米国に打って出るPayPay 甘くない巨大市場、Visaと探る攻略の糸口は

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2026年02月13日 10:21  ITmedia NEWS

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 PayPayが米国市場に打って出る。米Visaと戦略的パートナーシップを結び、新会社を設立してモバイル決済事業を展開する構想だ。武器はQRコードとNFCの「デュアルモード」。だが米国には、年間1兆ドル超が流れる「Zelle」、アクティブアカウント9000万の「Venmo」、iPhoneユーザーの4分の3が使うApple Payといったサービスがすでに根を張っている。日本で7200万人を獲得したモバイル決済の雄は、この巨大市場で何を武器に戦うのか。


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●QRとNFCの「二刀流」で米国に挑む


 「われわれはモバイルペイメントをやっている。たまたまQRコードが日本では導入しやすかっただけだ」。2月12日の記者説明会で、PayPayの中山一郎社長はこう切り出した。


 PayPayとVisaが同日発表した戦略的パートナーシップの中身は、大きく2つ。日本国内の事業連携強化と、グローバル展開だ。その第1弾として掲げたのが米国市場への参入。PayPayが過半数以上を出資する新会社を設立し、Visaは投資やテクノロジー、人材の拠出に加え、コンサルティングによる支援も行う。


 米国で採る方式は「デュアルモード」と呼ぶ。日本で普及させたQRコード決済に加え、スマートフォンを端末にかざして支払うNFCのタッチ決済にも対応する。Apple Payなどタッチ決済が主流の米国市場を見据えた布陣だ。


 初期ステップとしてはカリフォルニア州などの一部地域からQR加盟店のネットワークを構築し、段階的に展開する方針を示している。対象は在米日本人ではなく、米国の消費者である。


 ただし、具体的なサービス内容や提供開始時期は明かさなかった。州ごとに送金ライセンスの取得が必要となる米国の規制環境もあり、中山社長は「できるだけ早く目指したい」と述べるにとどめた。


●個人消費9倍、だがQRは「不利」──米国市場の現実


 PayPayが米国を狙う背景には、市場規模の圧倒的な差がある。中山社長が説明会で示したデータによれば、米国の個人消費は約2600兆円で日本の約9倍。そのうち現金市場がなお約300兆円残る。デジタルウォレットの浸透率は2024年時点で24%にとどまり、30年には40%に達するとの予測がある。「事業を検討・開始するに十分な市場だ」と中山社長は語った。


 数字だけを見れば、確かに巨大な「余白」がある。しかし米国のモバイル決済市場は、日本とは構造が根本的に異なる。


 主戦場はタッチ決済だ。米国のデジタルウォレットによるNFC取引額は、23年の1790億ドルから28年には4510億ドルへ拡大する見通しとされる。Visaの最高製品・戦略責任者ジャック・フォレステル氏によれば、Visa加盟店における対面決済も79%がタッチで行われているという。


 一方でQRコード決済については、タッチ決済より操作手順が多く、静的QRコードには不正リスクもあると米消費者金融保護局(CFPB)の報告書で指摘されている。PayPayが日本で成功の礎としたQRは、米国では不利な土俵なのだ。


 競合の壁も厚い。銀行アプリに組み込まれた個人間送金のZelleは24年に年間送金額が1兆ドルを超え、登録アカウントは1億5100万に達した。利用の大半が銀行アプリ経由で、スタンドアロンのアプリは取引のわずか約2%にすぎない。銀行インフラと一体化した決済網を、外部から崩すのは容易ではない。


 店頭決済ではApple Payの存在感が際立つ。22年時点の店頭支出は推定1990億ドル、iPhoneユーザーの約4分の3がApple Payを有効化しているとされる。このほかVenmoが約9000万アカウント、Cash Appが月間取引アクティブ5700万人と、いずれも数千万規模のプレイヤーがひしめく。


 中山社長は質疑応答でこうした競合との差別化を問われたが、具体的な方策には踏み込まなかった。フォレステル氏は「米国にはまだ現金決済が残っている。チャンスは巨大だ」と市場の可能性を強調しつつも、競合の多さについては率直に認めた。


●Visaから見たPayPayの魅力──「体験への徹底したこだわり」


 これだけの競合がひしめく市場に、PayPayが単独で乗り込むのは現実的ではない。Visaと組んだのは、その「足場」を得るためといえる。一方で、Visa側からもPayPayは魅力的に映っているようだ。


 フォレステル氏は提携の狙いについて「ローカルで愛されるウォレットブランドを、自国の市場を離れてグローバルに展開できるようにすることだ」と語った。Visaのネットワークにつながれば、PayPayのユーザーは世界1億7500万以上の加盟店で決済できるようになる。消費者は「使い慣れた体験のまま、行動を変えずに使える」とフォレステル氏は繰り返した。


 技術面での連携も具体性がある。Visaが提供する「Flexible Credential」は、1枚のVisaカード(クレデンシャル)にクレジット、デビット、プリペイドなど複数の支払い手段を集約し、アプリ上で切り替えられる仕組みだ。日本では三井住友フィナンシャルグループの「Olive」で先行実装されている。PayPayにもこの技術を適用し、国内の決済体験を進化させるとともに、米国展開の基盤技術としても活用する。


 フォレステル氏は「PayPayの強みは体験への徹底したこだわりにある。ユーザーにも加盟店にも、楽しく信頼できる体験を提供してきた。それを支えるスピードとテクノロジーだ」と評した。Visaにとっても、PayPayとの連携はカードという従来の形にとらわれず、デジタルウォレットやQRエコシステムへネットワークを広げていく戦略の一環に位置付けられている。


●国内7200万人の「天井」、海外展開のもう一つの意味


 では、なぜこのタイミングでの進出なのか。PayPayの登録ユーザーは7200万人を突破し、2024年の決済回数は75億回。日本で行われる決済の5回に1回をPayPayが占める。取扱高はアプリ単体で12兆円、PayPayカードとの連結で15.4兆円に上る。18年のサービス開始時、PayPayが使われる頻度は3242回に1回だった。わずか6年で国民的インフラと呼べる規模に成長したわけだ。


 一方で、世代別の浸透データを見ると、10代後半から40代前半にかけてPayPayの会員数はスマートフォン保有人口に迫っている。コア層はほぼ取り切った状態であり、国内だけで成長曲線を描き続けるのは簡単ではない。


 こうした中で国内事業もVisaとの連携を深める。PayPayカード、PayPay残高カード、PayPay銀行デビットカードという3つに分かれていたVisa関連のカード機能を、Flexible Credentialの技術を使って一体化し、年内の提供を目指す。


 さらにVisaの「QR Connector」を活用し、訪日外国人がVisa Pay(Visaの認証情報をデジタルウォレットに格納し、タッチ決済やQR決済を可能にするサービス)を使ってPayPayの加盟店で支払える仕組みも整備する。PayPayの国内加盟店は1000万店を超えており、インバウンド消費の取り込みにもつなげる構えだ。


 中山社長は「国内を犠牲にして海外に出るということは全くない。事実をちゃんと受け入れながら事業を展開していく」と述べた。海外と国内を切り離すのではなく、Visaのネットワークを共通基盤として両方をつなぐのが、提携の全体像といえる。


●見えない具体策、変わり始めた戦い方


 ただし、説明会では構想の大きさと詳細の薄さのギャップも浮かび上がった。米国事業の開始時期は未定。ユーザー獲得の戦略を問われても、中山社長は「控えさせていただく」と回答を避けた。差別化について問われれば「米国は多様性に富んだ社会だ。その中で選ばれるサービスになりたい」と述べたが、どう選ばれるのかという肝心の問いには答えていない。


 一方、中山社長は自社の変化にも言及している。「これまで自前主義でやってきたが、強い先進的なパートナーとはどんどん組んでいきたい。Visaは最強のパートナーだ」。PayPayにとってVisaとの提携は、国内で築いた成功モデルの延長線上にある挑戦というより、戦い方そのものを変える転換点といえる。


 両社の発表はあくまで「検討を開始することに合意した」段階だ。日本で7200万人を獲得し、決済インフラの一角を占めるまでに成長したPayPay。その実績がVisaを動かしたのは確かだろう。だが米国市場は、日本とは競争環境も規制も消費者の習慣も異なる。QRコードの大量キャンペーンで加盟店とユーザーを一気に広げた日本での成功体験は、そのまま持ち込めるものではない。


 自前主義を捨て、グローバルネットワークの巨人と手を組む。PayPayの米国挑戦は、勝てるかどうか以前に、この会社の戦い方そのものが変わり始めたことを意味しているかもしれない。



このニュースに関するつぶやき

  • ApplePayとGooglePayとPayPalそれに個人間送金のVenmo/CashAppが先行してる。そこにどう割り込んでいけるか不透明だよね。メルカリが米国で大失敗したしPayPayも厳しいのでは?
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