
「舞台をやっていたボクが、初めて出演したテレビドラマが木村拓哉さん主演の『プライド』(フジテレビ系)。その最終回の撮影時期に受けたのが、映画『パッチギ!』のオーディションでした」
こう振り返るのは、波岡一喜さん(47)だ。井筒和幸監督と初めて会ったのは、オーディションの最終面接のときだったと記憶している。
「お芝居をやらず、聞かれたのは『今やっている撮影は、どや?』や、昔の話などでした。ボクは母親しかいなかったから『おかんのためなら死ねます』と言うと、監督は助監督に『コイツ、モトキに合ってるんちゃうか?』と抜擢してくれたんです。『プライド』では、レギュラーとはいえ一言、二言しかセリフがなかったので、『パッチギ!』で初めて大きな役をいただいたことになります」
うれしさが込み上げたのは最初だけで、撮影に入ると毎日が「地獄だった」という。
「無名に近い新人ばかりだったので、監督にイチからしごかれました。日々『学芸会、やめろ!』『これはテレビや舞台やない、映画や!』と怒鳴られ、ストレスとプレッシャーでどんどん体重が落ちていきました(笑)」
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撮影開始当初、苦しんだのはキャバレーで笑うだけのシーン。
「ケタケタ笑うんですが、何度も『違う、笑え!』『履歴書に笑えませんと書いとけ、ボケ!』と言われながら、何時間も笑い続けて……。結局は『40点。せめて60点はとってほしかった』といわれて、その日は笑えなくなりました」
つらい毎日で支えになったのは、共演仲間だった。
「共演仲間とは、共同トイレのボロボロアパートで相部屋しながら、合宿生活をしていたんです。監督からは『台本のセリフだけ覚えるだけなら、そのへんのヤツつれてきてもできる。セリフの行間を埋めていくのがお前らの作業や』と言われていたから、合宿所では役の思いなどを話し合いながら、みんなと稽古していました。それでも『明日は台風が来て、撮影が休みにならへんかな』ってこぼしていました」
ラストの河原での乱闘シーンは、三日三晩も撮影が続いた。
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「極限状態だったから、待ち時間に相手側になる役者とちょっと肩が当たっただけで『ほんまにしばいたろか』と思うほど、ギラギラしていました」
新人の持つエネルギーを引き出し、同作品は大ヒット。
「次々に仕事が決まり、間もなくバイトをしないで俳優だけで食べていけるようになりました。井筒監督には、感謝しかありません」
『パッチギ!』(’04年)
高校2年生の松山康介(塩谷瞬)がキョンジャ(沢尻エリカ)にひと目ぼれしたことをきっかけに在日朝鮮人と交流を深めていく青春群像劇。当時新人だった沢尻エリカの演技と可愛さとともに大ヒット!
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【PROFILE】
なみおか・かずき
1978年生まれ、大阪府出身。早稲田大学在学中から文学座附属演劇研究所に所属。2004年にドラマデビュー後、数多くの映画、ドラマに出演する。
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