「令和の米騒動」を収めるため、農林水産省が2025年2月に政府備蓄米21万トンの放出を表明してから1年が経過した。追加放出や放出手続きの変更、25年産米の豊作などを経て極端な品薄は解消されたが、今も店頭価格は全国平均で5キロ4000円台。騒動前の2倍近い高値が続く。
備蓄米放出の決断前、農水省は24年産米の供給量は需要を十分に賄える水準だと踏んでいた。食糧法は備蓄米の放出目的を「生産量減少による供給不足」と規定している。このため、24年夏ごろにスーパーの店頭からコメが消え、消費者などから備蓄米放出を求める声が上がっても聞き入れなかった。
だが、24年産米が出回り始めても、価格は下がるどころか一段と上昇。結局、「円滑な流通に支障が生じる場合」にも放出できるよう運用を見直し、昨年3月から入札を実施。全国農業協同組合連合会(JA全農)などに売り渡した。
同5月以降は、放出の手続きを、店頭に届くまで時間がかかり、値下げ効果も小さかった入札方式から随意契約に変更。低価格で小売業者に直接売り渡すことで、平均価格はようやく3000円台に下落した。
25年産米の予想収穫量は17年以降で最大。同年秋以降は供給量の拡大によって価格は下がるとみられた。しかし、コメを確保したい農協が農家に支払う概算金を前年を上回る高値に設定。この結果、店頭価格は再び上昇した。
宮城大学の大泉一貫名誉教授は、農水省による備蓄米放出が「遅すぎた」と指摘する。同省は昨夏になって、需要見通しの誤りから24年時点で供給不足が生じていたことを認めたが、「令和の米騒動」の初期段階で放出していれば、その後の価格高騰は抑えられていた可能性がある。
大泉氏は、農水省の見込み違いで供給が足りなかった24年産米の経験から、業界には「農水省不信がある」との見方を示す。「25年産米が豊作になるという農水省のメッセージが届かなかった」ことが農協を含め高値づかみを招いた結果、店頭価格が高止まりし、混乱は長期化している。