
バルミューダは3月18日に新製品「The Clock」の予約販売を開始した。価格は5万9400円だ。BALMUDA Online Store、BALMUDA The Store Aoyamaをはじめとするブランドショップの他、百貨店なども取り扱う。同社は4月中旬から出荷し、5月以降にアメリカや韓国への販路拡大も予定している。
The Clockの最大の特徴は「Light Hour(ライトアワー)」と名付けた、光による新しい時刻表現にある。針も保護カバーもない文字盤が直接光を放ち時刻を表現する。1時間ごとの時報ではチャイムの音とともに懐かしい振り子時計のような光のモーションが作動する。これらは単に時刻を知らせるだけでなく、時間そのものを心地よく感じるために搭載した機能だ。
The Clockの開発の原点は「眠りにつくための時計が欲しい」という思いから始まったそうだ。「Relax Time(リラックスタイム)」という機能では、就寝前に星のまばたきのような光とともに心地よい環境音を流す。雨の音ややさしく演奏されるピアノの音色など数種類の音が、空間全体をリラックスした雰囲気に変える。良質な睡眠への導入を助けるスリープクロックとして機能する。
アラームは設定時刻の3分前から徐々に環境音が大きくなり、優しく目覚めを促す仕様とし、快適な朝の始まりを心地よく演出する。少しずつ音が流れ始めることで、空間に広がるサウンドとともに体が自然と朝を認識していけるようになっている。
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タイマーは本体上部のクラウンを回して設定でき、内蔵のステレオスピーカーからホワイトノイズを流す。
機能としては大きく3つに分かれ非常にシンプルだ。バルミューダのブランドマーケティング部 広報 PRマネージャーの秦泉寺里美氏は、「より良い目覚めと集中、リラックス、そして睡眠まで、1日を通じて良い時間を過ごしていただくのに役立つことを目的に作られた道具」と紹介する。
●伝統的な懐中時計から着想を得た見た目――アルミニウムのブロックから削り出したボディーに触れた
デザインは長く愛されてきた伝統的な懐中時計から着想を得ている。アルミニウムのブロックから削り出したボディーにテクスチャーブラストやアノダイズ処理を施し、美しい光沢と上質な質感を持たせた。
秦泉寺氏は「Appleの元最高デザイン責任者ジョナサン・アイブ氏が率いる米クリエイティブ集団『LoveFrom』とのコラボレーションによって誕生した55万円の高級LEDランタン『Sailing Lantern』が契機となり、緻密なエンジニアリングに寄与するサプライヤーと出会えた」と開発ストーリーを明かす。これがThe Clock細部の磨き上げに寄与し、外観の美しさだけでなく緻密なエンジニアリングを実現しているというわけだ。
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ボディーサイズは約75×105×36.5mm、重量は259gと、片手で操作でき、かつ非常に持ち運びやすいサイズ感だ。小さなボディーからは想像もできないほど臨場感のあるサウンドが、心地よい時間の流れと空間を気持ち良いものに演出する。
実際の操作感も極めて優れているという印象を受けた。本体上部にあるステンレス素材のクラウンは、親指と人差し指が自然に触れる位置にあり、力を入れずに押しやすく滑らかに回せる。指紋が目立ちにくいフラットな仕上げで長期使用におけるメンテナンス性も考慮した。
机に置いた際、正面から見て左右の側面にボタンを配置しており、据え置きでも手持ちでもスムーズに操作できる秀逸な設計だ。付属のフェルト風スリーブに収納して外出先へ持ち出すことも想定している。Wi-FiおよびBluetoothでの通信に対応し、約2.5時間の充電で通常約24時間の連続使用が可能だ。
●「BALMUDA Connect」アプリとの程よい距離感に――あえてできることを制限したワケ
スマートフォンアプリ「BALMUDA Connect」との連携も可能で、アプリで行った設定情報はBluetooth経由でThe Clockと同期する仕組みだ。
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例えば、本体のみでは1つしか設定できないアラームを最大3つまで登録できる。平日と休日で起床時間を変えたい場合などに便利だ。また、文字盤の光り方を「Amount(アマウント)」または「Simple(シンプル)」の2種類から選べる。リラックスタイムの音源を切り替えたり、盤面の表示スタイルを変更したりする機能も備えており、個人の好みに合わせた柔軟な設定が可能だ。
スマートフォンとの時刻同期、任意の地域の時刻設定に加え、「セカンドタイムゾーン」としてもう1つの地域の時刻を登録することが可能だ。任意のセカンドタイムゾーンを設定すれば、本体のクラウンを1回押すだけで現地の時間に切り替わる。午後の時刻表示はライトが反転して光る仕様となっており、プロダクトデザイン部 UXチーム マネージャーの高荷隆文氏は「午前と午後を直感的に判別できるような工夫も凝らしている」と話す。細部にまで配慮が行き届いた機能設計といえる。
バッテリー残量が残り6分の1になると自動的に省電力モードが発動し、明るさや音量を制限する。リラックスタイムなども動作しなくなるが、これは残り少ない電力で時計表示と翌朝のアラームという最も重要な機能を死守するためだ。
あえてアプリの役割を基本的な設定と説明書の閲覧に限定したそうだ。その狙いについて、高荷氏は「テクノロジーと人間の良い関係性を重視した」と説明する。あえてアプリの役割を設定と説明書に限定し、寝室にスマートフォンを持ち込む原因を作らないよう工夫したという。
「スマートフォンとの距離感と主従関係について特に意識し、The Clockの開発では、スマートフォンとの距離感を強く意識した」と高荷氏。「主体はあくまで人間であり、機能を詰め込みすぎてしまうと、アプリ側の主従関係が曖昧(あいまい)になり、道具としての本質が損なわれてしまう」ため、あえてできることを絞り込んだと説明する。
とはいえ、今後を見据えた仕様もある。The ClockはWi-Fi経由でのソフトウェアアップデートに対応し、「継続的な機能向上や新しいサウンドの追加を予定する」と高荷氏。具体的なアップデート予定日や追加機能は決まっていないが、バルミューダとして利用者の体験価値を向上させるアップデートを検討しており、今後製品自体がさらに進化していくことに期待できる。
●スマートフォン事業で得た知見は生かした
バルミューダにおける時計とアプリの連携……と聞くと、かつてバルミューダが手掛けていたスマートフォン「BALMUDA Phone」を想起する人もいるはずだ。バルミューダは2021年11月26日にBALMUDA Phoneを発売し、2023年5月12日に携帯端末事業の終了(撤退)を発表した。
当然、スマートフォンの新製品は世に出ないが、その分野で得た知見はThe Clockに生かされている。
技術面においては、携帯端末事業の終了時に表明された「インターネットテクノロジー関連の知見を生かす」という方針を具現化。スマートフォン開発で培ったソフトウェア技術や通信機能、音声認識のチューニングといった高度なノウハウはBALMUDA Connectによる緻密な連携の土台となった。かつてのスマートフォン開発という挑戦がなければ、これほどスムーズなコネクテッド体験を時計というプロダクトで実現することは難しかったに違いない。
ただ、真に重要な継承は「テクノロジーと人間の良い関係性」という設計思想にある。プロダクトデザイン部の高荷隆文氏が語る通り、この哲学はスマートフォン開発時から一貫している。かつて寺尾玄社長が掲げた「人生の重要なことは画面の外で起こる」という信念は、今回のThe Clockにおいて、あえてアプリでできることを制限し、寝室にスマートフォンを持ち込ませない工夫を凝らすという逆説的なアプローチに結びついているようだ。
バルミューダは「(当時の)事業環境において総合的に検討した結果」、スマートフォン市場からの撤退に至ったが、そこで磨かれた技術力と「主体はあくまで人間である」という哲学は捨て去らなかったといえる。それらは今、バルミューダが新たな価値を提供するための不可欠な糧として、製品の細部にまで確かに刻まれているようだ。
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