DeNA・清水麻成(撮影=萩原孝弘) 2023年育成ドラフト2位で入団した清水麻成。その歩みは、いきなりの試練から始まった。ルーキーイヤーの6月、右肘のトミー・ジョン手術を敢行。投げたくても投げられない日々――。その時間をいかに自分と向き合い、野球に打ち込めるかがプロでの成否を分ける。
清水は、その暗闇の中に光を見出した。コツコツと己を磨き上げた愚直な努力が、3年目の今シーズン、確かに息吹き始めている。
◆ 目を見張る進化
「そうですね。別人になっちゃいました」。本人がそう語る通り、マウンド上での姿は一変した。昨年の動き始めてからワインドアップするフォームから一変、上半身を縮めてセットポジションへ移行。そこから淀みない体重移動で一気に投げ下ろす。ドラスティックに変わった動作から投げ込む快速球を含め、その姿は確かに別人に映る。
「キャンプ入るまではああいう感じじゃなかったんですけどね。胸を張るんじゃなくて、縮める感じが投げやすかったんです」。入来祐作二軍チーフ投手コーチの助言をキッカケに、自身の感性と擦り合わせた結果、独特な新フォームにたどり着いた。
「今までは足を大きく上げたほうが、並進に持っていきやすい感覚があったのですが結局合わなくて…。入来さんから足を止めないほうがいいんじゃないかと言われて、最初は合わなかったんですけれども、球自体は強かったんです。これは行けるかもと思い、どうしたら合っていくかと試行錯誤していくうちに、どんどん上体が下がってってこの形になりました」
ハマってきた新フォームから繰り出されるフォーシームは150キロをマークし、アベレージでも145キロを超える。球速のアップの背景は志願して参加した台湾のウィンターリーグにあった。「ヤクルトの廣澤優さんからヒントを貰いました。メディシンボールの使い方も教わって、そこからいい感じです」。最速159キロを誇る同じ長身右腕との出会いも、20歳の若者の血肉になった。
その後も貪欲に動き続けた。年明けには同期入団の石田裕太郎に師事し「変化球のコツも教わりました」と先輩の技を吸収。すべてを自身の糧としていった。
遠回りしていた2年間の登板はわずか5試合。しかし今季はファーム開幕から登板機会を与えられ、ここまで無失点ピッチングでアピールを続けている。
その躍進を下支えしているのは、苦闘の日々の蓄積。「トミー・ジョンやってリハビリのときに下半身強化をやってきたので、それが繋がって、今年に出たのかもしれませんね」。手術前よりパワーアップしたい__。その強い想いを体現するように、逞しさを増した肉体が、何よりの証拠となっている。
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◆ 監督も名伯楽も期待
フォーム変更のキッカケを与えた入来コーチは、その狙いを明かす。「僕は止めて投げるって難しいことだと思うんですよね。足を上げる理由は何かといったら、勢いをつけるためだと思うので、その動きを利用したらどうだろうかということですね。彼は身体が強いということもあります」と、名伯楽ならではの観察眼と、選手に合った特性を活かす指導が根底に合った。
武器はやはり強く速いツーシームと断言。「バッターの様子も見ていると、たとえ変化球はまだ苦手でも、きっと真っすぐで押せるだろうなと僕は見ています。これからこうやって経験積んでいって、ゲームの中で変化球が少しずつでも入ってきて、ちょっとずつ自分で手応えを感じてくれれば、一気に爆発しますよ」
その言葉の裏には、親心にも似た感情も滲む。「身体が強くなったのも、やっぱり肘を痛めてる間に、ほんとに身体を鍛えていたからなんです。彼の練習してる姿をいつも見てるんですけど、常に全力で取り組んでいるのでね。なんとか強くなった身体を、思う存分使えるようになったらいいなと思っています」
練習はウソをつかない。コツコツと積み上げてきた歴史が今の姿。「本人の努力ですからね。とにかくとにかく全力でなんでもやるので、やっぱり報われるだろうと思ってますよ」
今年から二軍の指揮を執る村田修一監督も大きな期待を寄せる。「成長期ですね。今すごく売り出し中です」と伸び盛りだと目を細める。
「真っ直ぐのホップ成分強いし、ショートアームにしてコントロールもちょっと良くなっていますしね。真っ直ぐにすごく魅力があると思うんで、もう3年目ですし自信つけていってくれれば、すごくいいピッチャーになるんじゃないかなと僕も思いますよ」
首脳陣からも高評価を受けるストレート。清水自信もそこがキーポイントだとの自覚がある。「自分でも自信出てきたんで、真っ直ぐで押していければいいかなって感じです。フォークチェンジって自分では言っている落ち球も活きてくると思います」
見据えるのは背番号2桁となるその瞬間。「とりあえず楽しんでやりたいですね。支配下になりたいですけれども、まずは自分らしくできればいいかな」
野球に関すること以外はすべて左効きで、どこか独特な空気感を纏う20歳。これからも愚直に一歩ずつ、自分のペースで歩みを進める。
取材・文・写真=萩原孝弘