「0円」だらけの店は、なぜ成長できるのか ジモティースポット急拡大の背景

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2026年02月14日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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炊飯器300円、チェア100円の売り場とは

 炊飯器300円、オフィスチェア100円、カーテン0円――。


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 物価高が続いているので、この価格を見ても「なにそれ、ちょっと信じられない。逆に、怪しいわ」などと感じられたかもしれないが、「0円」の表示がズラリと並んでいる店舗がある。ジモティー(東京都品川区)が運営する「ジモティースポット」だ。


 地域のコミュニティー内で、不要品を譲り合える拠点のことで、いらなくなったモノを譲りたい人はココに持ち込むだけで、無料で引き取ってもらえる。譲り受けたい人は、Webサイト「ジモティー」に掲載されている商品を確認して、ココで受け取れるといった仕組みだ。


 冒頭で紹介したように、ジモティーのサイトを見ると、「0円」や「100円」の商品がたくさん並んでいる。「この価格で運営会社はもうかっているの?」などと思われたかもしれないが、ジモティースポットの関連売上(2025年12月期)を見ると、対前年同期比181%増の1億2900万円。


 この数字には、FCロイヤルティーや物販以外の収入が含まれているので、「まだまだ」といった印象があるが、驚いたのは不要品のリユース数(捨てられずに再利用された品物の件数)である。2023年の11万点から、2024年には30万点(約2.7倍)に増加。さらに2025年には、140万点(前年の約4.7倍)に跳ね上がった。昨年の数字を換算すると、2トン車換算で2150台分に相当する。


 拠点数を見ると、昨年の1月はわずか9店舗だったのに、今年の1月は32店舗に。2030年には329店舗を見込んでいるが、なぜこれほど勢いがあるのか。その秘密について、事業責任者の野村康二郎さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンライン編集部の土肥義則。


●ジモティースポット誕生のきっかけ


土肥: まだまだ使えるけれど、不要になったモノを譲り合える店舗「ジモティースポット」が増えていますよね。今年の1月に持ち込んだ人の数は、前年同月比で4.2倍だそうで。引っ越しシーズン前に「これ、使わないから誰かに譲ろうか」といった人が増えているような気もしますが、そもそもなぜこのようなリユース拠点をつくろうと思ったのでしょうか?


野村: 当社は2011年に創業して、「ジモティー」というプラットフォームを運営してきました。オンラインで利用者同士がモノや情報をやり取りしたり助け合ったりしていますが、利用にはある程度のITリテラシーが必要なんですよね。また、CtoC(個人と個人の間で行われる取引のこと)になるので、知らない人とのやりとりが発生する。


 「オンライン上の作業が面倒」「知らない人とのやりとりに抵抗がある」といった人が多かったんですよね。そうした状況の中で、どうすれば多くの人に使ってもらえるのか。リアルの拠点があれば、抵抗なく利用してくれるのではないか。このように考えて、ジモティースポットを立ち上げました。


土肥: 2021年10月、1号店を東京・世田谷区にオープンしましたよね。世田谷区との共同運営で、粗大ゴミとして廃棄されるモノを、無料で持ち込めるようにしました。


野村: リアル店舗では「官民連携」のスキームを導入しました。自治体としては、ゴミの処分費用を抑えるためにゴミそのものを減らしたいという狙いがあります。そのため、地域住民に対して「ジモティースポットを活用してください」と周知してもらいました。


土肥: で、1号店の反響はどうだったのでしょうか?


野村: 実証実験として始めまして、社内では「1日に4〜5人が来ればいいよね」「1人も来ない日もあるでしょ」といった声が出ていました。しかし、実際にオープンしたところ、3カ月で6500点ほどが集まって、そのうち6000点がリユースされました。


●オペレーションに課題


土肥: 3カ月で6500点ということは、1カ月で2000点ほど。1日当たり70点ほどになりますが、大変だったのでは?


野村: 倉庫のようなところで始めたこともあって、常にモノがあふれかえっていました。店を閉める時間になると、倉庫の中にモノを詰め込んで、オープンするときには倉庫からモノを出してきて。自分たちが作業できる場所を確保するために、モノを出したり入れたりしていました。当初、実証実験は6カ月の予定でしたが、あまりにも反響が大きかったので、1年ほど延長したんですよね。


 毎日、たくさんのモノが持ち込まれる。と同時に、リユース率も高い。まだまだ使えるモノでも処分に困っている人は多く、またそれを使いたい人も多いのではないか。世田谷店での取り組みは初めてのことだったので、オペレーションなどの課題はたくさんありましたが、それを改善すれば事業として大きくできるのではないか。このような仮説を立て、2号店に向けて動き始めました。


土肥: オペレーションの課題について、聞かせてください。


野村: 現在は、不要になったモノを店舗に持ち込んでもらって、まずスタッフが再利用できる状態か、店頭に並べられる商品かどうかを確認するんですよね。問題がなければ、タブレット端末に商品情報を入力し、その内容が自動的にWebサイト「ジモティー」に掲載される。そして、商品に貼るQRコードを発行して、それを張り付ける。この作業が終われば、商品を陳列するといった流れですね。


 ですが、実証実験のときは、持ち込まれたモノをチェック……というよりも、「そこに置いておいてもらえますか」といった対応でした。ジモティーへの投稿も自動ではなかったので、スタッフが手動で行っていました。現在は、売れ筋の商品はココに、大きいサイズの商品はココに、といった具合にルールを設定していますが、当時は「とりあえず、ココに置いておくか」といった対応だったんですよね。


 いま、振り返ると、それも仕方がなかったと思うんです。当社にとって初めての試みだったので、なにをすればいいのかよく分からなかった。お客さまの声を聞いて、どこにニーズがあるのか、課題はどこにあるのか、改善すべきポイントはどこにあるのか。複雑なオペレーションではなく、簡素化するにはどうすればいいのか。こうしたことを検証していました。


 なぜ簡素化にこだわったのかというと、将来的には「地域での雇用」を考えていたから。オンライン上の作業に不慣れな人でも、持ち込まれた商品をジモティーに掲載して、店頭で販売できるようにしなければいけません。そのために、できるだけ簡素化していきました。


●大型店が好調の理由


土肥: ジモティースポットを事業として、さらに大きくできる。このように考えたターニングポイントはありましたか?


野村: 2024年4月に、神奈川県の川崎市に「川崎菅生店」をオープンしました。売り場面積は約350平方メートルで、これまでの店舗と比べて、3〜4倍の広さ。初めての大型店だったので、社内からは「それだけ大きくして、不要品は集まるのか」「集まったとしても、それをリユースできるのか」「これまでの小さな店舗では順調だったけれど、これだけ大きな規模の店だとうまく回らないのではないか」といった不安の声がありました。


土肥: で、結果は?


野村: 2025年の持ち込み点数は18万7500点にのぼり、全店でトップでした。うち94.3%がリユースされ、ゴミの削減効果は638トンに達しました。なぜ、これほどの反響があったのか。繰り返しになりますが、それまでは小規模の店舗ばかりだったので、お客さまは「ここはどんな店なの?」「商品を買い取ってくれるのかな」などと感じ、認知が広がっていなかったんですよね。


 店舗の規模を大きくしただけでなく、外観に「地域の不要品持ち込みスポット」という文字を大きく掲げました。そうしたことで「あ、ココはそういった店舗なのね。じゃあ、家にある不要品を持ち込んでみよう」といった人が増えたのかもしれません。


 その後、どういった反響があったのか。「持ち込み点数も多く、リユース率も高い」ということで、全国の自治体から「ウチにも、出してくれないか」といった相談が相次ぎました。視察に来られる自治体も多かったわけですが、話をよく聞くと、地域の住民が「ウチの街にもジモティースポットをつくってくれないか」といった声が多いことが分かってきました。


 大型店での成果、自治体からの視察、住民からの声――こうした動きが生まれたことによって、このビジネスモデルはまだまだ大きくできるのではないか。小さな店舗でも運営できて、大きな店舗でも循環できる。将来的に、もっと増やせるのではないか、といった未来が見えてきました。


土肥: ふむふむ。ただ、気になるのは売り上げの数字なんですよね。ジモティースポットの関連売上は1億2800万円なので、ちょっと物足りない。持続的に運営するには、どういった課題がありますか?


野村: 店舗を運営していくために、人材を雇用したり、家賃を払ったりしなければいけません。そのためには売り上げを伸ばすことも大事ですが、利用者をもっと増やしていきたいと思っています。その利用者を増やすためには、認知度を向上させなければいけません。


 ジモティースポットのようなサービスは、これまでになかったので誤解されることも多いんですよね。例えば「リサイクルショップですか?」とか「買い取ってくれますか?」といった声はまだまだ多い。リユースの拠点であることの認知は広がっていないので、そこをなんとかしていかなければいけません。


●欲張りな場所


土肥: ジモティースポットがどんどん伸びている。売り上げはまだまだだが、将来性がありそうだ。となれば、他社も同じようなサービスを始めるのでは?


野村: このビジネスモデルを真似るのは、難しいのではないでしょうか。リアルの店舗だけは成立しませんし、プラットフォームが強いだけでもダメですし、自治体の協力も欠かせません。この3つがうまく回ることで、不要品の持ち込みが増え、リユース率が高くなって、ゴミの削減につながっているのではないでしょうか。


土肥: 2030年に300店舗を超える目標を掲げていますよね。そのときには、店舗はどのような形になっているでしょうか?


野村: 拠点数を増やすだけでなく、店舗の面積がどんどん広くなっているかもしれません。いまはリユースを中心に手掛けていますが、サービスをもっと幅広く手掛けていきたいですね。例えば、リサイクルであったり、リペアであったり。


 あと、地域雇用にも貢献できればと考えています。例えば、昔は靴職人として働いていた人がいて、そういった人たちは、リペアの分野で活躍できる場を提供できればと考えています。


土肥: ゴミを減らし、仕事を生み、地域に人の流れを生み出す。そう考えると、0円の商品棚は、なかなか“欲張りな場所”かもしれませんね。本日はありがとうございました。


(おわり)



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