
NTTドコモが2026年3月31日に第3世代移動通信方式「FOMA」(3G)および「iモード」のサービスを終了する。いわゆる3Gの停波によって、3G回線のみに対応した従来型の携帯電話(3G対応のフィーチャーフォン)が利用できなくなる。これは長年愛用してきたユーザーにとって死活問題だ。
ひょんなことから、このフィーチャーフォンの行く末について、父親とじっくり話す機会があったのだが、父の認識は誤解そのものであった。父はどうやら、フィーチャーフォンそのものがこの世から消滅し、強制的に板状のスマートフォンへ移行させられると思い込んでいたのだ。「いや、厳密にはそうじゃない」と説明を試みたものの、外見上の違いがほとんどないデバイスの内部構造を理解してもらうのは想像以上に困難であり、説明するのに一苦労した。
会話のきっかけは、レノボ傘下のFCNTについてだ。2025年8月、NTTドコモは根強いフィーチャーフォンのニーズに応える形で、FCNT製の「らくらくホン F-41F」を発売した。その記事を読んだ父と、新しいらくらくホンについての話をしたのだが、父は不可解そうな顔で「2026年でガラケーは終わるのに、なぜ今さら新機種が出るんだ」と切り出した。父自身はスマートフォンにとっくの昔に移行し、タッチパネルの操作に使い慣れてしまっているからなのか、3G停波の影響を受ける当事者ではないが、どうやららくらくホンの行く末が気になっていたそうだ。
確かに前述した通り、3Gの通信サービスが終了すれば、その通信サービスにしか対応しない古いフィーチャーフォンは基地局からの電波をつかまなくなり、「ただの箱」と化してしまう。だが、ドコモが2025年8月に発売したらくらくホン F-41Fは、外見こそ従来の携帯電話だが、中身は4G通信に対応しているため、3Gの停波後も問題なく使用できる。父の論理では「折りたたみ携帯=3G=終了」という図式が完成しており、そこには通信規格の世代交代という視点と理解が欠落しているのだ。
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いくら父に「形や見た目はほぼ同じでも通信方式が違う」と伝えても、父はちんぷんかんぷんな様子で首をかしげるばかりであった。そもそも、携帯電話の内部的な仕組みによほど興味がなければ、通信の世代が3Gだろうが4Gだろうが関係なく、目に見える形状で判断するのは当然の心理かもしれない。通信技術に明るくない街ゆく人の多くが、父と同じような誤解を抱いているのではないかとすら感じる。
だが、その誤った認識を正したいと思い、あえて記事にすることにした。
●なぜ「3G終了=ガラケー消滅」と誤解してしまうのか
3Gまでのサービスを使用していたフィーチャーフォンは、独自の進化を遂げたガラパゴス島になぞらえて「ガラパゴスケータイ」、略して「ガラケー」と呼ばれ、日本の独自文化を形成してきた。これは通話機能が主機能だった一般的な携帯電話に加え、移動端末向けのデジタル放送「ワンセグ」の受信機能や、現在でも交通系ICなどで使われる「おサイフケータイ」の搭載をはじめとした、世界標準とは異なるさまざまな日本独自の機能が搭載されていたことが要因と思われる。
一方で、現在4Gサービスを使用しているガラケーの見た目をした携帯電話は、外見こそテンキーを備えた折りたたみ式だが、中身はスマートフォンと同じAndroid OSをベースにしている。このことから、一部ではガラケーとスマホを掛け合わせて「ガラホ」とも呼ばれる。この理屈で考えると、例えば2021年12月にKDDIがauブランドで発売したタフネスケータイ「G'zOne TYPE-XX」は、ガラホに分類されるデバイスだといえる。
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父親のような一般ユーザーが混乱するのも無理はない。かつての3G端末も、最新の4G対応らくらくホンも、折りたたみ式で物理ボタンがあるという「外見」は双子のように瓜二つだからだ。中身の通信方式が3Gから4Gに変わったといわれても、画面を見て電話をするだけのユーザーにとって、その違いは不可視に近い。ガラケーという呼称はまだ定着しているが、そこに「ガラホ」という定義が加わると、混乱はさらに深まるだろう。
ガラホという言葉は、実はメーカーやキャリアの発表会でも度々登場してきたキーワードである。例えば2015年1月19日に行われたKDDIの発表会では、当時の田中孝司社長がシャープ製端末「AQUOS K」について、「われわれは『スマホケータイ』『ガラホ』などと呼んでいる」と発言している。さらに田中氏は「中身がAndroidで、LINEや4G LTEがサクサク使えるなど、まさにケータイの形をしたスマホ」と紹介したが、この「ケータイの形をしたスマホ」という表現が、今の混乱の遠因になっているかもしれない。
●「ガラホ」はスマートフォンの仲間なのか、違うのか
とはいえ、ガラホは厳密にはスマートフォンではない。繰り返しにはなるが、ガラホはAndroid OSをベースにして開発されているものの、一般的なAndroidスマートフォンのように「Google Play」を介して自由にアプリをインストールすることは基本的にできない。タッチパネルを搭載していない機種も多く、操作体系も根本的に異なる。そのため、機能面や拡張性においてスマートフォンと同列とは言い難いのだ。
一方で、ガラホと称される端末は、多くの機種で「LINE」などのモダンな通信アプリや、高音質な通話規格であるVoLTEが利用できるメリットがある。この「ガラケーの形なのにLINEができる」「中身はAndroidだがアプリは自由に入らない」という中途半端にも見える多機能さが、さらに定義を複雑にしている。父にとってフィーチャーフォンは「電話とメールができればいい道具」であり、OSが何かは重要ではない。
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メーカー側がガラホへ移行した背景には、部材調達の事情も大きく関わっている。フィーチャーフォン向けの専用OSやチップセットの開発が世界的に縮小し、スマホ向けの汎用部品を流用して折りたたみ携帯を作る方が合理的になったという事情がある。つまり、ユーザーのために進化したという側面と同時に、製造側の論理として「中身をスマホ化せざるを得なかった」という側面もあり、これが外見と中身のギャップを生む要因となった。
●テレビ報道の「動画の尺」が削ぎ落とした重要な文脈
こうした複雑な背景があるにもかかわらず、動画の尺が短いテレビ報道を中心に「ガラケー終了」というパワーワードが広く浸透してしまった。これが「ドコモ3G終了に伴い、ガラケーという形状の端末全てが使えなくなる」という誤解につながったと思われる。ニュース番組の短い尺の中では、通信の世代や4G対応のフィーチャーフォンが市場に存在することを十分に伝えきれず、簡潔なタイトルだけが独り歩きしてしまうのだろう。
とりわけドコモ3G停波=ガラケー終了ではないことは、専門誌としては改めて強く伝えたいメッセージだ。「2026年以降も、オンラインショップや店頭に在庫があれば、4G対応のフィーチャーフォンは新品で買えるし、使える」。この単純な事実こそが、今最も伝えなければならない情報だ。
●手元の端末が来春以降も使えるかを見分ける方法
では、手元の携帯電話が来春以降も使える「ガラホ」なのか、使えなくなる「3Gガラケー」なのか、どう見分ければよいのだろうか。最も簡単な方法は、画面上部のアンテナマーク付近を確認することだ。そこに「4G」や「LTE」、あるいは「VoLTE」という表示が出ていれば、その端末は4Gに対応しているため、2026年4月以降もそのまま使い続けることができる。逆に「3G」や「H(High Speedの頭文字、ドコモの場合はHSDPA/HSPA方式を意味)」といった表示しか出ない場合は、機種変更が必要だ。
もし皆さんの家族や友人に、誤認をしたままの人から「ガラケーって春で終わるよね? スマホにしなきゃダメかな」なんて会話が切り出されたら、ぜひこの記事を参考に説明いただきたい。「終わるのは3Gという古い電波だけで、4Gに対応した新しいガラケーならこれからもずっと使えるよ」と伝えることをおすすめしたい。
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