[写真]=WE LEAGUE 何よりほしかった勝利を大観衆に届けた。サンフレッチェ広島レジーナは28日、『自由すぎる女王の大祭典2025/26』 として開催したSOMPO WEリーグ第17節のちふれASエルフェン埼玉戦で1−0の勝利を収めた。
昨季に続いて2度目の開催となった「自由すぎる女王の大祭典」。その4日前の練習後、MF小川愛は「今までたくさんのイベントをしてきたけど、結果を出せていないので、まず大祭典に来てくださるたくさんの方々に勝ちを届けないといけないと思っています」と勝利を誓っていた。
広島は昨季初開催した大祭典に2万156人の観客が詰めかけたが、試合は三菱重工浦和レッズレディースと0−0の引き分け。今季は昨年12月20日にクリスマスイベントを開催し、SOMPO WEリーグ第14節のノジマステラ神奈川相模原戦で来場者9531人が集まったが、0−3で敗戦を喫し、どちらのイベント試合でも勝利も得点も見せられていなかった。
だからこそ小川は、「勝ちを届けることが必然的に自分たちの良さや魅力をいろんな人に伝えることにつながるので、まずは結果出してレジーナをもっとたくさんの人に知ってもらいたいですし、WEリーグや女子サッカーの魅力も発信できるような存在になっていきたいので、誰かにとってのきっかけになるような試合にしたいです」と意気込んでいた。
春の陽気に恵まれて桜も色づいてきた試合当日、エディオンピースウイング広島に駆けつけたのは1万7612人。先着2万人に配られた『レジーナ大祭典ベースボールシャツ』のおかげもあってスタジアムは紫に染まった。
キックオフ前には初挑戦のコレオグラフィーに約3100人が参加。ホームゴール裏は完全に観客で埋め尽くされたわけではなかったが、それでもレジーナの「R」の白文字がきれいに浮かび上がった。
ベンチから見たDF塩田満彩は、「マジで涙が出ちゃいました」と感動していた。「チーム立ち上げの時からのメンバーとして、ここまでたくさんの方に応援してもらえるようになったことがすごく感慨深くて泣いちゃいました」と心境を明かす。
「この応援があって負けるはずない」。同じくベンチで見ていた小川は勝利へのプレッシャーよりも、そんな確信を得ていた。「みなさんのおかげで、あのコレオを見ただけで十分にパワーをいただきました」と感謝を口にした。
先発でゲームキャプテンを務めたMF柳瀬楓菜は、「レジーナだけのコレオだったので、すごく感動しましたし、すごくワクワクしました」と話し、「実際にピッチに立ってみて見渡す限りサポーターの方が席を埋めてくださっていたので、より責任を感じましたし、このピッチで自分たちのサッカーを表現しないといけないと思いました」と大観衆の前で身を引き締めていた。
試合は引いて守る相手に対して、広島が終始攻勢でゲームを支配。前半は得点を奪えなかったが、歓喜の瞬間は後半の立ち上がりに訪れた。52分、MF早間美空が左サイドからクロスを入れると、ボールはファーに流れてMF李誠雅が折り返す。このパスは相手にカットされたが、李がすぐに切り替えてプレスをかけると、ゴール前にこぼれたボールをMF柳瀬楓菜が右足でニアに叩き込んで待望のゴールが生まれた。
先制点を決めた柳瀬は、「前半から両サイドとも突破できていたので、クロスにもっと入っていいと感じていました。後半は早間選手が入ったことによって簡単に左足でアーリークロスを上げていたので、自分がゴール前に入っていこうと考えていました」と狙いを説明。得点シーンは「チャンスになるんじゃないかなと感じていました」と嗅覚が働いた。
「左サイドからクロスが入って、右サイドから折り返して、(相手を)揺さぶれていたし、そういう時のディフェンスは首を振られてスペースが開くので、そのタイミングで(ゴール前に)入っていけたのはよかったと思います」(柳瀬)
広島は追加点こそ奪えなかったが、無失点で抑えて1−0の勝利。ゴールと白星を紫の大観衆に届けた。79分からピッチに立った小川は、「クラブをあげてすごく準備してきた1日だったし、今までこういったイベントで勝ち切れていなかったので、まずは勝利できてすごくホッとしています」と安堵と喜びが入り混じった。
「もっとたくさんの人に自分たちと一緒に戦ってほしいですし、このスタジアムでレジーナのことを応援したいと思ってもらいたいので、『また来たい』って思ってもらえるきっかけになってくれたらいいなと思います」(小川)
ただ、試合終了のホイッスルが鳴った直後の選手たちはどこか満足していない様子だった。というのも、赤井秀一監督が試合前に提示したチームの目標は、「シュートを20本以上打って、3点以上取る」こと。結果はシュート15本と1得点に終わった。
最後尾でボールを弾き返し続けたDF市瀬千里は、「個人的な意見ですけど、ボールは持てていたし、攻撃はできていたけども怖さはなかったと思います。流れが悪い時にロングシュートを打って脅かす、自分を含めてセットプレーでもっとゴールに迫っていく、そういう気迫は全然足りなかったと思うので、そこは修正して積み上げていきたいです」と指摘した。
何よりほしかった勝利を大観衆に届けたが、そこで満足するようなチームではなくなった。それは、1勝して涙する選手がいたシーズン序盤からの大きな変化であり、チームが確実にステップアップしてきた証だ。チームの視線は上にある。試合後の選手たちは勝利を喜びつつも、「もっと面白いと思ってもらえるサッカーを見せたい」と口々に言った。
市瀬は、「しっかり勝つこと、無失点で終わることはベースで、もちろん勝てたことはうれしかったですけど、やっぱり来てくれたお客さんを楽しませるためには大量得点を取りたかったので、物足りないし、もっとできたなと思うところはあります」と振り返る。
豊富な運動量で攻守にわたって「戦う姿勢」をフル出場で示した柳瀬は、「やっぱり見ている人が楽しい、また来たいって思ってもらわないと意味がないですし、レジーナのサッカーを多くの方に知ってもらいたいです。そのために、やっぱりピッチで戦わないと何も始まらないですし、よりゴールに向かう姿勢は求められていると思います」と強調した。
73分に途中出場した塩田は、「きっと今日はサッカーを知らない、初めて見る方もたくさんいたと思うけど、そういう方からしたら、シュートを打たないサッカー、得点が入らないサッカーは面白くないと思うので、もっとゴールを狙う姿勢や自分たちの熱さを出していかないといけないなと思います」とさらなる向上を誓った。
小川は、「見ていて面白いとか楽しいと思ってもらえるサッカーをもっとしたいです」と話し、より高みを見据えて力強く語った。
「このチームや選手1人ひとりの魅力をたくさんの人に届けるために、サッカーもそれ以外の部分でも、もっと大きなところを目指していけるチームだと思います。日頃は目の前の試合を1つひとつ全力でと思っていますけど、最終的にはこのチームやクラブがWEリーグや女子サッカーをもっと引っ張っていけるようにしたいです」
WEリーグでは17試合を終えて5位。3連覇がかかったクラシエカップはトップ4入り。大祭典の入場者数は、昨季の記録に届かなかったが、1万7000人を超えて今季ダントツの数字を出した。サッカーも集客も伸びしろはまだまだ大きい。ただ、より上を目指すサンフレッチェ広島レジーナは着実に前進している。
取材・文=湊昂大