「くっせえ」遺族の前で言う業者を見て。アイスクリーム屋だった男性が、本気で特殊清掃業と向き合うようになるまで

1

2026年02月13日 09:20  日刊SPA!

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

鈴木亮太さん(画像提供:ブルークリーン)
人の死と“清掃”という形で向き合う仕事を選択した人生。そこには、どのような紆余曲折があったのだろうか。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、詳しい話を聞いた。

◆アイスクリーム屋から特殊清掃業者に転身

鈴木さんは、特殊清掃業者になる前は、まったく別のビジネスをやっていたという。

「今から約10年前ですね。今の取締役の藤田隆次と一緒に石垣島でアイスクリーム屋をやっていました。観光地ビジネスって儲かるんじゃないかって軽い気持ちで始めて、何もわからずやっていたので大ゴケしてしまったんですよね。それで、会社をたたむことになり、次はどういうビジネスをやるべきなんだろうと考えました。そこで藤田に特殊清掃と遺品整理の仕事をやってみないかと誘われたことがきっかけです」

世の中は少子高齢化で、独居世帯の比率が増えていくであろうと言われている。そんななかで……。

「もともと藤田がリフォーム業をやっていて、自分は現場仕事やサービス業をやっていたので、お互いの経験を合わせればできるのではないかと思いました。仕事の内容的にも今後は需要が増えていく。あとは、自分の身内が孤独死をしてしまったという経緯もあり、独居世帯の増加について危機感も持っていました。その時に特殊清掃を依頼して、興味を持っていたというのもきっかけです」

◆“普通のサラリーマンにはならない”という意地

右も左もわからないままの創業。まず最初に始めたことは、他の会社の現場を見学させてもらうことだった。

「特殊清掃の手順や、使う道具や薬品を見て学びました。どういったメカニズムで臭いが落ちるかなど、そこまで考えが行き届いていませんでした。自分で仕事を取ってきて実際に現場を清掃し始めてから壁にぶち当たりつつ、少しずつ試行錯誤していった感じでした。

仕事の取り方は不動産屋への飛び込み営業です。何か清掃業務がありましたらお仕事くださいと、ひたすら不動産屋を回る日々です。また、会社の宣伝も兼ねてYouTubeを始めました。YouTubeもあわよくば仕事になればいいかなという気持ちでした」

その後、特殊清掃の現場を映すのではなく、現場を語るという手法で動画の視聴者がどんどん増えていった。

「YouTubeがきっかけで取材の依頼が入るようになり、特殊清掃業務の仕事もどんどん増えていきました。創業当時は給料も月に数万、良くて十数万ぐらいしか稼げず、合間に夜勤の警備員の仕事をしていましたが、だんだんと食べれるようになってきたんです。その頃はまだ、仕事に対しての“使命感”は持っていませんでした。ただの食い扶持というか。とにかく、就職して普通のサラリーマンにはならないぞという意地だけでやっていたのかもしれません」

◆遺族の前で「くっせえ」非常識な業者を見て決意

しかし、仕事に対してプライドを持ってやるきっかけになった出来事があった。

「定期的に勉強として様々な業者さんの仕事を見学させてもらっていたのですが、その中のひとつに目を疑うような仕事をしている業者がいました。マンションの部屋で起きた孤独死の清掃なのですが、ドアを開けっぱなしにして清掃をしていたのです。踊り場にも臭いが充満しているような状況で、他の住人にも迷惑がかかるだろうと思いました。

防護服を着て中を見学させてもらったのですが、従業員は防護服を着ているのに、遺族の方は防護服を着ずに遺品整理をしていたのです。業者として遺族の方に防護服を貸し出すのは常識だと思うのですが……」

さらにその業者はひどい対応を取っていたそうだ。

「遺族の前で、『うわ、くっせえ』『くっせえ』と言いながら作業をしていました。ほかの業者を見学した時も、荒れた部屋を見ただけで、『この状況だと100万円ですかね』と、何の根拠もない見積もりを出していました。こんな杜撰な対応の会社でもお金を稼げているんだったら、自分たちがもっとちゃんと誠意を持って対応すれば、きちんと稼げるだろうという自信にもなりました」

この出来事がきっかけで、特殊清掃の仕事に向き合うと決めた。

「創業3年目くらいまでは、従業員が3〜4人くらいの規模でやっていたんですけど、広告を出すようになったり、きちんと集客を始めたら、どんどん仕事が増えていき、5年目くらいには従業員が30人くらいの規模になっていました。事務所もスタッフが入り切らないので、2年ごとに引っ越すようになっていて、今思うと計画性はなかったと思います」

取締役の藤田さんとは高校の同級生。友人同士でビジネスをやると揉めると言われているが、いまだに揉めたことはないという。

「現在9年目ですが、創業当時から、お金とか立場とかで絶対に揉めるぞと周りから口を酸っぱくして言われていました。ですが、今のところは一度も揉めたことはありません。というか、意地でも揉めないようにしているというのもありますが、正直、お金とか名誉とかには興味がないんです。僕は仕事に対してやりがいを持って、誇りを持ってやっているので、常に不満がないというか。心が満たされているんですよね。お金だけのために割り切ってやるってのが僕には難しくて、人のため、社会のために役に立っているという実感が、仕事を続けていく上でいちばん重要な要素だと思っています」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

    前日のランキングへ

    ニュース設定