
あいさつはするけど無表情。あいさつをした瞬間、人は無意識にほほ笑むのではないかと思うが、実態はそうではないようだ。
新しいスポーツジムに行ったら
共働きで2人の子を育てているマナさん(44歳)。小さいながらも事務所を経営している。夫も自営業で、比較的、家で仕事をすることが多いので、家事育児は夫の方がやってくれているという。「もともと夫は掃除と料理が好きで、率先してやりたいという。私は洗濯くらいなら……というタイプ。子どもと遊ぶのは好きなんですけどね。だからうちは他の家庭とは少し違うとは思います。私が思いきり仕事ができる環境が整っている」
マナさんは早朝、自転車で出勤する。9時に出勤してくるスタッフと打ち合わせをしたり、取引先との会議などを経て昼過ぎにはいったん休憩。そのときに近くにできたスポーツジムに通うようになった。
「ダンスとかヨガとか筋トレとか、日によってメニューは変わりますが、週に4回は通っています。だいたい似たような時間帯に行くので、同じようなメンバーと顔を合わせますよね。
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「完全に無表情」な人たち
顔が動いてない。そう思って他の人の様子も探ってみると、「よく顔を合わせる人のうち4人が完全に無表情」だった。いずれも30代から40代の女性で、どういう仕事をしているのかは分からないが、いつも忙しそうにやってきて運動するとさっと帰っていくのだという。「先日は筋トレしていたら、そのうちの1人も隣で始めたんです。目が合ったので、こんにちはと言ったら返事はあった。でもやっぱり顔が笑ってない」
その話を事務所でしたら、やはり30代のスタッフが「あ、私も笑ってないかも」と言いだした。
「いちいちあいさつしながら笑うのって疲れると彼女が言うんですよ。いや、人は敵意を持っていない証として、あいさつしながらほほ笑むくらいのことはするでしょと言ったら、首をかしげていました」
自分の方がおかしいのか。マナさんは「無駄に悩んでしまった」と言う。
意味のないことはしない
夫に話しても「オレだってあいさつするときは、たぶん少しだけ笑ってる。少なくとも口角は上がっているはず」と言う。「どうして人は笑わないのか。そうしたら別のスタッフが、『私の友達にもいます。単なる顔見知りだったら、あいさつはするけどわざわざ笑わないという人』と言いだした。どうしてなのかと尋ねたら、『笑う必要がないから』だって。
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あいさつとほほ笑みがセットだと思っていたマナさんは、少なからずショックを受けた。かつて留学した際、エレベーターなどに乗ると、目が合った人はまずニッコリしてきた。
敵意がないことの証明だと聞いたが、日本では無表情でいても怖がられたりしない、言い換えればそれだけ治安がいいということになるのかもしれないと考えたという。
「まあ、今どき、あいさつすらしない人も少なからずいるから、あいさつしてくれるだけいいのかもしれません。それでもやはり言葉を発したらなんとなく表情が緩んだ方が感じはいいですよね」
見た目や自分の印象を極度に気にする人と、どう思われてもかまわないと割り切っている人、人の対応が両極端になっているのかもしれないとマナさんは言う。
会話を避けたい気持ちの表れ?
「考えてみれば、私は別に感じがいい人と思われたいわけではなくて、単純にあいさつと笑みがセットだと思い込んでいたんです。だからといって、今さら、無駄だから笑いませんというわけにはいかない。習慣ですから」ニコリともしない人は、もしかしたらあいさつのその先の会話を避けたいのではないだろうか。それ以上、踏みこんでこないでほしいという気持ちの表れが、“無表情”なのかもしれない。
「確かに無駄口はいっさい叩かない。先日、見ていたらその無表情4人衆の1人がトレーナーと話していたんですが、トレーナーに対しても会話はするけど表情は硬いままでした。トレーニングと関係のない会話はしないぞという雰囲気でしたね」
なんとなく寂しい気はするけど、そういう人だと思うしかないんでしょうねとマナさんはつぶやいた。
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