
衆議院選挙で自民党が圧勝しました。高市総理大臣は、「検討を加速する」と公約に掲げた、2年間の食料品消費税ゼロについて、超党派の国民会議で課題の検討を進め「少なくとも夏前には中間とりまとめを行いたい」と表明しました。高市総理は、食料品消費税ゼロ」を『給付付き税額控除』導入までの間」と位置付けており、その制度設計が、消費税減税実現の鍵を握ることになりそうです。
【写真を見る】「食料品消費税ゼロ」を本格議論へ、鍵握る「給付付き税額控除」の設計
給付付き税額控除とは給付付き税額控除とは、所得税から一定額を差し引く税額控除(減税)と現金の給付を組み合わせた制度のことです。例えば、家計支援のため10万円の減税を行う際に、10万円以上所得税を納めていれば全額が差し引けますが、納税額が10万円に達しない人には、その差額を現金給付するものです。納税額が6万円の人には4万円を、納税額ゼロの人には10万円全額を給付します。納税額が大きくない中低所得者への支援をすばやく行うのに適した制度です。
現在、日本では減税は税務当局が、給付は地方自治体が行う仕組みなので、減税と給付を一体で行えるシステムが存在していません。マイナンバーなどデジタル化の進展を受けて、こうした制度を作る検討の機運が高まっていました。
具体的には「国民会議」で議論そのために課題を検討し、合意を形成するために作ろうとしているのが、国民会議です。政府・与党だけでなく、野党や各界、有識者などの参加が想定されています。もともと国民会議は、給付付き税額控除だけでなく、税と社会保障のあり方を根本から議論するためという、建てつけです。
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高市総理が「少なくとも夏前には中間とりまとめ」と言ったのは、肝心の制度や中身の骨格は夏前、つまり来年度予算編成の概算要求前には固めたいという意味です。つまり、総理の頭の中には、食料品の消費税減税は、遅くとも来年4月1日には実施したいという気持ちがあるのでしょう。「物価高に苦しむ家計支援」という側面も考えれば、わからなくはありません。
「給付付き税額控除」は減税の前提条件に高市総理のめざす食料品消費税ゼロは、2年間という条件付きです。期間限定でなければ、1年で5兆円も必要な減税にはとても踏み出せません。2年後には、代わりに給付付き税額控除という新たな仕組みが導入されているという前提がないと、消費税は元には戻せないでしょう。
要は、2年後に食料品の消費税がもとの8%に戻っても、多くの中低所得者の負担は増えない、と言える制度を作っておくことが必要なのです(もちろん、その財源は別途必要になりますが)。給付付き税額控除の制度創設は、2年間の食料品消費税ゼロを実施するために、決定的に重要な要素になりつつあると言えるでしょう。
システム構築だけでなく所得把握も課題ただ、給付付き税額控除の導入は、そう簡単ではありません。先に述べたように、まず、給付と減税を一体に行うシステム作りには時間がかかりそうです。
また、減税や給付の判断基準になる所得の把握が、今のままで良いのか、という大きな課題が横たわっています。そもそも税と社会保障の一体改革は、そうした不公平の是正も、大きな目的の一つでした。
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例えば、利子や配当などから得られる金融所得は、一律20.315%(復興特別税を含む)の源泉分離課税が済ませることができるため、見かけ上は、所得としては表れてきません。金融資産を多く保有する、高所得者や高齢者は、所得計算上優遇されていると言えます。所得としては年金収入だけだが、利子や配当所得だけで相当な収入がある人にまで、給付する必要はないはずです。給付付き税額控除の制度設計にあたって、こうした点を全くスルーするわけには行かないでしょう。だとすると議論に時間はかかりそうです。
消費税対策だけに使うのか、それとも?そして、何より重要なのは、給付付き税額控除の対象を、消費税対策だけに限定するのか、という点です。食料品の消費税ゼロをやめる際の対策だけであれば、一定以下の所得層に対し、1年分の食料品8%に相当する額、例えば3万円なら3万円を控除すれば良いので、システムができれば、さして難しい話ではありません。
しかし、そもそも国民会議まで作るのは、税と社会保障の一体改革を根本的に議論するためでした。バラバラに設計されて複雑化した社会保障、つまり「給付」と、税金(国と地方)と社会保険料に別々になっている「負担」を、いわば「見える化」して、より効率的で公平な制度に改革するという大きな目的があったからです。
高市総理もかねて、社会保険料が重くなっている中低所得者への支援策として、給付付き税額控除を導入したいという心情を語っています。同じく与党である維新も社会保険料引き下げを目指しています。消費税対策以外にも対象を広げるとなると議論難航は必至で、とても数か月でコンセンサスなど形成できそうにありません。
給付付き税額控除は海外で実施済み給付付き税額控除は、すでに海外では導入されています。アメリカでは、勤労税額控除という基本部分に、配偶者の有無や、子供の数による児童税額控除が加味される仕組みです。
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イギリスでは、ユニバーサルクレジットという名称で、勤労税額控除や児童控除だけでなく、住宅手当、求職者給付、雇用支援給付など6つの給付が統合されています。ベーシックインカム=基本生活保障制度を志向しているようにも見えますが、イギリスも、アメリカも、就労促進が制度の発想の根本にあり、就労や就労努力をしなければ、減額される制度設計になっていることは、注目に値します。
要は、給付付き税額控除は、数多くの税金にかかる控除や社会保障給付などを一本化して、透明化、効率化するところに、制度としての醍醐味があるのです。その意味では、様々な制度がパッチワーク的に積み上がっている今の日本では、児童手当などの子育て支援、失業手当や就業支援、さらには税金にかかる各種控除など、相当な減税や給付を取り込める可能性があるものと言えるでしょう。逆に、消費税対策のように1つの目的だけに使うのであれば、一定の所得層に給付金を配った方が早いという話にもなります。
もちろん、数ある複雑な制度をいっぺんに新たな「給付付き税額控除」にまとめ込むことは不可能です。しかし、スタート時点で、何のためにこの制度を新たに作るのかを明確にしておかなければ、議論は迷走しかねません。「食料品の消費税ゼロ」を急ぐ政治的な事情があるにしても、国民の負担と給付のあり方をしっかりと議論することの方が、むしろ大事なのではないでしょうか。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
