
観光業は人手不足であるというのは半ば周知の事実ですが、「そもそも地方で人手がいなさそう」「観光業ってなんか給料安そう」「観光業って何か大変そう」というイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか?
そういうイメージにさせてしまった業界の罪もありますが、そのイメージも手伝ってか、実際に大半の地方の観光業が慢性的な人手不足に陥っています。
特に、コロナ禍は観光業にとって大きなダメージを与えた出来事であり、一時期は観光業(宿泊/飲食)から50万人の労働人口が流出したと言われています。
その後、2024年には400万人台となり、2019年レベルまで回復しています。
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このことは、観光事業者たちの人材/採用戦略に大きな影響を与えました。コロナ前も人手不足は騒がれてはいましたが、そうはいっても募集を出せば応募は来るし、人手不足で営業活動を制限しなければいけないというような事態にまでは至っていませんでした。
ところが、コロナ後は募集を出せども応募も来ず、採用できないために宿は稼働を制限し、レストランは席数を制限する事態に陥ったのです。
そのような中でですが、中には「人が辞めない」企業というものも存在しています。その秘密はというと、見もフタもないですが 「労働条件」が大きく関与しています。もちろん、人間は条件だけで動くものではないですが、「労働条件」が働く上での大きなウェイトを占めることには異論はないと思われます。
あるホテルでは、次のような取組みをされていました。県内の産業別賃金を算出して、その賃金を+1万円上回るように最低給与を引き上げたところ、何と応募が激増したというのです。今までとの違いは「宿泊業以外からの応募が増えた」という点です。ミクロな事例ですが、これこそが「稼げる産業に人が移動する」という典型なのではないでしょうか。
そのホテルの役員の方が「内藤さん。結局、人間は条件面なんですねえ」としみじみ語っていたことが印象的です。
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あるいは、こんな事例も観測できています。多店舗で旅館を展開されている企業が新規出店で募集を出したところ、周りの旅館からの流入が起きたと。理由はやはりそのエリアでは圧倒的な好条件での募集内容となっていたことです。これもまた同じ仕事をするのであれば、より給与の高い所に流れるという自然な動きだったのだと思われます。
これらのことは何を意味するのでしょうか? シンプルに「人を集めたければ条件をよくせよ」というごくごく当たり前の話です。そして条件をよくするためには、前述のように労働生産性を高めて、経営者がそれを人件費に還流するという流れが必要になります。大した秘密ではなく恐縮ですが、これがやはり事実だということを目の当たりにしてきましたので、あえて記載をしました。
これは移住や東京一極集中から地方へという話の中でも真理となります。 「まずは稼げる産業、稼げる企業をつくること」なのです。これが身もふたもないことですが、真理なのです。
1868年以降、日本の人口の一番多かった都市はご存じでしょうか? 新潟県だったのです。
それはシンプルに新潟が生産と物流の拠点であり、要はそこに産業があったから人が集積したということです。
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とある漁師村の平均年収は800万円を超えるそうです。そうなると、廃れるどころか後継者もしっかりちゃっかり現れて、平均年齢が若返っているそうです。つまり、そういうことなんです。
そのためにはくどいようですが「稼げる観光」を追求しないといけません。そしてありがたいことに今、観光は稼げる産業になってきているということです。ですが、多くの観光ビジネスでまだまだそうはなっていません。
(内藤英賢、合同会社Local Story代表)
※この記事は、書籍『観光ビジネス』(内藤英賢/クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
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