
mineoを展開するオプテージは、au回線を使ったフルMVNOに参入することを発表した。サービス開始は、2027年度下期を予定。KDDIには正式に接続の申し入れをしており、ここから2年弱の時間をかけ、音声交換機(IMS)や加入者管理機能(HLR/HSS)の準備をしていく。サービス開始に先立ち、参入表明をした格好だ。
当初はau回線でスタートするmineoのフルMVNOだが、その後はマルチキャリアに対応していく方針。フルMVNOの本領を発揮できるのは、このタイミングといえる。一方で、単に「音声フルMVNO」といっても、ユーザーへのメリットが見えにくいのも事実。どのような恩恵があるのか。ここでは、そのインパクトを解説していきたい。
●27年度下期にスタートする音声フルMVNO、今分かっていることは
オプテージは、2027年度下期から日本初のau回線を使った音声フルMVNOとしてのサービスを開始する。データ通信のみのフルMVNOはIIJやドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)、ミソラコネクトなどが手掛けているが、現時点で、音声通話まで含めたフルMVNOは日本に存在しない。一番乗りは、2026年11月に「ネオキャリア」のサービスを開始する日本通信になる見込みだ。
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オプテージの音声フルMVNOは、これに続く形となる。日本通信がドコモ回線を利用しているのに対し、オプテージはau回線。同社が“国内初”をうたうのは、そのためだ。一方で、サービス開始は2027年度下期とまだ時間がある。交換機などの設備構築はこれからという段階で、具体的にどのようなサービスに落とし込んでいくのかも、まだ決まっていない。
現段階で分かっているのは、mineoブランドで、コンシューマー向けと法人向け両方にサービスを提供するということ。ネットワークの世代は4GおよびNSA(ノン・スタンドアロン)の5Gになるという。オプテージでmineoを率いるコンシューマ事業推進本部 モバイル事業戦略部長を務める松田守弘氏は、「個人向けのサービスも魅力あるものを作っていきたい」と意気込みを語っている。
また、「(ライトMVNOの)Aプランがなくなるところまでを思い描いているわけではない。(音声フルMVNOのサービス提供後)数年レベルで終わるかというと、そうではない」(同)というように、現行のサービスと音声フルMVNOは、当面の間併存させていく方針も語られている。
では、音声フルMVNOによって、mineoにどのようなサービスが追加される可能性があるのか。フルMVNOという仕組みをひも解いていくと、オプテージがあえて投資をしてまで音声フルMVNOに参入しようとしている理由がおぼろげながら見えてくる。最大の違いは、音声通話のサービスを自社で構築できることや、SIMカードの発行が可能になることだ。
日本で一般的なライトMVNOは、データ通信を行うための「PGW」という交換機を持ち、それをドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのような自身で基地局を敷設しているMNOの「S-GW」に接続する。インターネットなどの外部ネットワークに抜けるための出入口の部分が、MVNOを経由する形になるとイメージすれば理解しやすい。ユーザーのデータ量やそれに基づいた料金などを管理するのも、MVNO側だ。
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●音声フルMVNOならではのサービスとは? 音声の新サービスやローミングも可能に
ただ、この接続形態だと、SIMカードやeSIMプロファイル自体はMNOが発行したものをそのまま利用しており、加入者がどの基地局と通信しているのかといった位置情報の管理もできない。運用ハードルは低くなる一方で、SIMカードだとMNOから仕入れて在庫を持っておかなければならず、自社設備で音声通話やSMSなどを制御できない。これを可能にするためには、加入者管理機能をMVNOが持つ必要がある。
現状のライトMVNOでも、音声通話やSMSを提供しているのでは……と思われるかもしれないが、これは卸契約を結んでいるためで、MVNO側は運用や通話料の管理などができない。形態としては、MNOから来た請求書を、そのままユーザーに転送しているようなものだ。通話料やSMSの料金計上のタイミングがMNOより遅いのは、こうした事情がある。
料金はもちろん、提供できるサービスもMNOが用意しているものに限定される。MNOが開放していないものは利用できない上に、MVNO側が何か新しい通話サービスを始めたいと思っても、実現が難しくなる。一例を挙げると、SMSの発展形であるRCS(Rich Communication Services)の提供が大手キャリアよりも遅れたのは、そのためだ。
どのような形になるかはまだ分からないが、音声通話を進化させるような新サービスの導入も可能になる。松田氏は「いろいろな機能を自分たちで作っていくことができる」としながら、「(音声やデータ通信という)メディアの枠を超えていきたい」と語っている。通信の秘密などの法規制があるため、実現のハードルは非常に高くなりそうだが、技術的には自前の音声交換機に翻訳サービスや会話要約サービスなどを実装することも不可能ではない。
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また、データ通信の制御もあまり複雑なことができないため、サービス提供には工夫が必要になるという。松田氏は、mineoで提供している速度制限をした上でデータ容量を無制限にする「マイそく」を挙げつつ、「今はライトMVNOの中で実現しているが、ちょっと無理をしながらやっている。違う切り口のものもできるようになる」と語る。
自社でSIMの発行ができるようになり、音声用の交換機も持てば、海外キャリアと接続した国際ローミングも提供可能になる。現状のライトMVNOの場合、音声卸の部分はMNOのサービスとして国際ローミングできた一方で、データ通信は利用できなかった。海外キャリア側からは、MVNOの存在を認識できないからだ。フルMVNOであれば、これが可能になり、よりMNOに近いサービスを提供できるようになる。
●1つのSIMでマルチキャリア接続はMVNOならでは、法人事業の拡大も
こうしたサービス以上にインパクトが大きくなりそうなのは、複数のキャリアの回線を束ねられるところにある。これが加入者管理機能を持ち、自身でSIMを発行するメリットの1つだ。どこか1社のMNOに頼らなくてもよくなるため、あるときはau、あるときはドコモにつなぐといった制御も可能になる。現状でも、mineoはAプラン、Dプラン、Sプランという形でMNO別の回線を提供しているが、音声フルMVNOであれば、これらを1つのmineoプランに束ねることができる。
日本では、大手3キャリアの人口カバー率が軒並み99.9%を超えているため、3社そろって圏外になるケースは少ない一方で、キャリアによってはつながらない場所も存在する。最近では、キャパシティーの問題もあり、キャリアごとの通信品質もまちまち。複数回線を切り替えながら利用できれば、こうした問題を回避できる可能性も出てくる。複数キャリアの回線を束ねられるのは、MVNOならではの強みだ。
オプテージもそれは強く認識しており、au回線での音声フルMVNOを開始した後、別の1社とも接続して、マルチキャリア化を目指していく方針を打ち出している。具体的な協議が開始されたわけではないものの、松田氏としては、ドコモ回線を追加することを想定しているようだ。ドコモは、日本通信向けに音声フルMVNOを実現するためのネットワーク改修を行っている。接続の技術的なハードルは低くなるため、auとドコモの両対応は現実的な計画といえる。
ただ、音声フルMVNOになるためのハードルは高く、電話を提供する各社との相互接続や、警察、消防、海上保安庁といった緊急通報にも対応していく必要があり、時間がかかる。実際、日本通信も接続先との交渉や調整に時間がかかったことを理由に、サービス開始を約半年間延期している。オプテージは、2027年度下期に提供できるのか。
これに対し、松田氏はオプテージに「eo光」で「eo光電話」を提供しているノウハウがあるとしながら、「緊急通報機関との打ち合わせは始めているし、固定でやってきた経験もあるので、そこはしっかりやっていきたいと思っている」と語る。モバイルと固定では、交換機や設備構成に大きな違いはあるものの、相手先との接続という点では経験を重ねている。音声フルMVNOは初めてだが、電話に関しては素人ではないというわけだ。
もっとも、音声フルMVNOを始めたからといって、コンシューマーの回線が急増するわけではないだろう。ライトMVNOとは違い、交換機や加入者管理機能を持つための設備投資も必要になる。MNOへの接続料は引き続きかかるため、ライトMVNOのサービスのような安さは売りにしづらい。オプテージがあえてこの道を選んだのは、法人向けやIoTに活路を見いだしたからだ。
同社は音声フルMVNOと同時に、パートナーのMVNO事業を支援する「MVNO Operation Kit」も発表しており、取締役 常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏は、「売上高を倍近くにしていきたい」と語っている。法人向けで大きく事業を拡大しながら、コンシューマーにも音声フルMVNOの特徴を生かした新たなサービスを提供するというのが、オプテージの新しい戦略といえそうだ。
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