
生成AIの普及によって、商品アイデアやコピーは誰でも簡単に生み出せる時代になりました。一方で、企業の提案が似通い、商品価値の差が見えにくくなるリスクも高まっています。
そんな中で次々とヒット商品を生み出しているのが、老舗寝具メーカーで知られるnishikawaです。老舗企業でありながらAI活用を積極的に進めていますが、その特徴は「生活者の声」を重視している点にあります。
今回は、nishikawaがどのようにAIで効率化を図りながら、“生活者のリアルな声”を起点に人気商品を生み出したのかを紹介したいと思います。
●寝具なのに「ふわふわ」「とろける」
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nishikawaは羽毛布団「torofuwa」を応援購入サービス「Makuake」で販売し、応援購入総額2400万円を超える大ヒットとなりました。
nishikawaはこの羽毛布団の企画にあたり、生活者の声を分析できる「Makuakeインサイト」を活用。生活者のニーズの理解を深めるとともに、AIを活用して分析内容を整理し、仮説を立て、検証していきました。
寝具カテゴリ全体の購入者のコメントをAIで分析すると、興味深い共通点に気付きました。生活者の多くが、寝心地の良さを説明する際、「ふわふわ」「とろける」といった、寝具とは一見かけ離れた言葉を使っていたのです。
さらにコメントを詳しく見ていくと、「自宅で洗える」「オールシーズン使える」「軽くて扱いやすい」といった、生活に根ざしたリアルなニーズも浮かび上がりました。
こうした声を受け、nishikawaは従来の「羽毛量」や「保温性」といった機能性中心の訴求ではなく、生活者が自然に使う言葉やニーズを軸に、商品コンセプトを再構築したのです。
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●著者プロフィール:早川将司(はやかわ・まさし)
株式会社マクアケ MIS事業部 新規事業開発プロデューサー
1986年生まれ。2009年法政大学卒業後、ブライダルプロデュース会社、マーケティング会社、デザインコンサルティングファームを経て2020年に株式会社マクアケに参画。入社後からはMakuakeでの先行販売時におけるコンサルティングだけでなく、新商品やサービスの企画・開発段階から新規事業立ち上げに至るまで一貫した支援を行うMIS事業部にて新規事業開発プロデューサーとして従事。
●生活者が求める質感を、どう実現した?
それと同時に、羽毛布団の品質にも徹底的にこだわりました。とろけるような軽さと包み込むような感覚を実現するため、羽毛の品質はもちろん、布団の生地の素材まで細かく見直していったのです。
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その結果、軽やかでありながらふんわりと身体に寄り添う構造の羽毛布団を作り上げ、生活者が求めていた「とろける」「ふわふわ」という感覚を実現しました。
生活者の声を反映した商品は、当然ながら好意的な反応を獲得し、nishikawaがこれまでMakuakeで実施してきたプロジェクトの中でも最も大きな応援購入総額を記録しました。
応援コメントには、「家で洗える羽毛布団という点に魅力を感じました」「今使っている布団が重くて寝付きにくいので、とろふわが楽しみです」といった声が寄せられています。
●AI時代に重要なのは……
今回の商品開発で分かったのは、企業が考えたコピーではなく、生活者が語る言葉に着目し、品質や素材の設計を磨き込むことの重要性です。
AIを活用することで、キャッチコピーの案は無限に生み出せるようになりました。しかし、実際に生活者が感じていることをAIが想像するのは、容易ではありません。nishikawaはこの“リアルな声”を、商品のコンセプトと訴求の中心に据えることで、生活者に直感的に伝わる価値を生み出しました。
AIが普及するほど、企業の商品開発において重要になるのは「何をインプットするか」です。
ネット上の一般論ではなく、実際に商品を使う生活者の声。こうした一次情報こそが、商品価値を磨くための重要な材料となります。
羽毛布団のような成熟市場では、機能だけで差別化するのは簡単ではありません。だからこそ、生活者のリアルな声から課題や価値を掘り起こし、それを品質や体験の設計に反映していくアプローチが、今後ますます重要になっていくでしょう。
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