【プロレス】藤波辰爾から見たウルフアロンの新日本デビュー戦は何点? 「僕自身も技を受けてみたい」と対戦に意欲

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2026年01月26日 07:10  webスポルティーバ

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藤波辰爾インタビュー 前編

【入場から感じた覚悟】

 東京五輪の柔道男子100キロ級で金メダリストを獲得したウルフアロンが、新日本プロレス1.4東京ドーム大会で衝撃的なデビューを飾った。

 NEVER無差別級王者で、ヒールユニット「HOUSE OF TORTURE」のEVILを三角絞めで失神TKOに追い込み、初陣でベルトを奪取した。プロレスファンだけでなく、広く世間にも届いた劇的なデビュー戦を、新日本の旗揚げメンバーで昭和から平成にかけ同団体を支えた藤波辰爾は現地で観戦。ウルフへの評価と今後への期待を明かしてくれた。

 まず藤波が衝撃を受けたのは、ウルフの入場。頭を丸めた姿にプロレスで生きる覚悟を感じたという。

「僕もそうだったけど、ウルフアロンに対するファンのイメージは、デビュー前までの長髪だったと思う。それが、頭を丸めて登場した。そこに、柔道時代の過去をすべてかなぐり捨ててプロレスで生きていく覚悟を見ましたね」

 新日本では、入門した練習生は頭を坊主にするのが掟となっている。それは藤波が16歳で入門した日本プロレスからの伝統で、藤波も頭を丸めて練習を始めた。

「僕の場合は大分から出てきて、誰も知らない、中学を出たばかりの16歳だった。だから頭を丸めることに何の疑問もなかったし、むしろそうすることで『プロレスラーになれた』といううれしさがあったんです。

 だけど、ウルフは金メダルを獲るまで柔道を極めた男。入門時に背負っていたものは、当然ながら僕なんかとはまったく違う。それなのに、普通の練習生と同じように新日本の伝統にならったところに、並外れた覚悟を感じました」

 さらに、丸刈りのウルフに自らの過去を重ねたという。それは1988年4月22日、沖縄・那覇市の奥武山公園体育館でアントニオ猪木へ反旗を翻した"飛龍革命"だった。

「僕もあの時に、猪木さんの前でハサミを出して髪の毛を切りました。あの時は前髪を切っただけだったけど(苦笑)。ウルフの丸刈りを見て、『やっぱり、この世界では髪を切ると覚悟がわかりやすく伝わる伝統があるのかなぁ』と思いました。僕は、猪木さんへの思いを断ち切る覚悟で切ったからね。勝負師というのは、ここぞという時にそういう行動が出るものなのかもしれない」

【猪木イズム、棚橋弘至の技も継承】

 まっすぐ一点を見つめてリングに向かう姿には"猪木イズム"を感じたという。

「猪木さんは、入場でお客さんに手を振ったり、アピールするレスラーがいると激怒していた。『勝負に向かう時に、お客さんにアピールするやつがどこにいるんだ!』と。猪木さん自身、そんな入場は一切やらなかったし、僕もその教えを受けているから今でもできません。

 同じようにウルフも、真っすぐ前だけを見つめてリングに向かっていましたね。勝負に挑む姿勢を感じましたよ。天国の猪木さんがあの姿を見たら、たぶん『合格だ』と言ってくれたんじゃないですか」

 入場時、花道へと続くステージに姿を現したウルフは、まず最初に身に着けた柔道着を脱ぎ捨てて、黒のショートタイツ姿へと変貌した。その"黒"は、師匠であり創始者である猪木の色でもある。

「柔道着を脱ぎ捨てることで、プロレスラーのウルフアロンになったことを印象づけましたね。何より、黒のショートタイツは猪木さんの象徴であり、新日本の伝統。あの黒を見た時に、猪木さんがリング上で見せていた技、怒り、形相などがプレイバックしました。

 あれは"黒"だから締まって見えたのかなと。もし、猪木さんが青や赤のタイツだったら、あの闘魂は伝わらなかったと思います。プロレスにとって色は、お客さんに与える印象が大きい。ウルフも黒だったから、技が締まって見えたし、気迫がストレートに伝わってきたように思います」

 試合では、序盤こそ"もたつき"も感じたようだが、その後の適応力に目がいった。

「初めての四角いリング。しかも初めて履くリングシューズ。柔道とは相手との距離感も違うから、最初はやりづらそうに見えました。だけど、すぐにペースをつかんだのには驚きましたよ。特に、組み合ってから投げたあとの動きが早かった。並外れたセンスを感じましたね」

 技のなかで藤波が驚嘆したのは、トップロープからのハイフライフロー。同じ大会で引退した棚橋弘至の必殺技を受け継ぐという思いを込めた飛行だった。

「コーナーポスト最上段に上るのは勇気がいるもの。目線の高さは3メートルぐらいになるから、怖くて普通なら目が回るはずです。飛ぶ瞬間には『体勢をどうしたらいいか?』などと考えてしまってフラつく危険もあるけど、彼は見事に飛んだ。練習してきたのかもしれないけど、実際の試合でなかなかできるものじゃないですよ」

 そして最後は、柔道技をアレンジした三角絞めで、EVILから失神TKOでの勝利を飾った。

「最後の技も、柔道で培った技を見事にプロレス技として進化させていた。入場から最後まで、デビュー戦としては合格じゃないかな。デビュー戦だから、普通は試合のどこかでお客さんがため息をつく場面があっても仕方がない。だけど、彼は終始、お客さんをリングに釘づけにした。採点すれば100点満点です」

【「IWGPチャンピオンも夢ではない」】

 藤波は、対戦したEVILにも賛辞を贈った。

「負けたとはいえ、ウルフの技をすべて真っ向から受けきったEVILも存在感を見せましたね。ただ、ウルフの技のキレには、闘いながら度肝を抜かれたと思う」

 一方で、ウルフの今後の課題も挙げた。

「もっとスピードが必要だと思います。投げひとつにしても、どうすればさらに速く投げられるかを研究してほしい。場外戦でも対応力が必要になると思う。

 ただ、それは場数を踏めば克服できるはずだし、あの鍛え上げられた体がすばらしい。特に下半身。太ももなんてパンパンで、さすがだと思いました。これから試合を重ねるごとに体型は変わっていくはずだけど、彼自身が考えて動きやすいベストな肉体を追求してほしいです」

 ウルフはデビュー前から、新日本の最高峰のベルトで藤波も腰に巻いた「IWGPヘビー級王者」を最終的な目標に掲げている。

「その可能性はあるんじゃないかな。彼は、プロレスに対する精神が違う。『プロレスが好き』という、何ものにも変えがたい今の気持ちを持ち続ければ、IWGPチャンピオンも夢ではないと思う。そのためにも、デビュー戦で抱いた緊張感、プロレスラーとして生きる覚悟を持ち続けてほしいですね」

 最後に藤波自身、ウルフと対戦したい気持ちはあるのかを聞いた。今年デビュー55周年を迎えるドラゴンは「闘ってみたいね」と即答した。

「あの試合を見て、僕自身もウルフと組み合ってみたくなったし、技を受けてみたいと思いました。またひとつ、夢ができましたよ」

 藤波vsウルフが実現したら、どんな攻防がリングで繰り広げられるのか。その日が来ることを楽しみに待ちたい。

(後編:棚橋弘至の引退セレモニー裏話 すべてを出しきった「社長」にエールを送った>>)

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