
夜空を見上げると、数千光年先で星たちの生と死の物語が静かに続いています。その中でも、ほ座の方向に約5000光年離れた「PMR 1」という星雲は、まるで透明な頭蓋骨の中に脳が浮かんでいるかのような不思議な姿を見せています。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した最新画像は、その神秘的な姿をこれまでにない精細さで映し出しました。
「PMR 1」は、太陽ほどの大きさの星が寿命を迎える際に生まれる「惑星状星雲」のひとつです。
星は晩年になると赤色巨星として膨張し、外側のガスや塵を宇宙に放出します。その後、中心に残った星が放つ紫外線が周囲のガスを照らすことで、星雲として輝きます。
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画像を見ると、透明な頭蓋骨の内部に脳が収まっているようにも見えます。中央には縦に伸びる暗い帯があり、その両側に広がる雲が左右の半球のような形を作っているのが特徴です。
この星雲は1990年代後半に発見され、スピッツァー宇宙望遠鏡でも赤外線観測が行われていました。今回のJWST観測では、近赤外線カメラ(NIRCam)と中赤外線観測装置(MIRI)の両方を使用することで、以前よりもずっと詳細な構造が明らかになっています。
青白い外層の「頭蓋骨」の部分は、星から最初に吹き出された冷えた水素ガスでできており、内側に広がるオレンジや白の「脳」の部分は、後から放出された高温のガスや宇宙塵が混ざった複雑な領域です。中央を縦に走る暗い帯の正体は、中心星から極方向に向かって噴き出したジェットによるものと考えられています。
NIRCamの画像では、背景の星や銀河が透けて見え、暗い帯もくっきり確認できます。一方、MIRIの中赤外線画像では、宇宙塵の輝きがより鮮明に映り、上方や下方に向かってガスが外側に吹き出す様子までわかります。
このように、波長の違いで星雲の見え方が変わることは、宇宙の立体的な構造を理解する上で非常に重要です。
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JWSTの観測は、星が寿命の最期に放つエネルギーの影響やガスの動き、星雲形成のプロセスを細かく知る手がかりを提供してくれます。普段は目にできない「死にゆく星の瞬間」を、こうして私たちは間近に観察することができるのです。
この星雲を作り出した中心星の運命は、まだ完全にはわかっていません。もし星の質量が大きければ超新星として爆発し、周囲にさらに壮大なガスの雲を広げるでしょう。
質量が太陽ほどであれば、外層を放出した後に白色矮星として静かに冷えていくと考えられます。どちらの道をたどるのかは、今後の観測で中心星の正確な質量が測定されれば、少しずつ見えてくるはずです。
JWSTの高精細な画像は、単なる「美しい写真」にとどまらず、宇宙における星の生と死のドラマを理解する手がかりになります。私たちは遠く離れた星の最後の瞬間を、こうして目で確かめることができるのです。
NASA「NASA’s Webb Examines Cranium Nebula」
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