。


 現時点では日本の製品に対応しておらず、英語のページに飛ぶようになっているが、日本製造分については、順次対応予定となる。



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