
自民党の大勝で実現性が高まる「2年間の食料品の消費税ゼロ」と、その後に予定される「給付付き税額控除」。実現への課題は山積みだ。
【写真を見る】「食料品の消費税ゼロ」と「給付付き税額控除」には“恩恵ばらつき”や“不平等”の懸念も?
自民圧勝で「円安⇒円高」ナゼ?自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得するほどの圧勝となった衆議院選挙。
高市総理が掲げる積極的な財政政策への期待から日経平均株価は連日史上最高値を更新し、12日には一時5万8000円台まで上昇した。
一方、9日に157円台だったドル円相場は円高が進み、14日は152円68銭に。いったいナゼなのかー
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『三菱UFJモルガン・スタンレー証券』植野大作さん:
「自民党が単独で勝ちすぎたので、野党の要求を何でもかんでも受け入れて“ポピュリスト的なバラマキ財政をしなくても済む”という期待が逆に芽生えて、当初思われていたほど円が売られなかった。加えて(日本時間11日夜に発表された)アメリカの雇用統計が良くてドル高になった直後に、強烈なドル安円高方向への下振れが確認された。“日本側のレートチェックが雇用統計の後に起きたかと疑われるような激しい動きがあった”ことも原因になっている」
では、今後の為替相場の見通しはー
植野さん:
「今まで円を空売りしていた人が買い戻したことで円高になっている。おそらく“ここから先の円高余地はそんなに無い”と思う。ぼやっとした財政赤字拡大懸念は残っているので、このまま一気に前向きな気持ちになって円をどんどん買ってくる人が今の金利のレベルで増えるかというと、私は増えにくいのではと思う」
高市総理が「検討を加速する」と公約に掲げた<2年間の食料品消費税ゼロ>を巡っては、9日、早期に超党派の国民会議を設置し「夏前までに中間報告をとりまとめたい」との考えを示した。
片山さつき財務大臣(10日):
「総理があれだけはっきり2年間限定で、しかも特例公債に依存することなく、さらに飲食品に限って国民会議で検討すると話している以上、“それはもう絶対言ったらぶれない人だから、そういうことだ”」
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この食料品消費税ゼロは、制度の導入に時間がかかる税の控除と給付を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入までのつなぎとして、2年間限定で実施する方針だ。
また、財源について片山大臣は、“赤字国債に頼らず補助金や基金の見直しなどで確保する”考えを示している。
消費税減税に“多くの課題”食料品の消費税が8%⇒0%になった場合、どのくらい家計への負担が減るのか。
『第一生命経済研究所』の熊野英生さんの試算では、2人以上世帯の平均で「年間6万7000円負担減」となるが、“恩恵にはばらつきがある”と話す。
『第一生命経済研究所』首席エコノミスト 熊野英生さん:
「食料品消費税が0%の一方で、外食は10%のまま。外食が多い人たちがいて、単身男性は外食の比率が食費の半分近くの45.7%。単身の女性も食費の35.3%が外食なので、独身の男女にはあまり恩恵ない」
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<食費から見る外食の割合>
【単身男性】45.7%
【単身女性】35.3%
※総務省「家計調査」※34歳以下
さらに熊野さんは、消費税減税の「物価高対策」としての効果にも疑問を口にする。
『第一生命経済研究所』熊野英生さん:
「食料品の物価高は、2023年に前年比8%と負担が大きかったので“遅ればせながら”という感じだし、問題は消費者物価指数で、外食を含む食料品価格の上昇率を平均すると2022年から年間約6%のペースで上がっていること。つまり消費税減税をしても1年ちょっとしかサポートの効果が続かないということ」
――政治的には減税の方向で進んでいるが、エコノミストとして消費税減税はやるべきではないと?
熊野さん:
「問題が多いと思う。まず物価高に関しては、物価高の火元である円安。海外と国内の物価格差が縮まらないとずっと物価高が続く。それから消費税は社会保障の財源という点。高齢化は今後も続くのに、財源だけ宙に浮かせておいて消費税減税をやっていいのかどうか。そこは甚だ疑問」
他にも、消費税減税の課題はある。
<消費税減税の課題>
食料品の消費税8%【年間5兆円】
▼財源はどこから
▼外食離れを招かないか
▼システム(レジ等)の改修が間に合うか
▼2年後に8%に戻せるのか
▼8%分値下がりするのか
――高市総理は、できれば27年の1月1日、遅くても4月1日に実施したい意向のようだが本当にできるのか。2年後に8%に戻せるのかも政治的には大きい
熊野さん:
「おそらく2年後には、またエコノミストの一部で『増税になるから戻してはダメだ』という議論が出て約束が反故になってしまう。そうなると、恒久財源を探さないといけなくなる。さらに、2年で8%に戻せずに給付付き税額控除を一緒にやったら、財源がものすごく必要になる」
高市総理は「食料品の消費税ゼロ」は「給付付き税額控除」を導入するまでの間と位置づけているが、そもそもどういう制度なのか?
給付付き税額控除とは、所得税から一定額を差し引く税額控除(減税)と現金の給付を組み合わせたもの。
例えば、<給付付き税額控除が10万円>の場合
▼所得税納税額が15万円の人⇒10万円が減税され、納税額は5万円に
▼納税額が10万円の人⇒納税が免除
▼納税額が5万円の人⇒納税が免除されたうえで、5万円を給付
▼納税額0円(非課税)の人⇒10万円を給付
現在別々にやっている「減税」と「給付」を一本化しようというものだが、課題も多い。
<給付付き税額控除の課題>
▼制度(システム)が作れるのか
▼金融資産(株など)の所得まで反映できるか
▼消費税対策だけに限定するのか
『第一生命経済研究所』熊野英生さん:
「“新たな不平等”があって、ちょっとしか働いていないが資産は1億円ある人が、10万円もらっていいのかと。資産をきちんとマイナンバーで把握できるのかという問題もあるし、副業をやっている人たちの所得も通算できるかとか制度自体をバックアップする透明性が今はない」
――表面上は年金収入だけだが、実は金融所得、資産からの所得がたくさんある。それは全部源泉分離課税なので所得に換算されてないと。それから、「消費税対策だけに限定するのか」という課題もある
熊野さん:
「日本は高齢化が進んで、格差も非常に広がっている。なので本当は、社会保障と税を通算して低所得者をいかにうまくバックアップするかが問題で、単に消費税対策として導入するという小さな話ではない。社会保障のあり方全体をまず議論して、税と社会保障を一体化して改革しなければいけないが、そういう議論は全くない。悪い言い方をすると“新たなバラマキを始めようとしている”のではないかと、そういう見方も成り立ってしまう」
給付付き税額控除は海外では既に導入されていて、アメリカやイギリスでは就労促進が制度の発想の根本にあり、就労や就労努力をしなければ減額される制度設計になっている。
▼アメリカ【勤労所得税額控除】
⇒低所得者に対する社会保障税の負担軽減
⇒就労・勤労意欲の向上
▼イギリス【ユニバーサルクレジット】
⇒6つの給付制度(住宅手当等)を一本化
⇒就労促進と制度の簡素化
▼カナダ【GSTクレジット】
⇒低・中所得者世帯の付加価値税の負担軽減
――様々な社会保障給付みたいなものを、給付付き税額控除制度の中に入れて簡素化する、あるいは見える化、効率化する。それが本来の制度の趣旨ということか
熊野さん:
「まさにその通りだが、これはこれで理想像に行くまでにいろいろある。例えばアメリカでは2割の人が不正受給をしていて、国が返せと言ってもすでに使っちゃったからどうしようもないとか、そういう二次的なトラブルも起こっていたりする。決して平坦ではないので、やはり時間をかけて議論し制度の透明性を作っていくというのが大切だが、議論が極めて手薄。複雑なのに議論がほとんどなされていないのが問題」
(BS-TBS『Bizスクエア』2026年2月14日放送より)

