
「ピュアモルト」ブランドをリニューアル
「もともと『ピュアモルト』はどちらかといえば若い方というより、ウイスキーの熟成樽の廃材を軸に使っているということもあって、父親世代の方に買っていただくことが多く、私たちも父の日のギフトといったプロモーションをしたりしていました」と、三菱鉛筆株式会社商品開発部の藤川恵汰さん。まだ、ユーザー側も高級ボールペンはギフト商品だと捉えており、そして、ジェットストリームもフリクションボールもなかった時代に「ピュアモルト」シリーズは始まりました。
「三菱鉛筆では、2023年に『旅する素材』という環境素材をテーマにしたプロジェクトを始動し、『ピュアモルト』もその中の1つとして考えていたのですが、このほかにも、木軸だけでもカリモク家具さんとコラボしたものなどいろいろな商品を出していく中で、従来の『ピュアモルト』のまま、ただ雰囲気だけを新しくしても、ほかの新しい製品との乖離が生まれてしまうんです。
そこで、今回コアとなる『ウイスキーの樽を使う』という価値は変えずに、例えば今までボール径は0.7mmしかなかったため0.5mmを作ってみようとか、世界観を表現するようなシーン画像を用意してみようなど、お客さまにとってもう少し選びやすいような要素を新たに加えることで、50〜60代の方だけではなく、20〜30代の方にも手に取っていただけるようなものにするという方針を立て、ブランドのリニューアルを始めました」と藤川さん。
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ジェットストリームのリフィルを搭載した「ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングル」

そのブランドリニューアルで新たに発売されたのが、新設計の「ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングル」と、新色の「ピュアモルト ジェットストリームインサイド 多機能ペン 4&1」。
特に、「ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングル」は、軸全体がサントリーのモルトウイスキーの熟成樽を素材にしていて、中にはジェットストリームのリフィルが入っているという、まさにシリーズのフラッグシップにふさわしいモデルです。
「今回のモデルは、ジェットストリームインクの使いやすさに寄せていくようリファインした設計になっています。
これまでのピュアモルトのモデルは、ジェットストリームのリフィルが基本的には入らないため、内部の機構を一から設計する必要があり苦労しました」と藤川さん。
細部まで「樽」を意識したデザイン

個人的に、初期の「ピュアモルト」シリーズのラインアップでも、軸全体が樽素材で作られているシングルタイプのモデルを愛用していたこともあって、今回のジェットストリームが入るシングルタイプの発売はうれしいことでした。
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「これは、細かすぎてプレスリリースなどでもお伝えできていないのですが、クリップの上端の輪になっているところを少し凹ませてありますよね。これ樽のフタをイメージしているんです。樽のフタは中に落とし込む形になるのを、この凹みで表現しています。
本当の樽のような形にしてしまうと、ペンとしては太くなりすぎるので、このようにさりげなく作って、お客さまに気が付いてもらえるとうれしいです」と藤川さんが、細部を説明してくださいました。
高級感を演出するノックボタンの押し心地

機能面では、ノックボタンの押し心地、押した時の感触に特徴があります。押し始めは軽く押し込めるのですが、最後のところで少し重くなります。その感触が高級感というか、いいものを使っているという印象につながっている感じがするのです。
「このノックボタンの感触を実現するために、通常、ペン先の方だけに入っているスプリングを後端にも入れてあります。また、先端部のスプリングもこの機構のために少し形を変えてあります。
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おそらく、ボールペンの高級感というのは素材だけでなく、こういう実際に使う部分の感触から感じるものなのでしょう。クリップがつや消しになっているのも含め、細かいところでさまざまな「よさ」に気が付けるようになっているわけですね。
さらに、木軸ならではの使っているうちに色つやが変化するという楽しみもあります。通常のジェットストリームのリフィルが使えるので、個人的には、「ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングル」に1.0mmのリフィルを入れたいと考えています。
「ピュアモルト」の世界観に近づけた「ピュアモルト ジェットストリームインサイド 多機能ペン 4&1」

「ピュアモルト ジェットストリームインサイド 多機能ペン 4&1」は、従来の4&1モデルの新色なので、製品としては、グリップがピュアモルトの樽材という部分以外に大きな変化はありません。
ただ、ブランドとしての「ピュアモルト」のリファインに合わせた色の選択や、見せ方の変更によって、これまでとはまた違った魅力のペンになっているように見えます。
「デザインのベースはジェットストリームの4&1のモデルなのですが、今回、ピュアモルトシリーズの中で4&1を新しく出していくにあたっては、シリーズのエッセンスである素材や樽らしさなどをグリップに落とし込んでいくのがベストな提案になるのだろうと思いました。
そこで、木目で樽の持ち手の部分を感じてもらったり、手にした時の木材の温かみを感じてもらったりすることなどでピュアモルトらしさを伝えたいと考えました」と、4&1の開発を担当された商品開発部の鈴木雄大さん。
「ジェットストリーム プライム」ではなく、通常ラインの4&1がベースになっているのは、使いやすさを優先したということなのでしょう。
「4&1シリーズは、グリップ部分を変えるだけでいろいろな形に展開ができる、いわゆる汎用性があるプロダクトなので、私たちも1つの資産として考えています」という藤川さんの言葉通り、実用品としての4&1に多くのバリエーションがあるのは、ユーザーとしてもうれしいものです。
実際、筆者の場合、グリップがゴムだと長く使っているとベタついてきて苦手なので、グリップ素材が木で、しかもウイスキー熟成樽の廃材で出来ているというだけでも、使いたいと思うのです。

「軸色は、木の風合いと合うようにだったり、ウイスキーとの関連付けのようなところで選びました。『フォレストグリーン』は、オークの森をイメージして、森がもつ落ち着きといったイメージを表現しています。
『アンバーオレンジ』は、分かりやすく言うと、ウイスキー自体の色と、ウイスキーを飲んでいるときの時間や空間、どこか温かみのあるような雰囲気や、木自体の温かさなどを落とし込んでいます」と鈴木さん。
筆者も、濃い色のグリップとの組み合わせで、落ち着きと華やかさを合わせ持ったよい色だと感じています。
サステナビリティだけでない、使ってうれしい製品作り

もともと隠されていたわけではないのですが、今回、サントリーのピュアモルトウイスキーの熟成樽の廃材を使っていることを前面に打ち出しているのも、ブランドリニューアルの一環です。
カリモク家具との協業なども含め、他社との協業も1つの方向として前面に出していこうということだそうです。
「ピュアモルトも環境に配慮した素材を使ったシリーズですが、環境問題やサステナビリティを意識した活動は、1社だけで何とかするより、さまざまな会社と協力して取り組んでいくのが、正しい方向性だと思っています。
他社と協力して社会問題全体に目を向けながら、環境に配慮した製品を1人でも多くの方に手に取ってもらえるよう積極的に打ち出していきたいと考えています」と藤川さん。
三菱鉛筆に限らず、文具業界はサステナビリティや環境保護を考慮した製品作りを比較的早くからしている印象があります。それこそ、ピュアモルトシリーズが始まった2000年頃から、そういう動きが活発になっていった気がします。
「再生材を使用した製品は、プラスチック製や木製など、さまざまなものがすでに発売されています。
そのため、今回のリファインでは、しっかり本物の材料を使って、細部までこだわるだけではなく、その見せ方も工夫して『あなたの生活にこのような変化を提供します』といったメッセージを伝えることで、そのストーリーに共感していただき、永く使いたいと思ってもらえるようにすることを意識しています」と藤川さん。
今回のピュアモルトの新製品が魅力的なのは、それが単なる販売促進企画ではないということも大きく働いているのかもしれません。
納富 廉邦プロフィール
文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。(文:納富 廉邦(ライター))

