やっぱりヘンだよ「7条解散」! 「党に有利だから解散」は他国ではありえない!

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2026年02月14日 08:40  週プレNEWS

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1月23日に衆議院の解散を表明した高市早苗首相。真冬の選挙戦となり、街頭演説ではコート姿で臨んだ


1月23日に衆議院の解散を表明した高市早苗首相。真冬の選挙戦となり、街頭演説ではコート姿で臨んだ


解散から投票日までわずか16日。選挙戦はたった12日。史上最短で行なわれた衆院選は本当に必要だったのか? 高市政権の高支持率を背景に強行された超短期選挙を、「今なら与党が有利だから」って理由で許していいの!?

【写真】雪の中に設置された衆院選ポスター

*  *  *

【解散から投票日まで史上最短!"真冬の衆院選"】

異例ずくめの衆院選だった。1月23日、通常国会の開会日に高市早苗首相が衆議院の解散を宣言。そこから2月8日の投開票日まで、わずか16日間。1月27日の公示日から数えれば、選挙戦は12日間。これは戦後史上、最短。2月の衆院選も史上3度目だという。

だが、一年で最も寒いこの時季に、しかも東北や日本海側の一部では記録的な大雪に見舞われている最中に、なぜ最重要課題である物価高対策や新年度予算案の審議を後回しにしてまで、解散・総選挙を行なう必要があったのか?

さらに、各地で準備の遅れが指摘されるほどの超短期日程でなければならなかった理由はなんなのか?

この点について、比較政治学が専門の立命館大学法学部教授・小堀眞裕氏は、強い疑問を呈する。

「日本が手本にしたというイギリスでは、日本の衆議院に当たる庶民院の解散から投票日まで、最短でも『25労働日』(土日、祝日を除いた25日間)を空けることが法律で義務づけられています。

今回の高市政権の解散をこの基準に当てはめると、投票日は最短でも3月1日になる。今回のような日程をイギリスで行なえば、明確な法律違反です。もちろん、日本の法律上は16日間でも違法ではありません。しかし、ここまで準備期間が短いと、候補者の擁立や選挙管理側の事務が間に合わないなど、さまざまな支障が生じかねない。

何より、自分たちの暮らしに大きな影響を与える国政選挙にもかかわらず、有権者に候補者や政策を吟味する時間が十分に与えられていない点は、非常に大きな問題だと思います」


青森県の雪の中に設置された衆院選のポスター。2月の衆院選は1990年の海部俊樹政権時以来、36年ぶり


とはいえ、このタイミングでの解散・総選挙は、高市政権の高支持率などを踏まえれば「有利だから行なった」と考える向きもある。それなら仕方のない判断だったのでは?

「実は、日本で広く共有されているその理解自体が、国際的に見て極めて特殊なんです。

戦後の日本政治では『解散権は首相の専権事項』とされ、解散は政権が政局のために使える一種の"政治カード"だという認識が広く共有されてきました。

そのため、解散権というカードをいかに巧みに政局に活用できるかが、首相の特権であり、政治家としての技術であるかのようにメディアも扱ってきたのです。

しかし、日本の議会がお手本にしてきたとされるイギリスを含め、欧米の先進国を見渡しても、議会の解散権がここまで安易に与党の党利党略のために使われている国は見当たりません。日本の解散権の運用は、国際的に見ても異例であり、深刻な誤解に基づいているのです」

【「党に有利だから解散」は他国ではありえない!】

では、その「深刻な誤解」とはなんなのか。小堀氏は、日本国憲法の条文に立ち返る。

「衆議院の解散について、日本国憲法の中で直接触れている条文は7条と69条のふたつだけです。

まず、天皇の国事行為を定めた7条では、『内閣の助言と承認により』天皇が行なう行為のひとつとして、『衆議院を解散すること』が挙げられています。

一方、69条では、内閣不信任決議が可決された場合、10日以内に衆議院を解散しなければ内閣は総辞職しなければならない、と定められています」

そのため、7条に記された衆議院の解散は、69条に記された内閣不信任案が可決された場合に限られるのか? それとも69条とは無関係に首相が自由に行使できる権限なのか? という憲法解釈の問題が生じたのだ。

そこで、日本は一貫して後者の立場を取ってきた。今回の高市政権の解散も、69条とは無関係の、いわゆる「7条解散」だ。しかし、その根拠とされてきた説明には大きな誤解があるという。

「例えば、日本国憲法の施行から間もない1948年、当時の吉田茂内閣が7条を根拠に衆院解散を検討した際、憲法草案の作成にも関わったGHQ(連合国軍総司令部)の民政局は『解散は69条の場合に限られる』と反対しました」

それでも吉田内閣は52年に7条のみを根拠に解散を断行。その際、当時の法制局や憲法学者らは「日本の議会制度はイギリス型で、イギリスでも首相(内閣)は自由に議会を解散できる」と主張した。この解釈が定着し、以後、日本では7条解散が常態化していったという。

だが、小堀氏は「その前提自体が間違っている」と断じる。

「確かに、イギリスでも国王が首相の助言と承認のもとで議会を解散するという制度になっており、そこは日本と似ています。

しかし、実際にイギリスの政治を見てみると、日本が戦後やってきたような党利党略に基づく解散が行なわれたことは一度もありません。戦後に国王が『解散助言拒否』の意向を新聞紙上で発表したこともありました。

もちろん、与党が過半数を失い政治が膠着状態に陥った場合や、国家の針路を左右する重要な争点について国民に是非を問う必要が生じた場合などに、首相が議会解散に踏み切った例はあります。

それでも、日本でいえば2014年の『消費税再延期解散』や17年の『国難突破解散』、1986年の『死んだふり解散』のように、与党が圧倒的に有利な状況で、大きな争点もないまま解散に踏み切った例は、イギリスには存在しません。

その背景には、選挙で選ばれた議会を、与党の都合だけで解散してはならないという意識が、イギリスの政治では広く共有されていることがあります。解散権を『首相が自由に使える政局の道具』のように扱ってきた日本とは根本的に考え方が違うのです。

その違いを理解しないまま、『イギリスも同じだ』という誤解に基づいて解散権を振り回してきた政治家たち、そしてそれを批判せず、むしろ政治技術のように扱ってきた学者やメディアの存在が、今回のような党利党略による解散を許してきました。

それは決して、正しい解散権の使い方ではありません。そろそろ私たちは、そのことに気づくべきだと思います」

党利党略のために史上最短で行なわれた真冬の解散・総選挙。その異常さをわれわれは忘れてはいけない。

取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社

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